72.まさか
しばらく忙しくなかなか夏目のお見舞いに来られなかったが一日空いていた今日にここへ来た。
先日、お見舞いに行くことをを伝えると夏目は「緋和もいるんだよ」と言った。驚いた。まさかまた緋和と会える日が来るとは夢にも思わなかったから。
あれから百萌とは会えていない。連絡先は知らないし、もう会うことなんて一生ないだろう。入院生活のときに出会った人との関係なんてそんな薄いものになるのは当たり前だ。
だけど、また緋和とは会える。それは単純に嬉しかった。緋和と出会ってあれから六年。緋和は以前の私達と同い年だ。成長したなぁと思うけど、その分私だって今年から大学生になった。
中一のときのことなんてほとんど忘れたけど、あの入院期間の事は今でも憶えている。入院自体は楽しいものではなかったが、あの二人がいたから生活は楽しいと感じている自分がいた。だから、百萌と緋和にはとても感謝している。
「懐かしいな」
少し新しくなっていた遊戯室のドアを開けた。扉自体が透明なので外から中を見た限り誰もいなかった。
だけどおもちゃ箱なんかが低く積んであるところ、外から見る限り死角になる位置に誰かがいた。
ちらっと覗いてみると、少し威嚇しているような表情でこちらを見る緋和の姿があった。
「七生……さん?」




