夜の発作③
もうネブライザーから蒸気が出なくなったのを春上先生は確認して、外すとそれを看護師の一人に渡した。
彩は発作にネブライザー、そして大嫌いな注射……点滴をされて体力的にも精神的にもぐったりとしていた。
「なあ、どうしたんだ? あの新入り」
緋和は起きて一部始終を見て聞いていた。まあ、見て、といってもほとんどがカーテンで覆われていたため、看護師たちの姿しか見えていない。そんな緋和に夏目が聞いて来た。
「喘息の発作。」
「騒がしいなーと思って目、覚めたけどまだ一時くらいじゃん」
「そうだね。寝れば? 明日、検査って言われてなかったっけ?」
夏目は緋和の言葉にハッとした様子を見せ、「おやすみ」とカーテンを閉じて寝だした。この中で寝られるというのは、あるいみ才能ではないだろうか。
結局、春上先生がしばらくの間、彩についていた。発作もネブライザーで吸った薬や、点滴のおかげで段々と落ち着いてきた彩を見て、春上先生もホッと胸をなでおろした。
「春上先生、彼女……大丈夫ですか?」
緋和が他二人に迷惑が掛からない程度の声で聞いた。
「ん? ああ、緋和ちゃんか。一旦は落ち着いたね。ありがとう、君が看護師さんたちを呼んでくれたんだってね」
「いえ。別にたいした事では」
「いやいや、夏目ちゃんは寝たらあんまり起きないし、心晴ちゃんは今日が検査だったから疲れきっているし。きっと君が気付いてくれなかったら、もっと大変なことになっていた。ありがとう」
「……はい……。」
「さ、緋和ちゃんももう寝ないと。明日も何かあるでしょう」
「はい。」
そうは答えたものの、一度起きて完全に目が覚めてしまった緋和はとても今から眠れそうにはなかった。
結局、あの後、緋和は浅い睡眠を何度か繰り返してそれで終わりだった。