57.名前
よくわからないが、手招きをされたので内山さんの方へ行った。
「どうしたの?」
「緋和、さっきから寝てるよ。だから起こしちゃダメ」
「そっか……。」
わざわざ起こしてしまうのは申し訳ない。
緋和ちゃんのベッドからは酸素マスクのスーハーという呼吸音とモニターの定期的な電子音だけが鳴り響く。音に敏感な緋和ちゃんがこの音の中で寝ていられるなんて、相当疲れがたまっていたのだろう。
このタイミングで眠れたのはまた倒れてしまったりしては困るので、よかったのではないだろうか。
「じゃあ、また来るから。緋和ちゃんが起きたらナースコール押して、僕を呼んでもらえるよう頼んでもらえる?」
「はい! ところで」
「なにかな?」
「どうして七生ちゃんは下の名前で呼んでるのに私は名字なの?」
こんなことを言っては失礼かもしれないが少し拍子抜けだった。わりと深刻そうな顔で言うのでなにかと思えば。
「七生ちゃんは名字で呼ぶと夏目ちゃんとの区別がつかないから」
「じゃあ私も下の名前で呼んで!」
「あ、うん別にいいけど……。」
なんとなく身長的にも言葉や態度的にも内山さんは大人な感じだから忘れていた。
内山さん……百萌ちゃんだってまだ中学生だ。
「やった! ちょっと呼んでみて!」
「百萌ちゃん」
素直に喜ぶ姿を見るとただ名前を呼んだだけなのに凄く良い事をしてあげた気分になった。




