56.笑っていただろう
この後すぐそこに控えている手術に緋和ちゃんは精神面で大丈夫だろうか。
「では、また来ます。唯木先生や犬見先生もまた来られると思いますが、緋和ちゃんの体調が大丈夫であれば、何も心配いりません。」
きっとこう言った僕の顔は少しでも笑っていただろう。僕だって何度も行ったことのある検査だけど、緊張もするし、無事成功すれば安心するし、何より嬉しいものだ。
部屋を出る前、七生ちゃんと内山さんの顔が目に入った。二人ともまるで同じことを思って、同じことを感じているかのように全く同じ顔をしていた。
とても心配そうな顔を――。
先ほど四〇一号室へ行ってから大体二、三時間ほどの時間が経った。唯木先生、犬見先生もそれぞれ一度ずつ、緋和ちゃんたちの部屋へ向かったらしい。僕のとき同様、特変はなかったそうだ。
守山さんからも体調の一変等の連絡は来ていない。
ようやく僕も少しだけ緋和ちゃんたちの部屋に向かう時間ができたので、僕は入院病棟の方へ歩いて向かった。
「失礼します」
七生ちゃんの姿はない。でも内山さんはいる。いつもは逆のパターンが多い気がするので、少し意外だな。と思いつつ僕は緋和ちゃんのベッドの方まで足を進めた。
緋和ちゃんのベッドにはカーテンがかかっており、話し声はしない。お父さんはもうお帰りになったようだ。
「しーーっ」
カーテンの外側から緋和ちゃんに声をかけようかと思っているとき、内山さんが人差し指を口元に当てて言った。




