嘘ついちゃだめだよ?
わたしの熱は昼過ぎに測ったとき、三十七度三分まで下がっていた。でも今、先生の前で測ると泣いたからか、騒いだからか、熱が三十八度一分まで上がっていた。
「うーん上がっちゃったね~大丈夫?」
「………」
もう先生とは口、利かない。わたしはさっきのことでそう心に決めた。
「彩ちゃ~ん無視かい?」
無視無視。
「仕方ない、辛いとことかない~?」
「………ない」
ぼっそと呟いた。聞こえたかは分からない。でも聞こえてなかったとしても、もう一度言う気なんて甚だない。
「よかった、じゃあまた何かあったら言うんだよ~」
先生は病室から出て行った。早く出ていって欲しかったはずなのに、何だかいつもより呆気なく帰られて変な気分だ。
その日の夜は、発作が出ずに落ち着いた睡眠ができた。毎晩毎晩、発作に怯えながら寝るなんて嫌だったからよかった。
「おはよう彩ちゃん~」
「おはよう」
眠い目をこすりながら先生の挨拶に返した。
「調子はどう~? とりあえず、体温測ろうか」
「やだ」
「はいはいやるよ~」
結果は、三十七度一分。随分と下がったものだ。よかった。
「お、微熱だ。結構下がったね~よかった。食欲はある?」
「分かんない」
「じゃあまた朝だけ食べてみて考える?」
「うん」
「嘘、ついちゃだめだからね」
「分かってる」




