声が聞こえない
点滴のおかげか体調も少し良くなった気がする。
昨日同様、緋和ちゃんのベッドにはたくさんの先生が来ていた。昨日ほどではないけれど、それでも多いように思える。せいぜい、わたしよりは多い。カーテンの閉まっている緋和ちゃんのベッドを眺めていると看護師さんが点滴を持ってきた。緋和ちゃんも……?
「はーい、ちょっとチクっとするよー」
自分と同じ台詞を言われている緋和ちゃん。
「はい、終わり」
時間はわたしと大差なかった。でもその間に緋和ちゃんの声は聞こえなかった。「痛い」とか「嫌だ」とかそういう声。何も聞こえなかった。緋和ちゃんは怖くないのだろうか、痛くないのだろうか、嫌じゃないのだろうか。そんなことを考えてやめた。わたしに分かるはずがない。
夕方、ママが来てくれた。少し仕事が早く終わったので来てくれとそうだ。ママはわたしが点滴をしていることに驚いていた。聞いてはいたらしいが、実際に見るとやはり驚くらしい。すると先生も来て、ママとどこかへ話をしに行ってしまった。
「彩ちゃん、体調どう~?」
帰ってきた先生にそう言われた。ママも先生の後ろについて帰ってきた。
「大丈夫」
「点滴、気持ち悪くない?」
看護師さんにも聞かれたよ。看護師さんから聞いてないの?
「看護師さんたちにも聞いたけどね、やっぱり自分で確認したいからね~」
まるでわたしの心の声を聞いていたかのような先生の発言に驚いた。何で分かったんだろうか。医者としての経験とかいうようものなのかもしれない。それならわたしが分かるわけがない。




