自分で言ったから
「緋和ちゃんの言う通りだけど、とりあえず水とかは飲める?」
今何か口にいれたら、なんでも吐く気がした。
「分かんない」
「そっか~じゃあとりあえず飲んでみて」
そう言って先生はスポーツドリンクをわたしに渡してきた。いう通り、口に含んだが、身体が受け付けていない気がする。
「げほッ! げほッ!」
むせかえった。やはり口に何か含むのは不味いかもしれない。
「う~ん……どうしても点滴やだ?」
「やだ」
「じゃあ食べて吐く?」
そう言われると返す言葉がない。だって点滴も嫌だけど、吐くのだって嫌だ。どちらも辛い。
「やる……」
消えそうな声で言った。緋和ちゃんはともかく先生はこんなに近いんだから聞こえたはずだ。でも先生は口元を少し緩めて言った。
「聞こえないよ~?」
「……る」
さきほどより声が小さくなった。
「ん~なになに~?」
「だからッ! やるって言ってんの!」
「よし! えらいえらい」
「先生、大っ嫌い」
布団にもぐってそう言った。
「ごめんごめん」
また先生は看護師さんに点滴の用意をするように言っているようだった。はあ、自分からやるって言ったものの、いざやるとなるとやっぱり嫌だな。
「はい、じゃあ腕出してね~」
自分でやるって言ってしまったからには「嫌だ」というのは許されないと思ったので素直に聞くことにした。
「ちょっとチクっとするよ~?」
大丈夫、平気、平気。ちょっと痛いだけ……
「やだぁ」
「大丈夫だから~いくよ」
やはりわたしの口は「嫌だ」という言葉をはいてしまった。いくら自分で決めたからって嫌なものはやっぱり嫌だ。
「痛い痛いッ!」
「動いたらより痛いよっ!」
そう言われると動けなくなる。でも痛いし怖い。自分の肌に針が入っていく様子が見える。そして入るにつれて痛みも増す。
「痛い痛い痛い痛いッ! やだやだぁ」
「よし、じゃあ、お薬流すから痛かったら言ってね。」
わたしの腕に刺さった針につながる管の先に注射器をつけて何かを入れてきた
「怖い……」
「大丈夫、大丈夫だからねぇ……。」
針に刺さってる辺りがみずみずしいような、そんな気がした。体外から何かが入ってくる感じは気持ちが悪い。
「よし、終わり」
すると先生は管の先を注射器ではなく、点滴の袋につないで、やっと終わりを告げた。そこまで長くなかったはずなのに、すごく、すごく長く感じた。こんなことは入院して何度目だろう。




