貼るだけだよ?
泣いていて気付かなかったが、緋和ちゃんのベッドにもお医者さんがいた。
「緋和ちゃん、声……」
わたしは思わずつぶやいた。そう、緋和ちゃんの声がガラガラだったのだ。一晩で何があったのか。何か夜、あったのだろうか。だったとしても発作を起こしたわたしは記憶があまり、というか全然ない。
「酷いね。心配かい?」
先生も緋和ちゃんの方を向いて顔を歪めた。「可哀そう」きっとそう思っているに違いない。
「まあ……一応?」
「やっぱり緋和ちゃんは苦手なの~?」
「だって何考えてるかわかんないし、言葉キツイし」
「そうかなあ……。とりあえずそれだけ話せるなら、今すぐ何か手をうたなくても大丈夫そうだね~」
よかった。朝から腕に針を刺されるなんて想像しただけで寒気がわたしをつつむ。
「あ、でも冷えピタは貼ろうか」
「え、やだやだ」
「貼るだけだよ~」
「やだやだやだッ」
冷えピタは苦手だ。冷たくて、貼る瞬間は本当に泣きそうになる。
「貼るよ~」
嫌がるわたしを無視して看護師さんがわたしの髪の毛をあげて、先生が冷えピタを貼ろうとした。
「やだやだ~!」
頭を振って嫌がった。でも、それは逆にわたしを追い込むだけで、熱があったのに頭を振ったことで、ちょっと違和感があったくらいだったのにガンガンと痛む。
「あ~ほら暴れるから~貼るだけだから、ね」
頭が痛すぎてもう抵抗する力はない。先生の手が迫ってくる。怖い怖い! やだやだやだ!
「はい、終わり!」
サッと冷えピタをわたしの額に貼って先生は手を離した。やっぱり冷たい今すぐはがしたい。
「はがしたら、点滴とかするからね~」
うっ……。そんなこといわれたらもうはがせない。点滴するくらいならまだ冷えピタの方がましだ。
「また来るよ」
バイバイと手を振りながら、先生は去っていった。やっと一人だ。別に一人が好きなわけじゃない。先生……というかお医者さんが嫌いなだけ。




