ちょっと熱い……
「彩ちゃん~元気?」
やけに今日は先生がよく来る。暇なのか?
「あ、今僕が暇なのかって思ったでしょ」
ズバリ言い当てられて返す言葉を失った。
「まあ、昨日に比べれば今日の方が忙しくはないかな。で、調子はどうだい~?」
どうやら体調の心配はしっかりとしてくれているようだ。そんなに心配しなくたって全然発作は平気だし、別に検査~とか言われてないんだから逃げる気も甚だない。
「別に、普通」
「だーかーらー普通じゃわかんないって言ったでしょ~?」
「普通は普通なんだって」
「はあ。じゃあどっか痛いとこはある?」
先生はため息をついてから少し呆れた様子で聞いて来た。だって普通なんだもん。わざわざ取り立てて言うような変わったことなんてなかったし。
「特には」
「じゃあ、体温は?」
「朝以来測ってないからわかんない」
「よし、じゃあ測ろうか」
「やだ」
「どうして?」
「どうしても」
何か、少し自分の手が熱い気がして、体温を測るのが怖くなった。
もしこれで熱があれば、きっとまた痛いことをされてしまう。そう考えたらとてもじゃないが体温なんて測りたくなかった。
「いいから~ちゃっちゃと測っちゃうよ~」
先生はわたしの抵抗なんて無視で体温計を用意した。
「はい、これ挟んで~」
「やだ」
「測んないと先生ずっとここにいちゃうよ」
「……。先生、ずるい」
「はい、挟んで」
先生がずっとそばにいる日常なんて考えられない。辛すぎる。
体温は――三十六度九分。いつもより少し高い。
「うーん、ちょっと高いかなぁ?」
「そ、そんなことない! わたし平熱高いの!」
わたしの平熱は大体、三十六度三分くらい。そう考えれば対して高くないように思える。
「まあ、三十七度くらいだったらちょっと考えるけど……とりあえず様子見かな。看護師さん、定期的に来させるから素直に測ってね~」
とりあえずは先生がずっとそばにいることはなさそうだ。よかった。でも体温を一日、定期的に測るなんて面倒だ。あまり気のりはしない。まあ、体温を測るのに気が乗るも乗らないもないと思うが。
「じゃあね。自分で熱上がった……とか思ったら、ナースコール押しちゃって構わないから」
そう言って先生は出て行くのかと思ったら、緋和ちゃんのベッドへ行った。
「緋和ちゃん、大丈夫?」
その一言を最後にわたしのベッドからじゃ会話は聞こえなかった。




