その顔はどういう意味?
「西尾さん、わたし今日ご飯食べれないし点滴もとれたんだから、自分でご飯……取りに行ってね」
やっぱりどこか冷たい言いまわしな気がする。緋和ちゃんと一か月は同じ部屋かぁ、やっていけるかなぁ。自信ない
「うん」
九時くらいからか、看護師さんたちが病室、というか緋和ちゃんのベッドによく出入りするようになった。ご飯を自分でと――という話以来、緋和ちゃんと言葉を交わしていない。
「……ッ! ッッ……!」
声を殺して何やら苦しむ声が緋和ちゃんのベッドから聞こえた。何をしているのかなんて分からないが、痛いのか、苦しいのか、そんなところだろう。
――お昼前。緋和ちゃんがトイレにたった。それを最後にお医者さんたちや、看護師さんたちが担架に乗せて緋和ちゃんを連れて行くまで、彼女はベッドから出てこなかった。
心晴ちゃんも緋和ちゃんについて、何も知らなかったようで首をかしげていた。でも、夏目ちゃんは違った。明らかに何か知っているような様子が窺えた。
お昼を食べ終わったころ、先生がやってきた。昨日、あれだけ泣いて入院を嫌がっていたから心配ならしい。
「ねえ先生。」
「なに~?」
「緋和ちゃんって、どうしたの?」
先生は片時も笑顔を崩すことなく淡々と続けた。
「緋和ちゃん今日、検査の日なんだよ。まあ、検査って言ってもほぼ手術みたいなもんだけどね。そのうち戻って来るから大丈夫だよ~」
「でも、担架だったよ?」
「帰りもあの担架で帰って来るよ」
「そうじゃなくて!」
「ここから先は内緒~個人情報だからね」
そう言ってチラッと先生はわたしから視線を外した。見た先は――夏目ちゃんのベッド? ほんの少しチラッと見ただけだったから特定はできなかったけど、多分そうだ。
どうして夏目ちゃんのベッドを見たの?
「どのくらいで帰って来るの?」
「さあ、心配?」
「緋和ちゃん、ちょっと冷たいから苦手」
少し、先生の顔が変わった気がした。何というか、少し不思議そうな顔に。
「そっか~仲良くね」
そう言ってまた先生は帰って行った。あのとき、変わった表情は少し気になるが、なんて聞けばいいのかもわからないし諦めた。
一時間もかからないか、そのくらいでまた担架に乗った緋和ちゃんが帰ってきた。でも、担架の上の緋和ちゃんは元気がなさそうだった。そして帰ってきても緋和ちゃんのベッドにはお医者さんたちや看護師さんがたくさん出入りしていた。緋和ちゃんの姿は一度も見ていない。カーテンも閉じ切っている。




