大っ嫌いな人たちだもん
さっきさんざん泣いたから目はまだ赤いと思う。でもママはわたしが注射系が大っ嫌いなのは知っているから下手に突っ込んでもこないと信じている。
「今、採血とX線検査をやってきました。X線の写真はすぐに見られるんですけど、血液の方は早くても一時間はかかってしまうんです。お母さんの今日のご予定は……?」
「今日はもう仕事はないので、時間はある程度大丈夫です」
「そうですか、では一度入院病棟の方へ戻っていただいて。血液の方の結果が出たらそのタイミングでX線の方も一緒に確認して、今後について話し合うとしましょう。」
「はい」
「では、看護師に呼ばれましたらまた先ほど最初に来ていただいた部屋に来るように。」
「はい」
どちらもママが返事をしてくれた。わたしはしたくない。
だって嫌なんだもん。もし検査の結果、入院期間が長くなったりしたら……より痛い検査とかも受けないといけなくなる。そんなの耐えられる気がしない。
「さ~やちゃん、返事は?」
一向に返事を返す気を見せないわたしに先生は問いかけてきた。でもわたしは返事をする気は欠片もない。
「彩ちゃん、これからまた検査とかするときは、また彩ちゃんの同意がないと強行しないといけなくなっちゃうんだ。無理やりやられるのは嫌でしょ?」
わたしは小さく頷いた。
「だからね~こういうときは、先生に同意して返事を聞かせてね。もし何かあったら黙っているんじゃなくて、困っていること言ってほしいし……。黙ってるのが一番ダメ」
そんなこと言われても、今わたしが口を開けば「嫌、家に帰りたい」としか言えなくなってしまう。仕事でいつも忙しいママのことは困らせたくない。
「……はぃ……」
小さくなりながらも一応は返事をした。決して本心ではない返事。でも今一番言わなければいけない返事。
「よろしい、じゃあまたね彩ちゃん」
そう言って先生は颯爽と、どこかの角を曲がりその姿はわたしの視界から外れた。
「いい先生じゃない」
「先生なんてみんな大っ嫌いだもん。」
「そう~?」
そう。先生はみんな敵。わたしに痛いことしかしない大っ嫌いで最悪で最凶の人たち。