小さな「楽しい」
「ご飯の準備ができました。取りに来てください」
ドアの向こうの廊下からそんな声が聞こえた。時計の針はもう八時を指していた。
わたし以外、みんな廊下へと歩いて行った。一人になったけど、それも束の間。直ぐにみんなご飯を持って現れた。
「はい、これ。」
緋和ちゃんの手にご飯は一つ。自分のより先にわたしのを持ってきてくれたんだ。でも、やっぱり何だか不愛想。言葉の一つ一つが冷たい気がした。
「いただきます」
そう緋和ちゃんが言った。すると、他の二人もそれに続いて
「いただます」
と言った。何だか学校みたい。少し楽しいと思った。
「いただきます」
わたしも二人の後を追って言った。病院でも楽しいことなんてあることに気づいた。こういう小さな「楽しい」を見つけていかないとこの大嫌いな病院ではやっていけない。
食べ終わったご飯はやっぱり緋和ちゃんが持って行ってくれた。冷たかったり優しかったりイマイチわからない。まあ、言葉に棘があるのに変わりはないが。
それからの時間はそれぞれ時間を潰していた。夏目ちゃんはゲームをしていたし、心晴ちゃんは読書。
緋和ちゃんは寝ていた。そういえば、さっき昨日は眠れなかった……と言っていたことを思い出した。さて、わたしは何をしようか。