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大樹の護り人 8

2度目のエルフ族の里への訪問。まぁ、一度目は訪問と言っても門の手前までだし、今回は訪問と言うより潜入だけど・・・。今回は正々堂々門を通ろうとはしない。当たり前だが見つからないように、比較的警備の薄い地点からの潜入だ。と、言ってもロリノアがくれた情報は50年前のものなので、どこまで正確かはわからない。


まだ薄暗い中、警戒しながらエルフ族の里を取り囲んでいる塀の一部にくっついて中の様子を伺う。どうやら人の気配はないようだ。


ジャンプ一番、塀を飛び越え里に侵入する。


ガサっ


着地の時に音が鳴ってしまった。


・・・・・・・・・・


しかし、警備隊が様子を伺いに来る様子はない。


フーーーー


深呼吸を一つ。まずは潜入成功。ここからが問題だ。見つからないようにエルフ族の地下神殿に向かわなければならない。ここから見える兵士らしき影は10人。高い警備塔らしき上に3人、その下に3人、見廻りチーム2名が2組計4人。ここから移動するタイミングを全体の動きを見ながら考える。


すると、見廻りチームの1人が私が隠れている茂みの方に近づいてきた。


「おい、どうした?」


仲間の一人が尋ねる。


「ちょっと野暮用だ。」


不適な笑みを浮かべて青年エルフが答える。


これは気付かれたか? 私はいつ攻撃されてもいいように、戦闘準備を整える。


いよいよ目とはなの距離に相手が近づく。これは先手必勝か、今まさに私が飛び出しそうとした時、


チョロチョロチョロ


・・・・・・・・・・・・・・・・・


立ちションかいいいいいいい!?


いや、私のこの緊張感を返して欲しいのもあるけど、エルフが立ちションとかファンタジー要素が壊れるので2度としないでもらいたい!!


私のこの憤りを知らずに青年エルフが話し出す。


「そう言えば聞いたかカルパッチョ様の件?」


「アホ、声が大きいぞ。他のやつらに聞かれたらことだぞ。」


「構うものか、エルフ族の強者の魂と立場を取り返すと宣言した前回の演説から50年。その殆どを巫女擁護派の権力剥奪に力を入れて他のことはないがしろだったからなぁ。まぁ、ララノア様がエルフ史上最高の巫女と呼ばれていたこともあって、その後の権力争いし烈だったってのはわかるがなぁ。知ってるか? 本当は次の巫女も誕生してるんじゃないかって噂だぜ。でも、カルパッチョ様が怖くて自ら名乗りでないだけなんじゃないかってな。下手したら今後本当にこの里から巫女が消えるんじゃないかって話だ。」


「憶測はその辺にしておけよ。」


「しかし、いよいよ明日が族長選っていうのに、まさかその前々日、醜態を晒すことになるとはな・・・。再選は規定路線だと思っていたが、この分だと巫女派からも立候補してくるやつが出てくるかもな。」


ゴシップ好きなエルフ君のお陰で大体話の筋が見えてきた。しかし、一つどうしても気になることがあるのも事実だ。


「いずれにせよ『術』の上手さにおいて、カルパッチョ様を上回る奴がいないんだ。再選で決まりだ。だからあんまり今の話を他のところでするなよ。」


「へいへい。」


あ、面白いこと思いつきました。これからの行動予定は『ララノアの救出→里からの脱出』だったのですが変更しよう。


しかし、やはり一つのことが異常に気になる。このエルフ君、小便が異常に長いんですが!! これも作者のご都合主義の賜物ですか!?


そそくさと持ち場に戻るエルフ君。説明役を果たしてくれてありがとう。


その場を去り、地下神殿へ向かう。


辺りには見張りの気配はない。と、いうか、殆どのエルフ族が明日の族長選に向けて作業をしているため、警戒している兵士が手薄なようだ。こんな時に襲撃を受けたら・・・とか、考えないのだろうか? まぁ、エルフ族の性格がみんな傲慢なら襲撃が来ても叩き潰せばいいぐらいに考えているのかもしれない。


目の前に大きな墓地が現れた。ここは歴代の女王のお墓らしい・・・。らしい、と、言うのは実はエルフ族はお墓を持たないらしい。自然と共に生き、死んだら自然に帰る。なのでお墓などはなく、自然葬なのだそうだ。一見、エルフ族にとって明らかな不純物だが、エルフ族の文化に精通していないと違和感すら感じないだろう。つまり、これはフェイクで、このお墓擬きを規則正しい順番に動かすと・・・、


ギーーーー


と、音が鳴り、地下への道が姿を現す。と、言うわけだ。


ゆっくりと中へ入る。中は鉱石の所為か明るい。罠という罠が私を襲ってくるが、これは全部、ララノアの世界で体験済みなので、余裕で回避できる。流石、私のアイディアである。まぁ、半分はララノアの術のお陰だけど・・・。


ララノアの情報により、最深部まで一気に来ることが出来た。しかし、ここで予想外のハプニングが起こった。


ここからまっすぐ進んだ先にあるララノアの封印されている部屋。そのドアの前に明らかに危険な生物が陣取っている。


鋭い牙、固そうな爪、長い尻尾、爬虫類を想像させるその大きな図体、鬼の様な角、可愛らしいひげ。そう、ファンタジー世界の代名詞『ドラゴン』だ。


いやぁ、初めて生ドラゴン見たわ!! 迫力ヤバイ!! 強そう!! カッコいい!!


さ、ファンタジー要素は十分堪能したし、帰るか・・・。


って、出来たら楽なんだけど・・・。


ララノアのバカが現実世界で会えたら、ため口に文句を言うって言ってたけど、俺は確実にこのドラゴンの説明をしていなかったことを文句言いまくってやる!!


はぁ~、俺、マジ死ぬかも知れなくない?


いつも自信過剰な俺だけど、流石にこれは怖いわ。ドラゴン、マジぱねぇ。あ、もしかしていつの間にかララノアの世界に導かれてこれも夢ってことも。そう言えばドラゴン、邪竜との戦いの後長き眠りについたって話だった気が・・・って、ことはあれは大きなトカゲで・・・ワニ?・・・はぁ、違うのは知っている。現実逃避だ。その圧倒的な存在感が、それが現実であることを私に伝える。


「ああ、もう!! やってやるよ、ドラゴン退治!! 魔王討伐が出来たんだ!! ドラゴンだって!! これでファンタジー世界のテンプレ2つ目回収してやる!! 行くぞ、俺!!」


自分を奮い立たせてドラゴンに立ち向かう・・・ああ、やっぱり怖ぇえええええええええ!!

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