大樹の護り人 5
主人公目線に戻ります。
話しが進む予定だったのですが、思いのほか進みませんでした。すみません。
エルフ族の里で暴挙を働いてしまった夜、やりすぎてしまったことを反省しつつも周囲の警戒を怠らないように寝床に着く。エルフ族の襲撃はもちろんのこと、こちらの情報を多く持っていたダークエルフ族、話を一切聞こうとしなかったドワーフ族にも注意を払わなければいけないだろう。
もちろん、こちらにはルークやしのぶと言った感知能力の高い仲間がいるが、相手の出方がわからない限り、彼らに頼るだけでは駄目だろう。
具体的な対策を思いつく事が出来ないまま浅い眠りに落ちる。
辺りの異様な静けさに、目を覚ます。するとそこは先程までいた場所ではなく、幻想的な草原だった。目の前にはエルフ族の少女が立っている。
エルフ族の襲撃・・・では、ないようだが、周りからは音といものが消えてしまったかの様に、動物の鳴き声も風の音すらも聞こえない。
「ふむ、客人とは珍しい。余はララノア・エルミア・ナタリー・アンダリエル・ケレブリアン・サックビル・タナカ・ドラゴ・ナポリタン311世である。」
エルフ族は少女でも偉そうな話し方をするようだ。しかも、田中ナポリタンって、斉藤カルパッチョに対抗しているんだろうか? まぁ、それよりも今は、
「客人? これはララノア様の幻術かなにかなのですか?」
先程の失敗を反省し、エルフ族にはへりくだった態度を取ることにした。
「ふむ、客人。お主は礼儀がなっていないな。このエルフ族の女王たる余が名乗りをあげたのだぞ。主もまずは名乗るのが礼儀ではないか?」
え、女王? エルフ族は族長と女王がいるのか???
「これは失礼しました、ララノア様。お会いできて光栄です。私はゼロと申します。あまりの驚きに礼節を失っていました。申し訳ありません。それで、この場所は一体なんなんでしょうか? ララノア様の術で作り上げた場所でしょうか?」
「まぁ、そう慌てるな。ここは余の『術』の中と言えるが、主にとっては違うとも言えるな。」
そうか、なるほど・・・って、なるわけないだろ!!
と、いう心の突込みを抑えて、慎重に会話を進める。
「それは一体どういう意味でしょうか?」
「ふむ、今、余たちがいるのは余の心象世界だ。まぁ、お主にわかりやすく言うと夢の中じゃな。余はこの世界の主であり、唯一の住人じゃ。ここでは余の思い通りに全て操る事が出来る。例えばそうじゃの、ここに樹を生やそうと思えば・・・。」
ララノアの言葉に続いて、目の前に大樹が現れた。
「さらに、川でも作るか。ほれっ。」
一瞬で、川が流れ出し、魚が泳ぎだす。先程の樹には小鳥がとまり歌を歌いだした。
「まぁ、ざっとこういう感じじゃな。」
パチンと指を鳴らすと、全てが消え、先程の何もない草原に戻る。
「素晴らしいお力ですね。それで、なぜ私はララノア様の世界にいるのでしょう。」
「知らん。」
え!?
「え~と、この世界はララノア様が『術』でお作りになっている世界なんですよね。そこに私を呼ばれた・・・わけではないのでしょうか?」
「余は呼んではおらん。と、言うか、そもそもここに誰かを呼ぶことは出来ん。たまたま波長があった時にのみ、人が迷い込む事があるようじゃ。」
「つまり、私は偶然ここに導かれた・・・と。ここから出していただくことは可能でしょうか?」
「それも不可能じゃ。まぁ、そんなに慌てんでも時が来れば勝手にはじき出されようて。余にとっては久しぶりの話し相手じゃ。世の中の近況でも教えてくれんか?」
ん? どういうことだ。情勢には疎いのか?
「久しぶり・・・とは、一体どういうことですか?あなた自身もここから自由に出ることは出来ないのですか?」
ララノアの目の色が変わる。
「出ることは出来る・・・が、出ても余は囚われの身でな、会話できる相手なぞおらんのだ。勘違いするなよ、余は何も悪事などは働いておらん、冤罪じゃ。策略にはめられてエルフ族の地下神殿に封印されているのじゃ。」
封印って、まさかララノアが邪竜の化身とかなんじゃないだろうな?
「えっと、ララノア様はまさか数千年封印されてたりします?」
「あほか、主は!! 余はまだピチピチの300歳じゃ!! 封印されているのはたかだか50年と言うところじゃ。」
ああ、よかった。邪竜じゃないみたいだ。
ん?
あれ?
300歳!! ババァじゃん!! 噂のロリBBAじゃん、この人!! エルフ族が長命ってのはよくある話だけど、すっかり忘れてた!!
「おい、今、お主は大変失礼な事を考えていなかったか?」
「いえ、考えていません。それで、ロリノア・・・、いえ、ララノア様はどの様な策略にかかって封印されているのですか? 差し支えなければ教えていただけませんか?」
「主は本当に失礼な男じゃのう、質問に質問で返すとは・・・。よいか、まず外の情勢を余が尋ねたのじゃ、それに答えてから質問するのが筋というものじゃろうが。」
「すみませんでした、では、私が知っている限りのことをお話しましょう。ただ、ララノア様のエルフ族の里が今どうなっているかはわかりかねます。昨日、初めてエルフ族の里を訪ねたのですが、少し揉め事を起こしてしまいまして、中に入ることは叶いませんでしたので。」
「ほぉ、揉め事とな。そこも後で詳しく聞かせるのじゃ。」
「はい、畏まりました。」
その後、私は希望の民の近況を出来る限り詳しく話した。その様子をララノアは興味深そうに聞いていたが、最後のエルフ族の話をした時にその様子が一変した。
「おい、今、カルパッチョとぬかしたか!!」
あまりの剣幕、若干引く。
「ええ、すみません、名前を覚えるのは得意ではないんですが、最後の3セットが斉藤・エスパニョ-ラ・カルパッチョ200何世だっとと思います。」
「ほお、お主はあいつの首に剣を突きつけたと・・・。」
流石に同族の族長に剣を突きつけた話をありのまま話したのは、まずかったか?
「いえ、あのですね・・・。」
一生懸命言い訳を考えようとするが、出てこない。最近、暴力で解決する事が多かったので、いい訳機能が故障しているようだ。
「よくやった!!」
え?
「そのままとどめを刺してくれれば完璧だったのじゃが、まぁ、いい。この50年で一番愉快な話を聞けた。褒美に余の身の上話を聞かせてやろう。」
どうやら、ララノアはカルパッチョが大嫌いなようだ。ちょっとしたら封印に何かかかわっているのかもしれない。
その後、ララノアは自らに起こった悲劇を語りだしたのであった。
本当はなぜゼロが姿を消したかまで行く予定だったのに、なんか、すみません。
明日には、そこまで書き上げられたらいいなぁとは、思っていますが、期待しないでお待ちください。