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魔族討伐遠征 6

今回は主人公の視点ではないので、一人称ではなく、主人公の心情も描写してません。

謁見の間での出来事から数時間後、領主の部屋をノックする一つの影がある。


「夜分遅くに申し訳ございません。至急確認しなくてはならないことが発生いたしまして。私の非礼をお許しください。」


扉がゆっくりと開く。中から木箱を大事そうに抱えて領主が不機嫌そうに出てきた。


「サーナよ。このような時間に何事だ。それはもちろんワシの睡眠を妨げるに足る理由であろうな。」


「はい。もちろんでございます。実は領主様が今お持ちの木箱の中身が大変危険であるとの報告を受けまして、お開けされてしまう前に安全の確認をさせていただきに来た次第でございます。」


「誰がその様な戯れ言を吹き込んだか知れんが、安全確認など不要だ。ワシがもうすでに開けて確認した。」


サーナが箱を見る。


「左様でございましたか。就寝のお邪魔をして申し訳ございませんでした。」


「構わん、ワシの身を案じてくれればこその行動だろう。して、この箱の報告とやらは誰から聞いた。」


領主の冷たい目がサーナを見つめる。


「仮面の剣士殿よりでございます。」


「嘘を申すな、あやつは魔族との戦闘の時の傷がもとで死んだはずではないか。」


領主の怒号が飛ぶ。しかし、サーナは極めて冷静に。


「私も数時間前にそう聞き及んで、確認の為医務室へ行ったところ、仮面の剣士殿が消えたと大騒ぎしておりまして。私も捜索に協力したのですが、結局見つからず、兵舎に帰りましたところなぜか私の部屋に彼がおりまして、今の話を聞き及んだ次第です。」


領主がみるみる青ざめる。


「して、箱のこと以外、あやつは何か言っておったか。」


「いえ、その話を聞き次第、こちらへ飛んできたので。」


「何も聞いていないのなら問題ない。下がりなさい。ワシも今日は寝ることにする、もし、仮面の剣士がまた主の前に現れたなら、ワシがくれぐれもよろしく言っていたと伝えてくれ。」


「はい、確かに承りました。」


そう言うと、サーナは踵を返しその場を去る。それを確認した領主は青い顔のまま、


「スニース、スニース出てこい。」


数秒後、スニースが領主の部屋に現れる。


「スニース、どういうことだ。仮面の男は死んだはずではないのか。」


「そのはずだったのですが、医務室から消え失せたとの情報が入り、部下が目下捜索中であります。」


「たった今、サーナが来て、仮面の男が部屋に現れたと言いおった。しかも、あろうことかこの木箱の中身を知っているようだった。再びサーナに接触するやもしれん。サーナを見張り、仮面の男が現れたなら、今度こそやつの首を取って参れ。もし、サーナが余計なことを見てしまった場合は構わん、仮面の男と共に始末せよ。」


命令を聞き終えると、スニースはサーナを追い、闇の中に消えていった。


それから更に数時間がたった。


領主は焦っていた。木箱の中身を知っている誰かが存在し、その者は上位魔族を1人で倒すような力の持ち主である。そして、領主はその者を殺そうとして、失敗した。ここで、スニースが仮面の男を始末できないということは身の破滅を意味する。


「くそ、くそ、くそ、くそ、ワシはこんなところでは終われん、ワシは、ワシは。」


心の中の不安を消そうとしてか、言葉として吐き出す。彼の人生で数時間がこれほどまで長く感じたことはないだろうか。部屋をたえず歩き回り、吉報はまだかと待ちわびる。すると、


トントン。


扉の音が響いた。


「スニース。待ちわびたぞ。入れ、奴の首は取れたか。」


扉が、開きスニースが入れられる。


「お待ちかねの首です。ただし、胴体とは繋がったままですが、確かにお届けに参りました。」


領主の目の前にはロープで巻かれた姿でで力なくうなだれるスニースと、口元にいたずら小僧の様な笑みを浮かべた仮面の剣士がいた。


絶句。まさにその言葉が今の領主の心情を現しているだろう。


「さあ、答え合わせを始めようか。」


仮面の剣士は、おもむろに仮面を外した。領主とスニースは彼の素顔を見て思った。


誰?


魔王討伐から15年、おじさんになった彼は昔の面影はあれど、堕ちた英雄のパーティーメンバーと認識されることはなかったのだ。


「あれ、仮面する必要なかった?」


仮面の剣士は寂しそうに呟いた。


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