After 人魚の里と赤い悪魔
再び竜人族の里への帰り道。仲間たちは『希望の民連合』の発足と言う使命の旅ではなく、『ゼロ』の許嫁探しの旅と改名した方がいいんじゃないかと真剣に話し合っている。その中でも特に熱が入っているのが『如何にこれ以上許嫁を増やさないか』だ。私は完全に聞こえないフリをして、別の議題をぶちこむ。ただ、邪魔がしたかったわけではなく、きちんとした理由があるのだ。
「一回、私が暮らしていた町に帰ろうと思うんだ。」
唐突な提案に一同は驚く。
「ゼロ様、今の話題を気にしていらしたなら、申し訳ありません。ちょっと、みんなで意地悪したかっただけでございます。」
「いや、違うんだ。今回、人魚族を襲撃したのは俺と共に『魔王討伐』を果たした戦友で、今でも国王に仕えていることが判明したんだ。『襲撃の件』で完全に俺と対立したため、次は殺しあいになる。」
さっきまで騒がしかった仲間が沈痛な表情に変わる。
「まぁ、それは仕方ないんだ。一緒に旅をしていた時から騙されていたらしいから・・・。正面から戦ったら、確実に俺が勝つ。ただしあいつは人の弱点をつく天才だ。必ず俺の弱点を突いてくる、物理的にも精神的にも。物理的には問題がないと言うか、それはどの戦闘でも危ないのは同じだから警戒するしか対処法は無いんだが、問題は精神的弱点・・・考えられる事として俺の『家族』だ。」
そう、元妻は人質にとられるようなへまはしないだろうが、問題は娘だ。
「一旦帰って、元妻とどんな方法を取るのが一番か話し合ってくる。その間、みんなも誘拐や襲撃には備えてくれ。それから出来れば『人魚族の里』にも衛兵を送ってくれるように協力関係にある各里にも頼んでくれるとありがたい。」
「わかりました。」
「それからルークを連れていくから、しのぶに周囲の警戒をしてもらう比重が高くなってしまうが、しのぶ、よろしく頼む。」
「お任せください。」
「ちなみに俺がいない間、使者の任務も続けてくれると有難い。出来るだけ早く発足させることが色々な『抑止力』になるから。」
「その方がゼロのお嫁さん候補が増えなくて良いかもね。」
サラサが軽口をたたく。
そして、それには言い返せない。
「でも、ご主人様のことですから、町から返ってくる頃には2人ぐらいは増えているかもしれませんよ・・・。」
いや、それはないにしても、実績があるので言い返せない。
「ゼロ様、わたくしたちがいないからって羽目を外し過ぎないでくださいね。『風俗』も浮気ですからね!!」
ド◯ロベー様から釘を刺されてしまった。
「ルーク、きちんとゼロを見張っててね。」
「ガウっ。」
く・・・誰からも信頼されていないようだ。
「状況次第で王都に行かなきゃいけないから、期間はわからないが、絶対に戻ってくるから、連合の事を頼む。」
「「「「「はい。」」」」」
「それと、ゼロ様、きちんとけじめを付けてきていただくとわたくしたちとしても大変ありがたいので、その事も覚えておいてくださいね。勿論、『出来れば・・・』ではありますが。」
「ああ、勿論だ。」
こうして、私とルークは一旦、『神の加護』の地へ戻ることとなった。町を出てから早6ヶ月。早かった気もするし、随分旅をしていた気もする。色々な出会いがあり、色々な場所に行き、色々な経験をした。自分的には少しは成長できた気にはなっているが、今でも家族にはどんなか顔して会えば良いかわからない。
「ガウっ。」
横を歩くルークが『行けばわかるさ。』的に励ましてくれる。そう、結局優柔不断なままの私は行かなければ何も変えられないんだ。だったら、わからないままでも進むしかない。それが正しい道であっても間違った道であっても、行かないことには進めないから・・・。
なんだか最終回みたいな終わり片になってしまいましたが、まだ続きます。
暫く『希望の民』編がお休みし、『人間界』編に突入する予定ですが、あくまでも予定なので暖かい目で見守っていただけると幸いです。
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では、引き続き楽しんで読んでいただけるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします。