ロメオとジュリエッタ 7
最近、ちょっと不定期ぎみになってすみません。
なるべく毎日更新したいのですが、なかなか時間が取れず・・・。
そんな中でも覗きに来てくださる皆様に感謝です。特にブックマークや評価を付けてくださった方、本当に有難うございます。
出来るだけ頑張って更新するように致しますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
しのぶが去ってから思ったんだが、集合場所を決めるの忘れていた。まぁ、巫女を見つける優秀さがあれば私の居場所もすぐに見つけられるだろう。
さて、しのぶの有能性はさておき、こちらもきちんと巫女を探さないと。ただ、人に訪ねるのも駄目、酒場も駄目となると打つ手が思い付かない。
こうなったら私の名推理に頼るしかないだろう。
まず、今までの情報から誘拐、監禁、引きこもりの線が考えられるが、誘拐と監禁の場合は犯人と動機が必要となってくる。
一番怪しいのは猫人族の頭領、目的として考えられるのは自殺した一人息子の復讐。2人の仲を引き裂いたのは自分であるが元々息子をたぶらかした巫女への恨みが爆発しての逆恨み。まぁ、あり得ないこともないが、その場合犬人族が巫女を救出するために部隊を派遣するか戦争をおっ始めるだろう。
ん、と、言うか誘拐犯が誰であろうと、犬人族が静観するはずがないな。ならば、引きこもりの可能性が高いか? 愛する人と無理矢理引き離され、あろうことかその人がそれを苦に自殺。そのショックから引きこもりに一直線。んー、どうだろう?無くはない程度の感想しかないな。
かといって宮殿に巫女がいるか危険をおかして忍び込むわけにはいかないしなぁ。
結局、堂々巡りである。そんなことを考えて1時間程度が過ぎてしまう。すると、
「御館様。巫女様の居場所がおおよそ判明しましたが、これから一緒に向かいませんか?」
不意に声がかかる。
え、何、本当に? 本当ならしのぶ君、超有能なんですけど。
「どうやらここから猫人族の里に向かって進んだ森の中の隠れ家に軟禁されているようです。」
ん、軟禁? 監禁じゃなくて? 何れにせよ、犬人族が黙ってそんなことを許してるとは思いづらいんだが・・・。
「軟禁している犯人は?」
「はい、犬人族の頭領様です。」
衝撃の事実発覚!! 自らの娘を軟禁。それなら犬人族が騒ぎ立てないのもわかるが、一体どうしてそうなった?
「軟禁している理由はわかったの?」
「いえ、そこまでは。御館様は居場所を知りたがっていたようでしたので、取り急ぎお伝えに参った次第でございます。時間さえ頂ければ調べて来ますが如何いたしましょう?」
何この超有能なお方。それは喉から手が出るほど欲しい情報だ。だが、断る!!だって、それまで聞いちゃうと完全敗北認めるみたいで嫌だから!!
「いや、いい。それより、どうやってその情報を手に入れたの?」
「頭領様の屋敷に忍び込んだところ、巫女様の匂いが殆どしなかった為、屋敷にいないのはすぐにわかりました。微かな匂いを辿ったところ、巫女様の部屋ともう1つ匂いが他より強く感じるところがありましたので、そちらを追っていくとある一団に辿り着きました。その一団はどこかから帰ってきたばかりの様子で頭領様に謁見するところでした。報告の内容は『巫女様の動向』についてでしたが、森の中の隠れ家で変わらず大人しくしていると聞くと頭領様は『そうか』と一言仰って一団を下がらせました。」
どうやらその一団は巫女を監視する役目みたいだな。と、すると巫女は望んで軟禁されているわけでは無さそうだ。
ん、そう言えば、森の中の一団って、早朝に見かけたあの一団か?
「場所は詳しくわかってるのかな?」
「いいえ、詳しくはわかっておりませんが、私の嗅覚を持ってすれば、容易く先程の一団が通った道を辿ることが出来ます。」
「よし、採用!! 俺のことを御館様と呼ぶことを許そう。給料形態は後で詳しく話し合うとして、一生とは言わないがある程度の期間『情報収集』を主として私の下で働いてくれ。」
「はい、ありがたき幸せ。」
こうして私は初めての部下を手に入れることになった。思えば地球にいた時にも後輩はいたが、仕事上の部下を持った経験が私にはない。しかも忍者の部下なんて正直胸あつだ。嫌われないようにきちんと可愛がってあげよう。
「よし、しのぶ、早速出発しよう。」
「はい。」
可愛いやつめ。さっきまで嫌がっていたが、初めての『部下』と思うと急に可愛く見えてくるから不思議なもんだ。
私たちは猫人族の里の方向に向かって歩き出す。
暫くして、しのぶが立ち止まり、森の中の見つめる。
「御館様、どうやらここから森の中を進むようです。」
私が早朝の一団と離れたあたりの森でしのぶが話しかけてくる。
「そうか、時にしのぶよ。その鼻の良さなんだが、犬人族はみんなそんなに鼻が利くものなのか?」
もしそうなら、隠れて近づいてもすぐに警護兵に発見されてしまいそうだが、屋敷に忍び込んだしのぶを発見できないあたりしのぶが特別な気もするし、ひょっとしたら匂いを隠すコツがあるのかもしれない。
「みんながみんなそうではありません。犬人族の鼻は実際には人間族の2倍程度ではないでしょうか? 現に匂いで御館様を人間族ではないとわかったのはあの場では僕だけだと思います。ここからはご内密にお願いしていただきたいのですが、僕も平時では人間族の10倍程度だと思います。」
「平時だと?」
「はい、そうです。実は『術』を発動すると、その10万倍、つまり、人間族の100万倍程度の嗅覚を得ることが出来ます。僕の知る限り犬人族で僕と同じ術を使える人はいません。犬人族で一番多い術は『獣人化』で牙や爪が強化され、肉体の強度が上がるというものです。」
「え、100万倍って、それって、臭いものがあったらそれだけで死ねるんじゃない?」
「いえ、100万倍というのは、かぎ分けられる能力においてという意味で、例えば『花』の匂いを嗅いで御館様は花の匂いだと認識お出来になると思いますが、僕はそれがどんな花かも認識できますが、1メートルの距離で人間族が感じる匂いを1000キロ先から感じられると言うものではありません。勿論それでもある程度先の距離の匂いは嗅ぎとることが出来ます。」
なるほど、犬の鼻が人間より1億倍優れてるとか聞いた気がするが、それもこの理屈で、う◯この臭いで殺られないで済むのであろう。
それにしても他に類を見ないとなるとますます貴重な部下を持ったものだ。
「一応確認なんだが、人間族の2倍程度の嗅覚を持っても数メートル先の俺たちを発見することは出来ないんだな?」
「はい。犬人族も人間族と同じで鼻より目に頼る方が多いです。暗闇での戦闘は人間族より若干有利になる程度の能力です。」
こんなに犬人族の情報をくれて良いのかと思うほど色々教えてくれる。流石私の部下だ。
「そうか、では、このまま進もう。しのぶにはこの先の犬人族の数はわかってるのか?」
「いいえ、残念ながら。ただ、隠れ家の位置は近くにはないようです。火を使った匂いなど生活の匂いは強いので家や集落は発見しやすいのですが、まだ僕の鼻に引っ掛かっていないので。」
「わかった。では、人の匂いや、異常なを感知できたら教えてくれ。」
「わかりました。」
私としのぶは罠がないか慎重に確認しながらゆっくりと進んでいく。
2時間程度進んだところでしのぶが立ち止まる。どうやら異常があったようだ。
「この先に生活臭を放つ小屋のようなものがあります。ただこれは・・・。」
目的地を発見したというのにしのぶは不安そうな顔をしている。
「どうした?」
「いえ、これは巫女様が軟禁されている『隠れ家』とは違うようです。周りにも犬人族はいません。」
「生活臭があるのに空き家ってことか?」
「そうではないんですが・・・。」
「どうした? はっきり言え。」
「はい。どうやら猫人族が1人、そこに住んでいるようです。」
また、予想外の方に話が進んできた。さて、どうしたもんか・・・。接触して情報を得るか、無視して進むか、それが問題だ。
『残念』という言葉が『残金』となっているとの有難いご指摘を頂きましたので訂正させて頂きました。
教えてくださった方、本当にありがとうございました。




