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ロメオとジュリエッタ 3

翌朝早く私たちは猫人族の里に移動する。


何故か私たちと同じ時間帯に同じ方向に向かう武装した犬人族の一団を見かけた。始めは私たちの監視をするための集団だと思っていたのだが、途中から姿を見かけなくなった。ルークに確認しても後は付いてきてないというので目的は別にあったのだろう。


急いで進んだお陰で昼過ぎには猫人族の里に着いた。頼むぞルーク先生、犬人族の里でのマイナスをここで取り返してくれ!!


早速私たちは2手に別れて情報収集を開始した。今回はリベンジの意味があるので有無を言わさずルークと私が1グループ、他3人が1グループで行動することにした。


「すみません、少しお聞きしたいことがあるんですが。」


「はい、どういたしました? おお、これは立派な始祖様とご一緒ですね!!」


おお、好反応!! 猫科の動物を始祖扱いするとは流石猫人族。


「ありがとうございます。実は犬人族との不仲説の真相を知りたくて、皆さんにお尋ねさせて頂いてるんですよ。聞いた話では本当はそんなに仲が悪くないとも言われているらしいのですが、実際のところどうなんでしょうか?」


「そうですねぇ。ご年配の方はわだかまりを抱えていらっしゃる方がおいでのようですが、私たち世代以降の者は、特に仲が悪いということはないです。」


「では、交流があったりするんですか?」


「ええ、ありましたよ。ただ、ここ一年は頭領様のご命令で犬人族の人がこの里の中に入ることを禁止されてしまったので、犬人族の人と会うこと自体あまりなくなってしまいましたが・・・。」


これは早速有益な情報を手に入れたぞ。つまりローマンのあの態度は昔からの恨み辛みではなく、最近の出来事に対する私怨。それならば昔から続く憎しみの連鎖を断つよりはよっぽど連合に参加させるように説得できる可能性が高い。


「それで、頭領様が犬人族に対して態度を変えた原因はなんだかご存じですか?」


「いやぁ、それはちょっと私の口からは・・・。」


「ガウっ。」


ルークが教えての眼差しと共に吠える。


「参ったな。始祖様にお願いされると断りづらいなぁ、もう。じゃあ、私が話したことは内緒にしてくださいよ。」


ルーーーーーク、goooooood job!!


「実は一年前以上前なんですけど、ここの頭領様の息子と犬人族の巫女様が恋仲になったって噂がたったんですよ。ご存知の通り、猫人族と犬人族は巫女様を共有しているじゃないですか。絶対というわけではないらしいのですが、通常、次の巫女は巫女がいなかった方の部族の頭領の子ども、もしくは孫が女の子の時は巫女に選ばれる可能性が高いらしいのです。つまり、次の巫女候補は頭領様の一人息子であるロメオ様が結婚し娘が生まれた場合、そのご息女様が巫女に選ばれる可能性が高いということです。しかし、これまたご存知の通り犬人族と猫人族の夫婦の間には子どもが生まれない。次の巫女は必ず猫人族から出したい頭領様は無理矢理2人の仲を引き裂こうとしたそうです。これが先程お伝えした入国禁止令の原因だと言われています。しかし、その父親の態度に絶望したロメオ様はそれを苦に自ら命を絶ってしまったと言われています。真実は分かりませんが、それ以降、ロメオ様を見かけた者はいないそうです。」


知らない話が当然の様に話されたが、それよりも、『重い』、重すぎるよ。こんな話聞かされて、『じゃあ、猫人族と犬人族を仲直りさせよう』とはならないだろ。


ああ、終わった。


よし、猫人族と犬人族は連合から外そう。うん、そうしよう。


「色々聞かせてくださってありがとうございました。」


「ガウっ。」


「私が話したことはくれぐれも内緒にしてくださいね。では、失礼します。」


その後も聞く人聞く人同じこと答えが返ってきた。


闇が深い。


夕刻3人と合流する。3人は犬人族の里と同じように当たり障りのない情報しか手に入れていなかった。ルーク先生の効果が遺憾無く発揮されたと考えていいだろう。本当だったら、自慢の一つもしたいところだが情報が情報なだけにそういう雰囲気にもしにくい。話を聞いた3人も事態が思わぬ深刻さを抱えていたことにショックを受けた様子で口数が少ない。


「「「ローマン許すまじ。」」」


ショックを受けたと思っていたら憤ってたらしい。


「この際、猫人族を排除して犬人族だけの連合参加でよろしいんじゃないでしょうか?」

「賛成。」

「いいアイディアだと思われます。」


感情に任せて連合の使者としての任務を放棄しようとしているようだ。


「まぁ、ちょっと落ち着こう。この話はあくまでも一つの可能性なだけであってまだ真実と確定したわけではない。きちんと裏をとってからこちらの出方を決めるんでも遅くはないはずだ。幸い早い段階でこの情報を手に入れたのはプラスになるはずだ。ありがとうルーク先生。」


3人もルーク先生を次々に誉める。ルークは上機嫌だ。これで猫人族の頭領への怒りも少し紛れればいいのだが・・・。


レストランもホテルも今回は問題なく泊まれた。


寝る前に翌日の行動を決める。

猫人族も犬人族もどちらも歴史的な恨みは特にないが『次代の巫女』を巡って問題が起こり、結果猫人族の頭領の一人息子が自殺。それが今回のキーになってくる情報だ。問題はその話を犬人族の里では確認できなかったこと。そして、気になるのは『巫女』が今どうしているかということだ。ロメオという一人息子の安否もきちんと確認したいが、頭領に直接確認したら最悪の場合激怒され二度と解決へのチャンスを失いかねない。ここは慎重さを擁する場面だ。こんな時に隠密行動が出来る仲間が欲しいと思う。うちのは隠密とは程遠いメンバーばかりだから。


「さて、俺はまず犬人族の里に言って、『巫女』に接触したいと思う。ただしルーク先生には是非この里でお留守番をしてもらいたいと思っている。」


足手まといだから・・・とは、思っても言わない。しかしルークはこちらの考えを読み取り、悲しそうな瞳をしている。


「では、わたくしがゼロ様とご一緒いたします。」

「いや、あたしがゼロと行くよ。」

「私以外ご主人様を乗っけて運べる人がいるでしょうか?」


「今回は俺一人で行く。その間にロメオがどうなったかわかる人物を探してくれ。くれぐれも頭領に動きを悟られないように慎重に行動するんだぞ。」



「「「はい。」」」


「ルーク先生も任せたぞ。」


「ガウっ。」


さて、複雑になってきた今回の任務。とりあえず、足で情報を稼ぐくらいしかないので、根気よく頑張ろうと思う。ルークがいなければ少しはマシな情報が集められるだろう。すまん友よ。などと考えていると突然。


「「「じっちゃんの名にかけて。」」」


と、言う声が響き渡る。


本当に頼むから内輪だけの合言葉にとどめておいて欲しいものだ。


「さ、明日も早いから俺は寝るぞ。おやすみなさい。」


「「「おやすみなさい。」」」


ルークと共に部屋へ向かう私。その時私は全く気づいていなかった、私に危険が迫っていたことに。

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