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ロメオとジュリエッタ 2

まずは情報収集から始めるのが交渉が難航しているときの基本だな。なぜお互いがいがみ合っているか分からなければ譲歩を引き出すことは不可能だろう。


「誰か、犬人族と猫人族が仲が悪い原因を知っているか?」


ダメもとで仲間に聞いてみる。


「伝承では元々一つの部族であった彼らは言葉をめぐって対立し、その言葉の影響でお互い今の姿に徐々に変化したと聞いたことがあります。」


語尾に『にゃ』か『わん』で揉めて、それを使うことによって姿が猫みたいになった方と犬みたいになった方が存在すると。発音は骨格を変えるからねって・・・ないだろ、それ。


「あたしは元々仲のよかった部族だったけど、お菓子を取り合あって喧嘩した族長の息子同士の喧嘩が元で戦争に発展したって聞いたけど。」


う~ん、無くはないと思うけど・・・。


「私は他部族の姫をどちらが嫁にするかで揉めたことが因縁のはじまりと聞き及んでいます。」


一番ありそうな話だけど、やっぱり伝聞とか、伝説の類いでしかないような気がする。


結局、住民に詳しく聞くしかないのか。私たちは二手に別れて情報収集を始めることにした。が、誰が私と一緒に行くかで激論が始まってしまったので、ルークとこっそりその場を去ることにした。


「すみません、お聞きしたいことがあるのですが。」


私は丁寧に里の人に話しかける。


「ちっ、話しかけんな!!」


犬人族の男性に滅茶苦茶睨まれた。


気を取り直して別の人に。


「すみません。お聞きしたい・・・。」


「向こう行け!!」


えっと、何この親の仇でも見るような目は・・・。各なる上は。私はまた別の人に話しかける。


「すみませんわん。ちょっとお聞きしたいことがあるんだわん。」


「消えろ!!」


心が折れそうです。『わん』をつけたのにこの反応って二重のダメージだ。キャッチセールスやスカウトの人たちはいつもこんな思いをしているのでしょうか? お疲れ様です。私も頑張ります。


「はっ?」

「先を急ぐので。」

「死ね!!」

「すみませーん、変なおじさんが話しかけてくるんですけどぉ??」

「この里から出ていけ!!」


うん、もう立ち直れないぐらい頑張って、今、気づいたことがあるんだけど、言ってもいいですか?


みんなの態度が最悪なのって、ルークがいるからみたいなんですけどぉおおおおおおお!!


この里に入ってから薄々は変な視線に気付いてはいたんだけど、まぁ、使者が来るのが珍しいのかなぁ位に思ってたけど、質問させてもらおうと思う人全員がルーク見てめっちゃ不機嫌になってます、確実に!! 猫科ってだけでこんなに嫌われちゃうの?


心が折れた私たちは川辺でただただボーッとして過ごした。


それから数時間後。


「ああ、いたいた。ゼロ急にいなくなってるからビックリしたよ。仕方ないから3人で情報収集行って来ました。」


「ゼロ様、何か有益な情報を聞き出すことがお出来になりましたでしょうか?」


「ご主人様? どうなさいましたか? ご主人様!?」


抜け殻となった私に仲間たちが次々に話し掛けてくる。しかし、私とルークは動けない。


「失礼します。」


バチンッ


私はほほの痛みで正気に戻る。


「ああ、すまない。いつの間にか暗くなっているようだな。じゃあ、とりあえず、宿にでも・・・いや、私とルークは夕飯を食べたら里の外で休むことにしよう。」


不思議な顔をして、こちらの様子を覗きこむ3人。ルークはまだ呆けている。


「ゼロ様、何があったのでございましょうか?」


私は観念してことのあらましと情報を一つも集められていないことを報告して謝罪した。


「あれ? それってこっちが集めた情報と矛盾する気がするけどなぁ。」


「はい、私たちが集めた情報によると犬人族は猫人族に対して特に憎いなどの感情は持ってないとのことでした。年配の方の中にはよく思っていないと答えてくださった方もいましたが、大抵の人はここ100年の停戦協定の中で、憎んでた理由すら定かでなくなり、特になんとも思っていないと答えておいででした。」


「ええと、それはつまり、3人は俺の聞き方に問題があり、ルークを連れていたことは障害になっていないはずだと仰りたいわけですか?」


ルークの目に力が戻る。


「ゼロ様、決してそのようなことはことは・・・。え~と、その、ただ、そこら辺の矛盾があの御二人の徹底した拒絶に関係あるかも知れないと思っただけでございます。」


「なるほど。そういう見方も出来るな。流石、弥生。目の付け所がいい。ただ、サラサ。その上手くごまかせたな的な右手の親指は弥生だけでなく俺に丸見えだ。次は見えないようにやりたまえ。」


さて、弥生が誤魔化すために咄嗟に考えた言い訳が意外にしっくりはまりそうだ。もし本当に里の人々がお互いを憎くっていないなら、ルークを見てあれほど嫌悪感を露にしたのには理由があるはずだ。なんだかさっきまでこんな役目引き受けるんじゃなかったと本気で凹んでいたが、段々謎解きみたいで楽しくなってきた。連合に参加させれるかはこの際考えずに、この謎絶対に暴いてやる。


「じっちゃんの名に懸けて。」


「ゼロ、急にどうしたの? お祖父さんがどうかしたの?」


いかんいかん、勝手に盛り上がりすぎて台詞が口から出てしまった。


「違うんだサラサ。これは謎に立ち向かうときに発する、俺の故郷のおまじないの様なものなんだ。」


「そうであったかご主人様。ならば私も。」


「「「じっちゃんの名にかけて。」」」


この先、希望の民に変な風習が残らないことを願うばかりだ。


私たちは食事をしようと、レストランを探す。しかし、やはりルークと一緒だと入れる店は存在しないようだ。仕方なく、持ち帰れる料理を頼んで里の外で食べることにした。みんなも今日は里の外での就寝に付き合ってくれるようだ。


明日は猫人族の里に戻って情報収集だ。


今度はルークの存在がプラスに働いてくれますように・・・。

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