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ロメオとジュリエッタ 1

新章突入です。

引き続き楽しんで読んで頂けるように頑張りますので、お付き合いください。

希望の民連合の立ちあげ勧誘使者に不本意ながらも任命された私に最初に与えられた任務は犬人族と猫人族への説明と勧誘だ。


最早ファンタジー世界の定番となっているが、この世界でも犬人族と猫人族の仲は悪いらしい。もう、『犬猿の仲』じゃなくて『犬猫の仲』とことわざを変えた方が良いんじゃないか思う。猿と犬は桃太郎と一緒に鬼退治をした盟友なのに勝手に仲が悪い間柄の代表みたいに扱われるなんて可愛そうだ。英語では『cats and dogs』はすでに仲が悪い代名詞で使われているんだから、日本語もそれ似合わせれば良いんじゃない? などと、物思いにふけっているうちに、猫族の里に着いてしまった。


今回の訪問団は私、弥生、サラサ、ルーク、それと変態ケンタウロスだ。


「ご主人様、今心の仲で私を罵倒してくださいましたね!!ああ、もっとお願いします。」


彼女はとうとうテレパシーを身に付けたのだろうか、変態度に研きがかかってきた。


ここに到着する前に犬人族と猫人族にことの経緯と連合参加を促す説明が書かれている手紙が届いているはずだ。


私たちは里の門番に名を名乗り、用件を伝えた。きちんと手紙は届いていたらしく、無事に宮殿まで案内してくれた。里を歩いているときに猫耳娘を生で見た感動を我慢できず、ちょっとはしゃいでしまった所を弥生にきつめのお灸を据えられたのはご愛敬だ。


客間に案内されてから30分が過ぎた頃、2メートルはある大きな虎のような猫人族が入ってきた。礼節として私たちは椅子から立ち上がる。


「お客人、腰を下ろしたままで、結構ですにゃ。」


時が止まる。いや、止まったのは私の中の時間だけだったかもしれないが・・・。


「私はこの里の代表を務めさせて頂いているローマンと申しますにゃ。以後お見知りおきを。」


うん、やっぱり『にゃ」って言ってるにゃぁああああああああああ!!

がっかりだ!!始めてのにゃんこ言葉はこんな虎みたいなおっさんじゃなくて、可愛い猫耳娘から発せられるべきでしょ?大体、ファンタジー世界的にも『にゃ』を使うおっさんって魔法少女(♂)よりあり得ない存在じゃないの? 聞いたことないわ!! 大体、門番も屋敷の使用人も『にゃ』って使ってなかったですよねええええええ?


「はっ。」


我に帰る私。


「これはご丁寧に。私はゼロと申しますにゃ。」

「鬼族の弥生でございます。」

「竜人族のサラサです。」


ああ、やっちまった。『にゃ』のこと考えてたら私も『にゃ』つけちゃったよ。ああ、もう俺もあり得ない存在の仲間入りかなぁ。ちなみにあり得ない存在の変態ケンタウロスは一応護衛という任務のため後ろに控えている。


「おお、貴方がかの有名な巨人キラーゼロ殿であったか。そして、古式にゃんこ語をお話することが出来るとは感服いたしましたにゃ。『武』だけでなく『知』も優れておいでとは・・・。最近の若い衆にも見習って欲しいものですにゃ。」


ええと、何? 語尾に『にゃ』ってつけるだけで丁寧な言葉に早変わりするって解釈でOK?く・・・なら、プライドを捨ててやってやる!!


「それで、ローマンさん。連合の件、考えていただけましたか・・・にゃ?」


「はい、鬼族や竜人族の里の事件や巨人族の滅亡。間違いなく何か陰謀めいたものが動いているのは私たちも間違いないと思ってますにゃ。」


「では。」


「ええ、是非、連合の発足に参加させて頂きたいと思っていますにゃ。」


「ありがとうございますにゃ。」


「ただし。」


え、何この条件付きだけどみたいな接続詞。


「犬人族を参加させるなら、私たちは参加致しません。」


ここに来て語尾に『にゃ』を付けないってことは、かなり強めの言葉と捉えていいのかな? しかし、厄介な条件だな。


「ローマンさん。私たちは希望の民全部族での発足を目指しています。一つの部族を排除するという考えは私たちとしては受け入れること出来ません。」


「そうですか、残念です。ならばお引き取りを。」


取り付くしまがないまま私たちは宮殿を追い出される。


「1週間、この里での自由行動を許可いたします。犬人族の件で考えが変わったら、その間にまた会いに来てくださいにゃ。」


今さら『にゃ』をつけられても胸くそ悪い。自国の安全より犬人族と歩みを共にしたくないとは、どれほどまでに仲が悪いんだか。


私たちは次に犬人族と話をするために彼らの里へ移動する。猫人族の里から半日もしない距離に里は存在する。


里に着き門番に用件を伝えて、宮殿に案内してもらう。ここも先程と同じようにスムーズに進むことが出来た。30分後、2メートルはある狼のような犬人族が入ってきた。私たちは席から立ち上がる。


「お客人、腰を降ろしたままで結構ですわん。」


あれ、何だろうこのデジャブ感。


「私はこの里の代表を務めさせて頂いているジェームスと申しますわん。以後お見知りおきを。」


何だろう『にゃ』と違って『わん』はおっさんでも許せてしまう感が何故かある。この違いは何なんだろう?


「これはご丁寧に私はゼロと申しますわん。」


試しに『わん』を付けてみるわん。


「鬼族の弥生でございます。」

「竜人族のサラサです。」


「おお、貴方がかの有名な巨人キラーゼロ殿であったか。そして、古式わんこ語をお話することが出来るとは感服いたしましたわん。『武』だけでなく『知』も優れておいでとは・・・。最近の若い衆にも見習って欲しいものですわん。」


もう巨人キラーの名称は知れ渡ってしまっているらしい。


「それでジェームスさん。連合の件、考えていただけましたでしょうか?」


あれ? 『にゃ』と違って『わん』ってちょっと語尾に付けにくいわん。


「それなんですが、その前に一つお尋ねしたいことがあるわん。何故、うちの里に来る前に猫人族の里を訪れたんでしょうか?」


空気が張りつめる。


「私たちは猫人族の皆様にも連合に参加していただきたいと・・・。」


「いえ、そういうことではなく、なぜ犬人族の里より先に猫人族の里に訪問をしたかお聞きしているのですわん。」


え、順番の問題?


「申し訳ございません。竜人族の里からは猫人族の里の方が近かったので・・・。」


「それだけですか? 次からはきちんと犬人族の里を先に訪れるようにしてください。」


面倒臭いなこいつら。


「で、連合の件ですが、私たちも発足に参加させて頂きたいと思ってますわん。ただし、」


始まったよ。


「猫人族が参加するなら、犬人族は参加致しません。」


「ジェームスさん。私たちは希望の民全部族での発足を目指しています。一つの部族を排除するという考えは私たちとしては受け入れること出来ません。」


「そうですか、残念です。ならばお引き取りを。」


取り付くしまがないまま私たちは宮殿を追い出される。


「1週間、この里での自由行動を許可いたします。猫人族の件で考えが変わったら、その間にまた会いに来てくださいわん。」


ああ、こいつら対応も反応も全く一緒なのにどうしてこんなに仲が悪いんだろうか?とりあえず猶予は1週間。私たちの任務はその間にこの仲が最悪な部族を説得し、両部族ともに連合発足に尽力してくれるように取り付けること。


無理ゲーじゃない?


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