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それぞれの思惑 3

「それでは、第一試合、鬼族の秘蔵っ子『夜叉』vs竜人族の爆風『ガイル』を始めます。両者前へ。」


夜叉とガイルがコロッセオの中央に歩みを進める。夜叉はこん棒をガイルは槍のように長い棍を所持している。きっとガイルは通常は槍を使うのだろう。


決着は降参、気絶、レフェリーストップ、そして、死亡した場合で、レフェリーストップは明らかに決着がついたと思われた時のみ試合を止められる場合があるらしいが、当然のことながら『まだ、やれた』など異を唱えることは禁止されているらしい。実際に試合を止めるのは衛兵で指示を出すのはレスターとのことだ。


緊張の瞬間が訪れる。


「では、試合始め。」


掛け声と同時に両者距離を取る。武器からして夜叉は接近戦を、ガイルはやや離れた位置で戦いと思われる。


先に仕掛けたのはガイル。間合いの長さを利用しての突きだ。


夜叉は最小限の動きでこれをかわす。が、かわしたはずの攻撃で夜叉の頬に切り傷がつく。同時に歓声が起こる。


「ふむ、これが貴方の術と言うわけですか?」


ガイルの棍は青白い光に包まれている。


「その光自体に物質としての硬度と鋭利さを付属させる事が出来るようですね。大変勉強になります。」


夜叉は嬉しそうにガイルに話しかける。


「勉強ねぇ、じゃあ、高い授業料払ってもらおうか!!」


ガイルが攻撃の速度をあげる。夜叉は先程より大きな動きで攻撃をよけ、反撃に転じる。重そうなこん棒をいとも容易く操ると、ガイルの頭目掛け振り下ろす。また、歓声があがる。


ガイルが夜叉のこん棒を切り裂いて攻撃を回避したからだ。夜叉のこん棒は斜めに切られ、重量が4分の1程度になってしまった。どうやらガイルは槍使いではなく、棍使いであったようだ。あの棍全てが鋭利の刃物の変わりになるらしい。しかし、そうすると夜叉が若干不利を被っている気がする。何故ならこの戦いでは殺傷能力の高い武器は使用禁止なはずだからだ。ん、まさかこのルール、竜人族を有利にするためのものか? もし、そうなら考えた竜人族ズルいな。


などと考えている間にも戦いは続いていく。傍目にはガイルの圧倒的優勢、それにともない竜人族の大歓声。ただし、夜叉が頬の傷以外攻撃を受けていないことに他の大会参加者は気づいているようだ。


暫くすると、ガイルの術に変化が生じてきた。体力の消耗の為か、全ての攻撃をかわされている精神的動揺の為かはわからないが、光が揺らめき始めたのだ。


焦ったガイルが大振りな攻撃を仕掛ける。それを避けた夜叉はまた頭への攻撃を仕掛ける。観客が先程と同じ結果を期待するなか、今度はガイルの棍が砕け散り、夜叉のこん棒がガイルの肩に直撃した。静まり返る観客。素人目にもガイルの戦闘不能は明らかだった。


「それまで。」


ここで、レスターが試合を止める。


「医療班、急いで手当てを!!」


慌ただしく人が行き交うなか、夜叉は丁寧に一礼すると、控え室に入っていった。


少し夜叉は思っていたのとイメージが違うな。私の思い込みでは、あれだけの実力差があればもっと自分の力を誇示する様に戦う人物だろうと勝手に思っていたんだが、とどめもささない上にきちんと礼もしていった。ひょっとして更正したなんて淡い期待を抱いても良いのかもしれない。いや、もちろん警戒は続けるが。


ガイルの治療が終わり、第二試合が始まるようだ。


「それでは、第二試合、ドワーフ族の匠『ジオ』vs 竜人族の希望『レイス』を始めます。両者前へ。」


レイスというのは竜人族の次期頭領候補筆頭らしい。応援に一段と熱が入っている。まぁ、竜人族が一回戦で2人とも消えたらそれこそ暴動が起きかねないから、レイス君には頑張って欲しいが、どうなることやら。


「では、試合始め。」


ジオはドワーフ族らしく右手には大きな木槌を持っている。まぁ、入場の時は鉄槌だったから普段はそっちを使っているのだろうが、今回はルールなので仕方なくと言ったところだろう。左手にはいかにも頑丈そうな盾を装備している。逆にレイスは武器を持っていないので武道家タイプの戦士なのかもしれない。


第一試合と違い2人の距離は近いままだ。ジオは更に間合いを詰めると一気にレイスに襲い掛かる。その結果、またまた大きな歓声があがる。ジオの木槌が真っ二つに切られたのだ。ジオ自身は危険を察知して途中で武器を離して無事だったらしいが、武器を失ってしまった。レイスを武道家と考えたのは間違いだったようだ。武器を切り裂く一瞬、レイスの腕が青白い炎に包まれた。どうやら、彼は棍の変わりに腕を刃物に見立ているようだ。つまり、武道家と言うよりは剣士に近いのかもしれない。先程から私の予想は外れてばかりだ『術』という武器を考慮しなくてはならないようだ。


「ジオさん、降参してくれませんか?」


レイスがクールに言い放つ。


「若僧が。戦いは始まったばかりじゃろうて。木槌は失ったがワシには盾がある。完璧な防御は攻撃にもなる。」


そう言うと盾を構え、そのままレイスに向かって突進する。余程自慢の防具なのだろう。どうやらこっちがジオの本命の攻撃らしい。ただし、パワーはありそうだが、スピードが遅いため、簡単に避けられてしまうだろう。と、私が思った瞬間、ジオが加速した。これがジオの術なのだろう。またまた私は裏をかかれることになってしまった。超スピードでレイスのもとへ一直線。悲鳴があがるなか、レイスは微動だにしない。次の瞬間、レイスの腕がジオの盾を真っ二つにした。これには観客は大興奮。


「レイスが最強。」

「勝負あったな。」

「レイス様ぁ結婚してぇ。」


と、歓声の嵐である。


「ジオさん、最強の攻撃の前に防御は無意味ですよ。さぁ、降参してください。」


「ま、参った。」


「そこまで。勝者レイス。」


黄色い声援がスタジアム中に響き渡る・・・死ねば良いのに。


まぁ、冗談はさておきレイスも相当の実力者らしい。これは観客だけでなく、私も2回戦を見るのが楽しみだな。鬼族の秘蔵っ子『夜叉』vs 竜人族の希望『レイス』、間違いなく東京ドームですら満員になるカードであろう。まぁ、その前に、第三試合があるんですけどね。あの巨人族、4メートルぐらいあるんですけど、オーク族の人大丈夫かな? いや、私も勝ったら『あれ』と戦う可能性があるかと思うと少し憂鬱です。とりあえず試合を見てから対策を練りますか。

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