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科学者からの依頼 2

研究所の中は数人の研究者と山積みになった魔道具でお世辞にも整頓されてるとは言い難かった。魔道具が暴発したら跡形もなく全てが吹っ飛んでしまいそうだが、先程の私の侵入劇の解析で大盛り上がりのこの頭のネジがどこかに行ってしまった人たちには、多分どうでもいいことなのだろう。


「用件はその箱の中身の件でいいのかしら。」


唐突に確信を着こうとするところは昔と変わっていない。昔話も世間話も興味がないと言わんばかりの会話である。


「ああ、これを預かって欲しくてね。」


彼女は回りくどく説明されるのが嫌いなので、こちらも簡潔に要求を伝える。


「見たところ封印が施されているようだけど、中身は闇のオーブで間違いない?」


木箱を見ただけで推測できるとは、彼女の洞察力は相変わらず桁外れなようだ。ひょっとして彼女が封印を施したんじゃないじゃいかと疑いたくなるくらいだ。彼女は言葉を続ける。


「これは王族にしか伝わってない封印術で封印されてる様だけど、あなたこの封印解けるの?無理よね。昔から魔法の能力はゼロだったし、さっきの戦いかたをを見る限り魔法の能力が芽生えたように見えなかったから。正直、私にもこの封印術は解けない。研究するのは面白いかも知れないけど、今は他に興味があることがあるので、こちらに時間は使う気はないわ。と、言うことで、ただの木の箱に私は興味がないのだけれど、見返りは用意してあるんでしょうね。」


「ない。」


私は即答する。正直、闇のオーブには食いついて来るだろうと思い、壊さない程度の研究の許可という見返りで預かってもらうつもりだった。興味を示さないのは予想外だったが、彼女はそれでもこちらの依頼を断らないのは経験上わかっている。この後こちらの足元を見て無理難題を吹っ掛けてくる腹積もりだ。


「そう、じゃあこちらから提案があるわ。」


ほら来た。提案とは名ばかりの強制労働イベントである。


「解剖させて。」


「却下で。」


食いぎみに断る。ちなみに、解剖というのは彼女の冗談ではなく、本気の提案である。若かりしき頃、勇者ご一行様として、王城の客間に泊まったとき、夜、ベッドで寝ている私を訪ねてきた美女が一名。心踊るイベントになるはずが、いきなりメスで切りつけられた。暗殺かと思い、取り抑えると「お願いだから解剖させて、その戦闘能力の秘密を解き明かせば必ず強力な魔道具の開発に役立つはずだから。」と、目を輝かして訴える始末。それ以来、ことあるごとにこの提案はなされている。


「じゃあ、ダンジョンに入って採ってきて欲しい鉱石があるんだけど、それで手をうたない。」


ダンジョンに入る簡単なお仕事です。そんな甘い提案をする女ではないのでジト目で見る。彼女はこちらの視線を無視して話し続ける。


「ダンジョンの地図もあるし、そんなに時間が掛かる依頼でもないわ。そうね、4日間ってところだけど、どう?」


怪しすぎる。私はジト目を続ける。


「実は少し厄介な獣が出るらしいの。そこのダンジョンでしか取れない、シルベスタという銀色に光る鉱石があるんだけど、その獣が住み着いて以来、誰も入手できていないらしいの。王国や冒険者ギルドに獣の討伐以来は出しているんだけど、元々、鉱石としての価値がないものだから、本腰になってくれなくて。今回の研究に必要ですぐに手にいれたいんだけど。」


「それなら自分で倒せばいいだろ。何で俺に頼む。」


「私が閉所恐怖症なの忘れたの。」


あれ、そうだったっけ。うーん、思い出せないが否定も出来ない。


「とにかく、受けないなら私も箱は預からないから話は終わりよ。」


つい渋ってしまったが、いずれにしろ強制イベントなので受けることにする。


「遠征費はそっちが持てよ。」


「では、契約成立ってことで。こちらから提供するのは地図、光玉、食料品、テント、携帯食器、火種の玉、水玉数個。ポーターが必要だと思うけど、どうする。」


「ああ、ポーターも頼む。ただし、知ってると思うが俺は指名手配されてて、身分証明や身分照会されると不味いんでね。そちらから1人提供してくれると助かる。」


「残念ながら私の手駒は研究で手一杯でね、数日間の遠征には帯同出来ない。明日の数時間、私自ら時間を作ってあげるから、奴隷を買いなさい。ちょうど明日は奴隷市の開催日だから。」


結構無茶なことを仰いますが、奴隷って結構お高いんでしょ。私、お金ないんですけど。


「支払いはこちらで持てばいいんでしょ。ちなみに、私と一緒なら身分照会も必要ないと思うわ。感謝しなさい。」


流石に分かってらっしゃる。


「じゃあ、明日10時少し前に奴隷市場の前で待ち合わせでいいかしら。」


「ああ、それでいい。それと少し聞きたいことがあるんだが、サーナという女性の情報を知らないか。」


「サーナ?また新しい女を追いかけてるの、いい加減にしないとティアに怒られるわよ。」


「残念ながら手遅れだよ。もう愛想をつかされた。」


「あら、お気の毒に。で、今度はサーナって子を追いかけているの。」


「茶化さないでくれ。少し込み入った事情があるんだ。レンの町の領主に仕えてた女性で、何でも剣の腕が王国で10本の指に入るほどらしいから、それなりに有名らしい。なにか知らないか。」


「って、ことは、あなたレンの町の事件に絡んでるってことでしょ。全く相変わらず、色々な事に首を突っ込むのが好きなようね。残念ながら、その女の子の事は知らないわ。あなたがダンジョンから帰るまでに情報が入ったら、追加依頼なしで情報をつたえてあげるわ。」


「恩に着る。では、明日、よろしく頼む。」


そのまま研究を去り、一旦宿屋に向かい、シャワーを浴びてから酒場に向かう。さっきの運動のせいで汗やら土埃で気持ち悪い。


酒場では、残念ながらサーナの有益な情報は手にいれることは出来なかった。私はあせる気持ちを抑え宿屋に戻り、明日のことを考えた。


少しワクワクしたことに罪悪感を覚えた。ごめんなさいサーナ。ごめんなさいティア。だけど、折角の奴隷なら可愛い女性のポーターがいいよね。


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