After 魔族討伐遠征
すみません、新章に突入予定が幕間になってしまいました。
短めです。
あれから数日が過ぎたが、私はまだレンの町に滞在している。目的が決まっていないのも理由の一つなのだが、領主が言った、あの方とやらの追っ手を警戒しているからだ。今のところは命を狙われたり、私が宿泊している宿屋に強盗が入ったということはない。あくまで私が気づいてる範囲ではあるが、監視されている気配もない。ここまで動きがないと、「あれ、私の存在、バレてないんじゃない。」と、思いたくもなるが、それは流石に楽観し過ぎだろう。ならば考えられる可能性は3つ。
1、町中でアクションを起こすのは目立ち過ぎるため、町の入り口で監視を張り、私がこの町を去るのを待っている。
2、闇のオーブの必要性がなくなった。
3、私の戦闘能力を恐れ、闇のオーブを誰かに手放すのを待っている。
とりあえず、1はないかな。入り口に監視を張るより、私を直接見張っていたほうが効率がいい。2に関しては、あり得るだろう。元々人間には使いこなせない秘宝だ。領主を仲間に入れる際、領主の能力を確認するためだけに難しい試験を用意したとも考えられなくもない。その場合、闇のオーブをあの方は始から必要としていなかったということになる。3、これは一番可能性が高い気がする。領主から仮面の剣士は上位魔族を1人で倒す程の実力だと聞かされ、直接奪うのは諦めた。しかし、仮面の剣士が宝玉を手にしても使い道はないだろうから、いずれ金に変えるなり他人の手に渡るだろう。その時を狙えばいい。
今の自問自答の中で引っ掛かったことが一つ。そもそも私は仮面を今着けていない。「仮面の剣士」の仮面を外した姿を領主たちがみても心当たりはなかった。そして、私は自分の失敗に気がついた。彼らは私の手懸かりを殆ど掴んでいないし、監視しようにも対象者がわからない。ならば、彼らがすることは何か。私は胸を締め付けられる。
彼らがすることは、隊長さんを捕らえて情報を聞き出すことました。
多分、あの日の夜に私が隊長さんと会った情報は伝わっているだろう。もし、伝わっていなくても、領主たちが死んだ日の朝に町を出た。それだけで彼女に刺客を放つのには十分な理由だろう。私が守るべき相手は私自身ではなく、彼女だったのだ。後悔の念が押し寄せる。あの日の朝にその事に気づいてれば、あるいは彼女を。そう考えた時、私は彼女の真意にやっと気付いた。
「自分の道を自分の足で歩む。」
それは追っ手を私に向けないための彼女の決意だったのではないか。彼女は追っ手の可能性に気付き、私を守る為に町を出た。私はそれに気づかずに、自分の強さを過信して、ことの真相を知るために刺客が来るのを少し待っていたきらいすらあった。
強さとは力だけではない。私が領主に言った言葉だが、その事に気づけなかったのはなんのことはない、私自身だったのだ。彼女に強くなれなんておこがましい、彼女はあの朝すでに私より強くあったのだ。行き先がわからないので彼女を追いかけることは出来ないが、せめて再び出会えるように、私はこの町を出ることを決めた。
彼女の無事と再会を願いながら。