第三話
なんか称号に「巻き込まれし者」とかあるんですけど。
エ? 僕巻き込まれたの?
こんな人数で一人?
周りからは「俺、勇者だ!」とか
「私、魔法使い!」とか聞こえてくるんだけど。
観察者って何?
そもそも戦闘職か?
あれ、これ僕はどうなるんだ?
「自身のステータスは、確認していただけたでしょうか? 確認した人からこの水晶玉に触っていってください」
王女様らしき人が言った。
みんなは言われた通りに行動し始めた。
どうやら、あの水晶はステータスを確認する力があるようだ。
そして、僕の番がきた。
仕方なく僕は水晶玉に手をのせる。
案の定、王女の顔が一瞬固まった。
見なかったことにした。
それから少しして、やっと頭が回るようになったのか、誰かが質問した。
「そういえば、俺達は元の世界に帰れるのか?」
大事なことに気付いて空気が固まったけど、
「その心配には及びません。伝承によれば魔王を倒せば帰ることも出来るそうです」
空気は弛緩した。そうだ、目の前のことに気をとられ過ぎてそのことに気づけなかった。しかしそうか帰れるのか。
帰るなら魔王と戦うのは避けられないけど、どのみち僕は帰るつもりはないから関係ないか。
最後に王女様は言った、
「勇者様方、ありがとうございました。
お疲れでしょうから、お部屋をご用意させていただきました。侍女達に案内してもらって下さい。それから、最後に水晶玉を触った人はそのままここに残って下さい」 (はい呼び出しきましたー。)
そうして他の人が退室した瞬間、
僕は王と王女に土下座された。
「「申し訳ありません!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
「えーと?」
その後、王と王女が落ち着いてから、
「とりあえず、僕は気にしてません。
だから、この話は終わりです」
と、早々に話を終わらせようとしたが、
「そういうわけにはいきません‼」
「我々が召喚を行ったのだ、責任は取らねばなるまい」
なかなか頑固な人達だ。別にいいのに。
「王さま、僕はむしろあなた方にお礼がしたいぐらいなんですよ。僕は日常に飽きていたんです。僕は、この世界を旅してみたいと思っています。本当に召喚してくれてありがとうございます」
「そういうことであれば、わかった。だが旅をするなら、この世界の常識や最低限の実力をここでつけてからにしたらどうだ?」
「そうですね。それじゃあ、これからよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします‼」
王女様が大きな声で言ったので、僕は思わず笑ってしまった。
お前なんか要らん‼ って言われるかと思ったよ、優しい人たちでよかった。
これなら魔王戦も避けられそうだし。
この世界で僕は退屈しない人生を送って見せる!
とはいっても、出来るだけのんびりとね。