第二十三話
今日は早速ここに来た目的、冒険者ギルドへ行ってカードの再発行をしてもらおう!
この国での再発行がどんな意味を持つかは聞いておいた。
まずカードの機能が追加される。色々あるから説明は発行してもらうときに受付の人に聞いた方がいいらしい。
次に情報の開示だ。この国所属の冒険者は様々な情報の開示が出来る。勿論国家機密などは開示できないが、それでも冒険者の国というだけあって実力のある沢山の冒険者が実戦で得た技術やモンスターの習性や特徴など様々な情報の開示が出来るようになる。
最後にこの国で登録した冒険者だけパーティーやクランと呼ばれる集団を作れるようになる。
パーティーのほとんどは急造の物だったり人手が足りないときに適当に人を集めるなどがほとんどだが、クランは違う。
クランを結成するのは冒険者としての生き方が似通った人達で結成することが多く一度結成されたあと解散することは例外はあるが基本的に出来ない。パーティーと違うところは戦うときだけの仲間というよりは共に生活をする家族のような集団で、結成されたあと解散は出来ないし、それを望む人もほとんど居ない。
他にも色々あるのだが僕らが求めているのは、クランを結成すること。クランを結成すると僕らにとって好都合なことが多くある。
まず、依頼の報酬についてはメンバーごとでなくクランに支払われる。クラン共有の財産になるわけだ。
それからギルドへの情報開示を制限すること。
クランを結成する冒険者は色々な人が居るが共通するところが二つある。
一つは実力があること。
もう一つはその冒険者のほとんどが名声を得たり、二つ名を得ていることだ。
冒険者として活動するならパーティーだけでも十分だ。けれど凄い実力を持ち、人望のある人間のもとには沢山の人が集まる。
そもそもクランと言う制度が始まったのも実力のある冒険者が様々なパーティーに勧誘され、貴族などからも勧誘され、冒険者が自分の思うままに行動できなくなったので、そういった事態を防ぐためにクランと言う制度が作られたと言う。
クランの誰かを囲うということは、そのクランに対して喧嘩を売ったことにもなり、かつギルドとしても実績のあるクランを解散させられることは御免な為、その勧誘を本気で行った相手を潰す、といった風に実力のある冒険者を守るためにクランと言う制度が作られたのだ。
要は力のあるクランと言うものはギルドの中でもかなり大切に扱わなければいけないのだ。
それ故にクランが持つ情報を根掘り葉掘り聞くことはご法度であるらしい。昔にそれをやって解散したり姿を消したクランもあったらしい。
ある程度、実力を見せなければならないが、クランとして力を持てば、隠すことが多い僕らは過ごしやすくなるだろう。
という理由もあり僕らはこの国でカードの再発行をすることにした。
「さて、無事に入国できたはいいけど一体どこにギルドがあるのかな?」
適当に探し回りますかね?
数分後……
「これはあれですね。完璧に道に迷いましたね」
いやまぁ仕方ないと思うんだ。
この国の特徴って色々あるんだけど、一目で分かるのが滅茶苦茶広くて、高い塔が乱立してて、道があり得ないぐらい複雑なこと。
結構な数の人が街中で行方不明になることでも有名なんだとか。
一回建て直そうって話も出たらしいけど、国民には、これがなかなか人気で批判が出たらしい。それで今も迷路みたいになってる。
「んー、近くにお店でもあったらいいな。なんかいいものあったら買うし、無くても道案内してもらえばいいし。うん、やっぱりお店がないか探そう!」
というわけで、目的の場所にいくために近場のお店を探しに行きます。
とは言うものの、周りにはお店らしきものはどこにも……
「ん? あれはお店っぽいな」
いかにも頑丈そうなドアに周りが金属製の壁で覆われ、店の前に虎ばさみや銛が立て掛けられている物騒な建物には、
『花屋さん』
と書かれた看板がぶら下がっていた。
「…これが、花屋…?」
正直、非常に恐ろしいがそれでも少しばかりの好奇心をもってドアに手をかけた。
すると中から色々な物音がしているのに気づいた。
ゴゴ……ゴゴゴォン!
ギィーン…キキキキッ
ガリガリッ…ゴリゴリ…グチュッ!
ペキペキ…グチャッ…ヂュルヂュル…
チュイーン…ドォーンッ!
…一体何してるんだろう?
何か重いものを運んだり、固いものを切ったり、水気のあるものを潰したり、爆発する音が聞こえてくる。
…まぁいいや。とりあえず気をつけて入ろう。
入ってからもう一度思った。
………これが花屋?
最初に入って思ったのは、外見よりもかなり広いことだ。明らかに外見は少し小さめのお店だったのに、中はショッピングモールの一階分ぐらい広くて、いくらなんでも広すぎる気がする。
だけどそれより目を引いたのは、そこに置かれているものだった。
確かに花屋ではあるのかもしれない。
店のなかには花がたくさん置いてあった。
あれらを花と呼ぶのかは分からないけど。
明らかに金属製の鋭くとがった花びらに、本来植物のめしべとおしべがある場所に二つの歯車が収まっていて、高速回転している触ればミンチになりそうなものや、
食虫植物のような見た目ではあるが、豚のような生き物をまるごと一頭頬張って周りが血の海になっているものや、
捕らえられた生きたゴブリンをユリのようなものが頭にくっついて何かをすする音が聞こえるものや、
果実がたくさん実った木に、白くてきれいな花がついているのだが、その花の真ん中には明らかに怪しい『押すなよ』と書かれたボタンがついた花、など少し例えを挙げただけで目の前に置いてあるものが花なのか余計分からなくなる。
正直あれに近づきたくはない。
でもやっぱり気になるので、他には何があるんだろうかと思って見ていると、
「おや、珍しい。お客さんかな?」
店の奥から白髪頭のお爺さんが出てきた。
「こんにちは、ここで花屋を経営しているヘロワじゃ。まぁ売っとるものは見りゃ分かると思うが普通の花じゃないがのぅ」
「こんにちは。昨日ここに来て現在迷子のオーマといいます。どこかで道を尋ねようとお店を探していたらここを見つけました」
「そうかそうか、昨日ここに来たんじゃったら道に迷っても仕方ないのぅ。それじゃあ通りに出る道を教えてやろう」
「あ、じゃあ少しお店を見て回ってもいいですか?」
「おお構わんよ。じゃが不用意に花に触らんようにな。特にそこのボタンウメにはな」
「あれってボタンウメって言うんですね」
「あれを知らんのか。それじゃあ教えてやろう。名の由来は見たまんまじゃが、恐ろしい性質があっての。あのボタンを押すとなあれに生っとる果実が爆発する」
それは何となくわかってた。
「そんでな、あの果実が問題でな。あれはとんでもなく酸っぱい。それが凄い勢いで爆発するもんでな、直撃を食らえば骨がおれるは目は開けれんはで大変なことになるんじゃ」
下手に爆発するだけよりたちが悪かった。名前からしたら梅干しだろうし、それが傷口とか目とかに入るのは嫌だな~。
「ちなみに爆発の威力は一個で地面が少し抉れるぐらいじゃの」
絶対、触らないでおこう。
死にはしないけど、僕はMでは無いのだ。
「まぁ他のはあからさまに見た目がヤバイからさわらんだろうしな…。じゃあ、適当に見ておいてくれ。わしは先に花の世話をやっとくからの」
そういってお爺さんは奥に入っていった。
じゃあ遠慮なく他の花を見せてもらいましょうかね。
あ、そーだ。ゲンドー君も呼ぼう。
お~い、ゲンドーくーん。
「呼んだか……って何だ、これは?」
さすがのゲンドー君もこれ見たら固まりますね。
「冒険者の国のお花屋さんだよ」
「これが、花?」
「うん。ゲンドー君気に入るかな~と思って! あ、でも触るときは気をつけて。見た感じ分かると思うけど、危険なものもあるから」
「まぁそうだな。いくら死なないとはいっても、こんなところで見せるのもあまり良いことではないだろうし、何より店に迷惑をかけるからな」
そう言った後、ゲンドー君は花に夢中になった。
僕も色々見て回ろ。掘り出し物があるといいな。