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温度  作者: 啓。
6/7

いらない

どれほど泣いたのだろう。


涙がもう出なくなってしまった。


泣いて残ったものは、疲れた事だけだった。


目の奥がジンジンして、目もいつも通りにはひらかない。


声を出して泣き過ぎて喉も痛い。


ベッドによりかかって、いつも持ち歩いてる母がくれた紙を財布から出してみつめる。


辛い時はいつも何度でもこれを見る。


『凛々しく歩く』


ほんと、名前の通りの由来だ。


だけど、この由来が嬉しくて、この紙を持ち歩いてるのではない。


母が書いてくれた、その事に嬉しくていつも手放せずにいる。


10年くらい前のものだから、もう色あせてボロボロだ。


だけど、その分大切にしていると言うのが自分でも伝わってくる。


私は、今日はこの紙を持ったまま眠ることにした。





朝になると、リビングには誰もいなくて、母もいなかった。


あの人はどれだけ裏切れば気が済むのだろ

う。


ホントのお父さんの事だって、今回のことだって。


私には、家族というものがわからない。


なぜ分からないのだろう。


「家族なんて…」


そう呟いた。


が、その後の言葉は出せなかった。


『もしかしたら』と言う淡い期待がまだ心のどっかにあったから。


それと同時に、母がちゃんと私を見てくれるかもしれない。


と、そんな気がした。


だから、呟いた言葉の先を続けることはできなかった。


だから、余計に悔しくて、何故か悔しくて。


家族なんて…、『いらない』って言葉は飲み込んで、心の奥底に沈めた。


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