弁当
「でさー。寝ようと思って電話切るよーって言おうとしたら、切りたくなくなっちゃってさ。声が消えると寂しくなっちゃって」
昼休み。教室の窓際の席で、和の他愛のない話から始まった。
「てかさ、和」
「ん?」
「死ぬわけじゃないんだから大袈裟過ぎ」
私は弁当箱に入っている卵焼きを箸でつか
み、淡々といった。
すると、和はご飯を沢山口に詰め込んで、一生懸命喉につまりそうになりながら、飲み込んで箸を置いたあとに、
「いつ死ぬかわからないんだよ?もしかしたら、今日死ぬかもしれない。今死ぬかもしれない。それは誰にもわからないから私は彼氏と過ごす時間は大切にしてんの」
と、和も淡々と言い返してきた。
「ごめん。私にはわからない」
それしか言えなかった。
「あ、凛歩ちゃんの弁当今日も色とりどりだね。ちゃんとバランス考えてあって。凛歩ちゃんのお母さんすごいよね」
たまたま窓際に来た同じクラスの小寺さんが私の弁当を見るなりそう言った。
私の弁当は、自分で作っている。
あの人が作ってくれたことなんて何一つな
い。
そう思った瞬間、私は弁当を持ち立ち上がった。
後ろを振り返り小寺さんを見る。
「でしょ?美味しそうでしょ?食べる?」
そう言って小寺さんの口に入れる振りをして自分が食べた。
何故か涙の味がした。
私は耐えきれず、学校の屋上へ逃げた。