大嫌いだ
「凛歩ー、眠くない?」
朝、学校に着くなり、友人から飛んできた言葉は、おはようではなかった。
いつも通りだが、何故かスルーせずにはいられない。
「おはよう」
けど、そこをぐっと堪えて普通の挨拶をした。
そうすれば和も気づくと思った。
朝はおはようから始まるってこと。
「うん、ねえ聞いてよ。あのさ、昨日さ彼氏と電話をしてたら、切りたくなくなっちゃってさ。寝れなかったんだよね」
私はその瞬間、諦めた。
真面目に対応するだけ無駄だと。
まー、昔からそうだからほとんど諦めついてるけど。
「凛歩、きいてる?」
考えてるといつの間にかHRの時間に近かった。
「ごめん、和。私やらなきゃいけないことがあるから。また昼休み聞くよ」
そう言って私は自分の役割を果たすため職員室前へ行く。
私はみんなに配るプリントをとりに行く係だ。
高校生にもなってこんな係があるなんて思ってなかった。
「高月」
聞き覚えのある声だった。急に背後から呼ばれて振り返ると担任だった。
「はい」
「進路の紙、お前だけだぞ出てないの。ったく、お前ん家の母ちゃんはどうなってんだよ。それともあれか?お前、紙出してないんじゃないのか?」
担任だからって、いつもこいつはズカズカと心の中に入ってくる。
そして、荒らしたあとに出ていく。
そんなことまで言わなくていいのにって事をこいつは言ってくる。
私はこいつが大嫌いだ。
「知りません。直接母にきいてもらえますか?」
そう言ってその場から離れた。
いつもなら、重いプリントの束が、今だけは怒りのおかげで軽く感じた。
みんな、ほんと脳みそすっからかんだ。