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Abu Dhabi Flag Day1-1

 アル・ダフラ空軍基地 10月9日 1341時


 戦闘機のエンジンが一斉にかかった。甲高い音のため、ヘッドセットを使わなければ、エプロンではまともに会話をすることができない。最初にアブダビ空軍のF-16Fが4機とミラージュ2000Cが2機、タキシングを始め、"ウォーバーズ"の多国籍な戦闘機が続いていった。その後ろから演習を支援するKC-10AとE-737が離陸する準備を開始する。万が一の事故に備えて、CV-22とCH-53E、アブダビ空軍のUH-60に燃料が入れられる。そんな様子を、S-3Bのクルーたちが見ていた。今日、彼らは飛ぶのに自分たちは地上でお留守番だ。

「クソッ、飛べないのが癪に障る」

 バリー・ベックウィズが吐き捨てるように言う。彼はとにかく飛ぶのが好きで、他の仲間が飛んでいるのに自分だけ仲間はずれにされるのが気に食わなかった。

「我慢しろ。今日は空戦訓練で、明日は対水上作戦の訓練もあわせてあるから、その時になったらたっぷり暴れさせて貰えるさ」

 ロイ・クーンツは相棒を宥めた。

「本当か?」

「ああ。ボスが言っていた。しかも、実弾射撃だとさ」

 ベックウィズの表情がみるみるうちに変わった。

「ほう。と、言うことは、ハープーンやマーヴェリックを撃たせて貰えるということか。最高だね」

「取り敢えず、今日はシステムの点検をしよう。電源車を持ってきてくれ。明日の訓練のために万全の状態にしておきたい」


 ツァハレムとベングリオンは格納庫から引き出されたアパッチのコックピットに収まり、電源を入れてシステムチェックを始めた。コックピットのパネルに各種データが表示される。

「ガン」

 IHADSSを被ったベングリオンがそう言って、頭を左右に動かす。その動きに連動して、機体下の30mm機関砲が動く。外で見ていた整備員が腕で大きく「丸」印を作って見せる。異常なし。

 ベングリオンはシステムチェックモードに切り替えた。ロングボウ・レーダーをまさか地上で作動させるわけにはいかない。

「対空モード」

「異常なし」

ツァハレムが答える。

「エンジンテスト。アル・ダフラタワーへ。こちら"アナコンダ"。エンジンテストのためにローターを回すが離陸はしない。繰り返す、エンジンテストのためにヘリのローターを回すが離陸はしない」

『了解、アナコンダ』


 アパッチのローターがゆっくりと回り始め、やがて離陸するのに十分な回転数まで達した。

「エンジン出力75パーセント・・・・80・・・・85・・・・90・・・95・・・100。システムオールグリーン、エンジン異常なし。ラダー、エレベーター異常なし。エンジンカット」

 アパッチのエンジンが切られ、ゆっくりとローターの回転速度が落ちていった。ベングリオンとツァハレムはヘリから降りると、機体の状態をチェックした。やがて、整備員がトーイングカーに乗って来て、アパッチをハンガーにしまい込む。

「これなら大丈夫そうだな。明日は気合を入れていくぞ」

ベングリオンが相棒に話しかける。


 アラビア湾上空 10月9日 1412時


 空戦訓練が開始された。公平になるように、AEW&Cは周囲の安全管理に努め、お互いの編隊に指示はできるだけ出さない。レーダースコープの輝点にはWBDやADAFといった表示が記された矢印のアイコンと、民間機を表す便名の表示が記されたアイコンが映る。

「始まったな。さて、どんな手を使うのか・・・」

スタンリーは輝点をじっくり見てみた。

「ルーキーには単独戦闘をさせないみたいですね。見てください」

 リー・ミンが話しかけた。WBD1というアイコンがWBD6のアイコンと、WBD2のアイコンがWBD7のアイコンとそれぞれ二機編隊(エレメント)でブレイクする。しかし、他の機体はそれぞれ単独で離れていった。

「編隊で動くのが2組。他は単独戦闘をするのか。さて、どうするか」

 一方ADAFのアイコンは整然と編隊を組んで飛んでいる。まだ動く気配は無い。

「向こうはどんな手を使ってくることやら・・・おっ、動くか?」


「ウォーバード6は1に、7は2と編隊を組め。他は自由戦闘」

佐藤が命令を出す。

『了解』一斉に答えが返ってきた。

 2機のF-15が編隊から離脱して、東側へ向かった。一方、タイフーンとF-16は北の空域へ飛んで行く。

「敵機確認。ファイツ、オン!」

 佐藤は最初に見えたミラージュ2000に狙いを定めた。アブダビ空軍のパイロットはそれに気づいて、反転する。だが、F-15は広い主翼から生じる高い機動性と大出力のエンジンが2基搭載されているという特性を生かし、"ピッチ・バック"という機動で追いかける。後ろからはラッセルとロックウェルが乗ったストライクイーグルがしっかりと付いてきている。

 

 F-15Cはあっという間にミラージュに追いついた。佐藤はAAMを選択し、ロックオンした。

「フォックス2・・・・キル!」

"撃墜"されたミラージュは翼を振って、離脱していった。


 ヒラタは自分が乗っている機体と同じF-16を相手にしていた。いや、厳密に言うと"同じ"では無い。ジェイソン・ヒラタが乗っているF-16はF-16CJブロック52と呼ばれる、アメリカ空軍が採用しているタイプだが、UAE空軍の主力機はF-16Fブロック60と呼ばれるタイプだ。最大の違いは、レーダーでヒラタの愛機がAN/APG-68(V)9というメカニカルスキャン式を採用しているが、向こうはAN/APG-80というAESAレーダーを装備している上に、エンジンも大出力のものに換装されている。ヒラタは同じ戦闘機を相手にしているとは思えなかった。向こうが推力に余裕がある分、旋回や急上昇をしても速度が落ちない。そして、"敵機"がループ機動に入ろうとした。ヒラタは後ろから追おうとしたが、推力で負け、後ろに回り込まれてしまった。

『Fox2』やられた。 

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