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Final Option-4

 10月23日 0856時 スハール空港上空


 敵機の脅威が殆どなくなったため、戦闘機は上空でCAPを始めた。空中給油機がその支援に回る。ミサイルを撃ち尽くすか、兵装の残りが少なくなった戦闘機はアブダビ国際空港へと帰還していく。UAE空軍や"ウォーバーズ"の戦闘機は、2~4機の編隊を組み、上空で円を描くように空域の確保を始めた。


「こちら"ウォーバード1"、敵機の脅威は確認できず。繰り返す。敵機の脅威は確認できず」

『"ウォーバード4"、敵機の姿無し。引き続き上空哨戒(CAP)を続ける』

『"アナコンダ"は地上の脅威を排除せよ。"パイソン1"と"パイソン2"は、地上部隊の回収のため待機せよ』

『全機、残燃料と残り兵装を確認せよ』

 戦闘が終結したものの、武装勢力はまだ残っている可能性はあるし、何よりオマーン正規軍がやって来た場合、再度交戦の可能性もある。UAE空軍と傭兵のパイロットたちは、油断なく周囲を飛行し、交代でCAPを続けた。


 10月23日 0901時 スハール空港


 突入した地上部隊が、M4A1を手に油断なく辺りを見まわり始めた。空港の正門、駐車場、エプロンにはBMP-3とルクレールが配置につき、外部からの攻撃に備えている。UAE陸軍の通信兵がオマーン国内の無線通信傍受を始めた―――万が一、無線通信が急に増加したり、沈黙したりした時は、すぐに脱出する手順を立てていた―――が、別段変わった通信は無かった。この国の軍と警察、いや、この国の政府自体が、既に機能不全を起こしている現在では、彼らを攻撃する者は皆無に等しい状態だった。


 UAE陸軍の兵士たちが敵が使っていた机の中の書類、放置されていたPCを回収し、金庫の扉を破壊してこじ開けようとしていた。出来る限り、祖国を攻撃していた敵の正体を掴もうとしている。彼らには、この基地の敵の撃滅と、可能な限りの情報収集という、2つの任務を抱えていた。扉の近くで銃を構える兵士は耳をそばだて、何度も同じ場所を睨め回し、不意な敵襲に備えていた。しかし、今はもう、上空を飛び回る戦闘機の音とヘリの音以外は全く聞こえてこない。


 爆発物処理部隊の兵士たちが、敵が撤退する時に爆発物を仕掛けていた場合を考えて、この空港の敷地内のあらゆる場所を虱潰しにしていた。また、敵がNBC兵器を持っていた可能性も考えられたが、今のところは、そのようなものは見つかっていない。変わったものといえば、敵が使っていた軍用機や対空兵器、兵装の残骸くらいのもので、後は、航空燃料のタンクや小型飛行機、空港用の支援車両、タンクローリー、消防車など空港ならどこにでもあるようなものしか見つからなかった。


 空港外周を警戒していた兵士たちが最も恐れていたのは、オマーン正規軍だった。しかし、内戦で疲弊し、更には無政府状態になっているこの国に、軍を出動させる力も無く―――そもそも、軍や警察、沿岸警備隊は勿論、この国のあらゆる公的機関は機能不全に陥っているのだ―――この攻撃に気づいたものがいるかどうかも怪しい状況である。だが、第三者に見つからないうちにこの国を出て行くのが得策だと、軍の司令官は考え、空港の捜索を終え、敵に関する情報を回収次第、速やかに帰還するように命令を出した。


 10月23日 1023時 スハール国際空港


 戦車や装甲車、ハンヴィーが空港の滑走路に並び始めた。地上部隊の隊長は点呼を取り、最後にもう一度、自分の目で残した部下がいないことを確認してから、乗車した。

「出発するぞ。"HQ""HQ"。こちら"フタコブラクダ"。任務完了。帰還します」

『"HQ"より"フタコブラクダ"へ。了解。速やかに撤収せよ』


 UAE陸軍の戦車や装甲車が空港の敷地内から隊列を作って出て行った。その直後、空港のエプロンに駐機していた、アパッチやブラックホークが離陸し、彼らの援護を始める。この航空部隊は、ちゃっかりと、スハール国際空港の燃料車から給油し、帰り道分の燃料を得ていた。ヘリ部隊は車両部隊を援護しつつ、バチナー・ハイウェイを通ってUAEへ向むかった。


 スハールを攻撃した航空機や車両が、オマーン国内を北上し、UAEへと帰還していく。しかし、オマーンには、彼らを咎める警察も、軍も、国境警備隊も存在しなかった。UAEの軍と傭兵部隊は、誰からも危害を加えられること無く、それぞれの拠点へと戻っていった。


 10月23日 1311時 ジブチ国際空港


 ジブチ国際空港にJ-10BとSu-57が着陸した。この空港は、無政府状態になったジブチ政府の管理の手から離れ、事実上"闇空港"として機能していた。ここには、何らかの事情で、表立って飛行場を利用できない傭兵やテロリストの格好の隠れ場となっていた。マルコヴィッチらは、ひとまずこの空港に落ち着くと、次の隠れ場所の検討を始めた。

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