Final Option-3
10月23日 0814時 スハール空港
UAE陸軍のパラシュート部隊が、空港の敷地内に着地した。彼らは素速くM4A1やM249を構えると、タキシングや離陸準備を始めていたMiG-23やJ-8Ⅱ、JF-17などに銃弾を浴びせ始めた。戦闘機の機体に無数の穴が空き、キャノピーが赤く染まる。"赤い鳶"に雇われた傭兵パイロットは不意打ちを食らう形となった。ある者は機関砲で彼らを撃とうとしたが、5.56mm弾や40mmグレネード弾を浴びせられ、絶命する。だが、その傍らで、Su-57とJ-10Bの離陸を許してしまった。
SA-12やSA-15にM72の66mmロケットが撃ち込まれた。一部の兵士が、滑走路にM-150という爆薬を仕掛け始める。これは、アメリカ軍の中では"PAM"とも呼ばれているもので、主に特殊部隊が壁やドアを爆破するために使う、携行式の成形炸薬だ。彼らは、これを滑走路の破壊に使うようだ。
10月23日 0819時 オマーン上空
「"カンガルー"より"ゴッドアイ"へ。任務完了。これより帰投する」
空挺部隊の"配達"を終えたC-17Aが、UAEへ戻り始めた。護衛機である2機のミラージュ2000Cとコルチャックのフランカー、カジンスキーのファルクラムが前方、後方、左右の守りを固めている。
『こちら"ゴッドアイ"了解。気をつけてな、ハワード』
コーベンはミサイル警報装置の画面をチラリと見た。今のところ、敵に捕まった様子は無い。だが、国境を越えるまでは油断するつもりは無かった。
「"ウォーバード1"、Fox1!」
佐藤はAIM-120Cを敵目がけて発射した。本当はAAM-4Bを使いたかったが、アレは滅多に手に入らないので、節約しなければならない。AMRAAMは暫く真っ直ぐ飛んだ後、左右にくねくねと動き、最後はロックオンしたJF-17に命中した。
「スプラッシュワン!」
彼の後方では、シュナイダーが援護位置に付いている。戦闘機は、対地兵装を殆ど使いきり、後は上空にいる敵戦闘機の"掃除"をするだけとなった。
F/A-18CとF-16CJに、2機のMiG-23が向かってきた。お互いに中距離ミサイルを使うには中途半端な距離だったため、なし崩し的にドッグファイトに入ってしまった。4機の戦闘機がシザースという機動を始め、お互いに、敵の後方かつ上方に入ろうとする。暫く、その状態が続いた後、アル=カディーリがこの巴戦に参加した。まずは、コガワを狙うフロッガーの後ろに回りこむ。敵機のパイロットはそれに気づき、上昇して逃げようとしたが、既に彼は機関砲の射程内に入っており、アル=カディーリが引き金を引くと、MiG-23の機体には無数の穴が空いたのち、爆発、炎上した。
J-7がサイドワインダーの直撃を受けて爆発し、ミラージュ2000CがJF-17から放たれたPL-10で撃ち落とされる。この空域で飛んでいる戦闘機が見る見るうちに減っていき、その度に、人工の流星が空に炎の筋を描いた。
10月23日 0827時 スハール空港
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
UAE陸軍の部隊が、屋内の制圧を完了しつつあった。ハンガー、ターミナル、管制塔を虱潰しにし、10人を捕虜に取った。他は抵抗したので、射殺せざるを得なかった。窓の外ではAH-64Dが、低空で飛びながら援護している。この空港を捜索していると、様々なものが見つかった。最新式の地対空兵器、航空機搭載用ミサイルや爆弾、そして種々雑多な航空機の部品・・・・・。だが、肝心な書類は全て燃やされて、パソコンやHDDは全て物理的に破壊されていたため、敵の情報を得るのは困難となった。
ルクレールやBMPが、空港の敷地内に突入した。が、脅威になるものは既に無かったため、これは戦術的意味と言うより、象徴的な意味合いが強かった。テロ組織を壊滅させ、その本拠地を制圧したという。
10月23日 0838時 オマーン上空
タイフーンがIRIS-Tを発射して、JF-17を撃墜する。更に、MiG-23がAAM-5の直撃を受け、爆発、炎上しながら墜落していく。幸運にも、パイロットは脱出に成功したようだ。既に、一部の敵戦闘機は戦域からの離脱を開始しており、流れは完全にUAE空軍/"ウォーバーズ"連合部隊に向かっていた。やがて、滑走路を穴だらけにされていることに気が付かなかったパイロットがいたのか、MiG-23が1機、着陸を試みようとしていた。そのパイロットは燃料が既に少なくなっていたのか―――滑走路の状態には降下中に気づいているはずなのだが―――無理やり戦闘機をタッチダウンさせた。フロッガーは滑走路の穴にギアを取られ、すぐに擱座して動かなくなった。勿論、そのパイロットはすぐに捕虜として、連行された。
F-15CがMiG-21を機関砲で撃墜し、タイフーンがミーティアを放つ。長射程ミサイルは、真っ直ぐ飛んでいき、逃走を図っていたJ-8Ⅱに命中した。他の敵戦闘機は逃げるか、既に撃墜されていた。




