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Final Option-1

 10月23日 0614時 アブダビ アブダビ国際空港


「さて、諸君。今回の作戦の概要を説明する。我々は、遂に敵の拠点を見つけることに成功した。場所はスハール空港だ。これは、我々が雇った諜報員が撮ったものだ。そして、先の海上での戦闘で捕虜にした数名の人間の証言からも、ここが敵の拠点であることを裏付けている」

 マームード・アル・アリー中将は、パソコンのキーボードを操作した。スクリーンにスハール空港の写真が映る。そして、エプロンにはMiG-21、JF-17などに混ざって、J-10B、Su-57などが写っている鮮明な写真が表示される。

「これだけ多くの戦闘機が写っているとなると、ここが敵の一大拠点に違いない。この戦闘のきっかけとなった、"ウォーバーズ"の佐藤飛行中隊長を撃墜したのも、このSu-57で間違いないだろう。ここを叩けば、恐らくは敵は拠点を失い、攻撃能力を失うか、壊滅するだろう。だが、この攻撃には、かなりのリスクが伴うのも承知している。よって、参加するのは志願者のみとしたい。この作戦への参加を辞退したい者は、ただちに名乗り出てくれ」

 アリーは部下たちの顔を一通り見回してから、暫く黙って待った。しかし、誰も手を挙げたり、席を立ったりする者はいなかった。

「よろしい。諸君の勇気に感謝する。では、まずは作戦の概要を説明する・・・・・」


 エプロンにたくさんの航空機が並んだ。輸送機、空中給油機、AEW、ヘリ、そして戦闘機。この戦闘が始まって以来、最大規模の攻撃作戦が始まろうとしていた。タンクローリーやウェポンローダーが慌ただしくエプロンを走り回る。この作戦の成功の可否が、この戦闘の勝負を決定づけると言っても過言ではなかった。整備兵たちがクリップボードを見ながら、どの機体にどの兵装を搭載するのか、何度も確認している。やがて、戦闘機や空中給油機のパイロットたちが、ハンガーから歩いて出てきた。


 10月23日 0659時 アブダビ アブダビ国際空港


 "ウォーバーズ"のメンバーは、司令官のゴードン・スタンリーを先頭に、S-3Bのクルーを除く全員が固まって、自分たちの航空機へ歩いていた。朝日が昇り始め、UAE空軍の兵士、傭兵たち、そして航空機を明るく照らしている。彼らが使用している区画では、スペンサー・マグワイヤを始め、技術部のメンバーが航空機の最終チェックをしている。

 スタンリーが航空機の列線の前で立ち止まると、マグワイヤと高橋以下、技術兵たちが整列して一斉に敬礼をした。

「航空機の用意は完了しました。最終チェックをお願いします」

 高橋がスタンリーの前で言う。戦闘機には既に指定された兵装が搭載され、KC-135RとKC-10Aにはタンクローリーから最大離陸重量ギリギリになるまで燃料が送り込まれている。

「了解だ。後は我々に任せてくれ」

 スタンリーは彼らに敬礼をすると、一人一人と握手をした。大事な作戦の前には、いつもこうしている。


 コルチャックとカジンスキーは自分の戦闘機へ向かって歩いていた。その後ろから、ラッセルとロックウェルが歩いてきている。そして、カジンスキーは彼ら一人一人と、右手の拳をぶつけあった。

「安心して奴らに爆弾をぶちまけてきな。背中はしっかり見ていてやる」

 コルチャックは振り返って、彼らに向けて親指を立てて見せた。

「頼むぜ。こっちは爆弾を落としている間、お前らしか頼りになるのがいないからな」

 ラッセルはコルチャックの肩を"任せたぞ"といった様子で軽く叩いてから、戦闘機に乗り込んだ。


 コガワは自分の目で、愛機のF/A-18Cの細かいところを1つ1つチェックしていった。ギア、フラップ、スラット、エンジンノズル、エアインテイク、パイロン、兵装・・・・・。やがて、隣で同じようにチェックをしてるヒラタと目が合った。ヒラタは、彼に対して親指を立ててみせる。準備完了だ。コガワも最後のチェックを終え、ヒラタの方を見て、親指を立てる。


 シュナイダーは機体の点検を終え、後はエンジンを始動させるだけといった状態になった。向かい側には、アパッチ、オスプレイ、シースタリオンが出撃のための最終チェックをしている。やがて、ブライアン・ニールセンがこちらの方を向いて、手を振る。シュナイダーが手を振り返すと、キャシー・ゲイツやデイヴィッド・ベングリオンらも、一斉にこちらに手を降った。ロバート・ブリッグズとイアン・コナリーも、コックピットに乗り込む前に、彼らにサムズアップもした。


 ハワード・コーベンとジョン・グラントは、今日、自分たちが運ぶ、UAE陸軍の空挺部隊の隊員、一人一人と握手を交わし、彼らへ安全に作戦地域まで運ぶと請け合った。スティーブン・コールとクリス・ミッチェルは、彼らの装備と人数を確かめて、計画と違いがないことを確認した。


 ゴードン・スタンリーは、ハリー・トムソンとハッサン・ケマルと握手を交わし、彼らの肩を軽く叩いてから、航空機に乗り込んだ。続いて、リー・ミンが彼らとハグをする。そして、彼女が後ろを振り返ると、原田景が、佐藤勇に後ろから飛びついているのが見えた。


 10月23日 0711時 アブダビ アブダビ国際空港


 2つの滑走路から、次々と飛行機が離陸していく。戦闘機、輸送機、空中給油機。固定翼機が飛び去ると、続いてアパッチ、ブラックホーク、オスプレイ、シースタリオンが、スズメバチの大群のように滑走路に並び、一斉に離陸した。

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