Naval Strike-4
10月17日 0801時 UAE アブダビ アブダビ国際空港
轟音を立ててC-17Aが滑走路を驀進し始めた。最大離陸重量ギリギリまで燃料とUAVを搭載したため、4100mの滑走路を目一杯使って離陸した。下で見ていたロバート・ブリッグズはヒヤヒヤしていたが、ゆっくりと、そしてとても低く巨大な輸送機は離陸した。続いて、KC-10AとKC-135Rも、戦闘機への給油支援のために離陸した。
「"カンガルー"より"ゴッドアイ"へ。護衛機はどうなっている?」
ハワード・コーベンにはそれが一番の気がかりだった。戦闘空域でノロノロと飛ぶ輸送機など、ただのカモである。
『今、そっちに向かって飛んでる。あと数分で合流できるはずだ』
スタンリーがコーベンたちを安心させるため、落ち着いた口調で言う。確かに、こんな最前線の―――それも、制空権が完全に確保できているとは言いがたい―――空域まで輸送機を飛ばすのは正気の沙汰とは言えない。しかし、この戦いで勝利を得るには、どうしても彼らの力が必用だった。
10月17日 0804時 オマーン湾上空
F-15CがC-17Aの左前方に並び、護衛に付いた。佐藤はキャノピー越しにC-17Aのパイロット2人の姿を確認し、手を振る。
「"カンガルー"より"ウォーバード1"。護衛は1機だけなのか?」
副操縦士のジョン・グラントは不安そうに辺りの空を見回して言った。
『"ウォーバード4"より"カンガルー"へ。そちらの5時方向に付いた。後ろは安心してくれ』
「了解だ"ウォーバード4"」
一方、機長のハワード・コーベンは任務に集中させるよう、頭を切り替えていた。
「"カンガルー"より"ゴッドアイ"へ。標的までの座標を送ってくれ」
『了解。少し待ってくれ』
スタンリーはデータリンクをチェックした後、標的の座標を転送した。
「座標確認・・・・入力OK。データリンクを使いばいいか。目標直前までは自立飛行で。後は、どれだけ早く捌けるかが勝負だな」
マグワイヤは全てのUAVに標的の座標が入力されたことを確認した。しかし、これだけの数になると、1機1機を確かめる時間は無い。
「投下準備完了。カーゴランプを開けろ」
C-17のカーゴルームにいる全員が、モンキー・ハーネスで体を固定していることを確認してから、クリス・ミッチェルはカーゴランプを下ろした。凄まじい風が機内に流れ込み、全員を襲う。
「投下準備・・・・・コース確認・・・・・コースよし。投下!投下!」
オレンジ色をした巡航ミサイルのようなMQM-74Cのコピー品が、次々と空中に投げ出された。その数、全部で100以上。無人標的機はプログラムにしたがって、海面スレスレの高度を標的に向かって飛んでいった。
10月17日 0806時 オマーン湾上空
リー・ミンはレーダー画面に多数の反応が現れ、その全てが敵艦の方向へ飛んで行くのを確認した。
「無人機の投下を確認。標的に向かって、高度約・・・・・34フィート!?なんて低さなの・・・・・」
「無人機だからできる業だな。これなら、ほぼ直前までは、なかなか見つからないだろ」
無人機はハープーンよりやや遅い、マッハ0.85で飛行した。しかし、この無人機の武器はハープーンの倍近い600kmもの"射程"である。おまけに、プログラミングにより、超低空飛行ができ、一度に100機以上も投下されたため、飽和攻撃の効果も期待できた。
10月17日 0811時 オマーン湾
「対艦ミサイル接近!距離600!?数は・・・・・何だこの数は!?」
テロリストのレーダー員は、スコープの反応を見て驚愕した。50機以上の戦闘機が一斉に対艦ミサイルを撃って来でもしない限り、こんな事にはならないはずだ。
「これは・・・・何かの間違いじゃないのか?レーダーの故障じゃないのか?」
「異常はありません!これは一体・・・・・」
「対空戦闘用意!撃ち落とせ!」
対空ミサイルでロックオンする時間が無かったため、コールチク対空防御システムの機関砲が次々と火を噴いた。2機のUAVがルフ級駆逐艦に衝突する。1機は主砲の根本にぶつかって貫通し、もう1機は機関室を貫通して、ガスタービンエンジンの1基を破壊した。
3機のUAVが機関砲に撃墜される。そして、その爆発の隣では、ルダ級駆逐艦にUAVが突っ込み、船体に幾つも穴を開ける。テロリストの艦隊は、予想外の攻撃に大混乱に陥っていた。そして、UAE空軍の戦闘機部隊はこの機会を最大限に利用した。追い打ちをかけるようにシーイーグル対艦ミサイルやマーヴェリック空対地ミサイルで、フリゲートを攻撃する。
護衛の駆逐艦部隊をUAVでボロボロにされたため、テロリストの艦隊は総崩れを起こしていた。上空では、Yak-38やKa-52が撃墜されていく。やがて、艦隊の司令官だろうか。国際緊急周波数で、UAE海軍と空軍に対して、降伏するとの連絡が入り、武装解除した男たちが、両手を上げてぞろぞろと甲板上に出てきた。高速艇とヘリから乗り込んだ海軍兵が、テロリストたちを逮捕し、艦船は押収物の回収が終わった後、爆破・沈没させられた。




