Naval Strike-3
10月17日 0734時 オマーン湾上空
「おいおいおい。これは何かの間違えじゃないのか?本当にこんなのがいるのか?」
ラッセルはシュナイダーを若干、非難するような口調で言った。と、言うのも、今、送られてきた画像に写っているものが、にわかに信じがたかったせいでもある。
『さっき、無人機からの画像を確認した。転送するから待ってろ』
UAE空軍は、この作戦でP.1HHハマーヘッド無人偵察機を観測機及び斥候のために数機、飛行させていた。その画像データは全てUAEの戦闘機と傭兵部隊が共有できるように設定されていた。
「何かの冗談だろ。こんなのがいるはずがない。そもそも・・・・・」
ラッセルは更にまくし立てたが、2枚目の画像にを見た途端、閉口した。どう見てもYak-38とKa-52、Ka-32が載った、キエフ級重航空巡洋艦にしか見えない。その傍らには護衛なのか、タランタル級コルベットが1隻と053型―――NATOコードジャンウェイ級―――1隻が並んで航行している。
「奴ら、どうやってこれを手に入れた」
『多分、闇造船所を使ったんだろ。金と図面さえ有れば、何でも造ってくれる連中がいるのは知ってるだろ』
「ああ・・・・。だが、どうする?どうやってこいつらを排除するんだ?」
スタンリーも同じ画像を確認していた。キエフ級空母―――ロシアは重航空巡洋艦と呼んでいるが―――とその護衛をする艦船がいる。飛行甲板にはYak-38とKa-52、Ka-32が並んでいる。
「まさかこんなものまで持っているとは・・・・・」
「一体、どこから手に入れてきたのでしょうか?まさか中国みたいにスクラップとして買い取ってから・・・・」
リー・ミンの言葉は、この画像を見たら誰もが思う事だったが、誰もが言い出さずにはいられないだろう。
「多分、どこかにある闇造船所だろ。西側の最新鋭艦以外なら、何だって造っている」
「空対艦攻撃で排除するには、危険が大きすぎます。特に護衛艦が残っている時は」
原田はこの画像を見て、彼女なりに攻撃プランを幾つか立てたが、全て危険が大き過ぎると考えて自分の中で却下していった。
『陸上基地と海軍艦船に標的用のUAVがどれだけ残っているか調べてもらえますか?』
突然、無線機からアラン・マッキンリーの声が聞こえてきた。
「どうするんだ?」
スタンリーは怪訝な顔をした
『訓練用に、標的射撃用の使い捨てUAVを幾つか持ってきていますよね?そいつを一斉に飛行機から発射して、突っ込ませるんです。件の艦船に突っ込むように、画像データを記憶させるか遠隔操作を使って』
「つまり、即席の巡航ミサイル、という訳か。あれはここからも管制できるが、それだけでは足りないかもしれない」
『移動用の管制装置を輸送機に積んで、安全な所から動かすのはどうです?それなら数分でできますよね?おまけに、ターゲット用UAVでも重量と速度はそれなりにあるから、ぶつかればダメージを期待できますし、何より対艦ミサイルに比べて格段に射程距離が長いです。他にいい考えはありますか?』
スタンリーは暫く考えこむような表情でそのまま黙っていたが、口を開いた。
「なるほど。UAVを即席の巡航ミサイルにして、飽和攻撃か。リー、ケイ。他に考えはあるか?」
二人は沈黙していた。
「わかった。それで行こう」
10月17日 0745時 アブダビ アブダビ国際空港
"ウォーバーズ"に与えられたハンガーとエプロンでの動きが慌ただしくなった。C-17Aに移動式の標的用無人機管制装置を積み込み、持ち込んだ全ての無人標的機が次々と並べられる。この無人機は、全長3.87メートル、幅1.76mで丁度、小さな巡航ミサイルのような形状をしており、地上のランチャーや航空機から発射できる上に、輸送機からの空中投下から飛翔させることすら可能だ。これは日本製のMQM-74Cを兵器メーカーがコピーしたものである。また、最高速度はマッハ0.9と、ハープーンを僅かに上回っている。しかし、このUAVの最大の武器は航続距離であり、それはなんと、590kmと異様に長い。しかし、重量の問題から、F-15かSu-27に1機ずつしか搭載できない。
高橋正は、C-17Aの空いたスペースに出来る限りUAVを搭載するよう指示した。この大型輸送機のペイロードをもってすれば、異様な数の"即席対艦ミサイル"を投下することができる。
「管制装置は準備完了だ。今、床に固定している」
スペンサー・マグワイヤが固定作業をしているUAE空軍の作業員たちを手伝いながら言った。装置と言っても、机が2つとノートパソコンが2つという簡素なものだ。
「管制は一人でもできるが・・・・まあ、俺たち二人で行こう。初めてのやり方だし、何かトラブルが起きないとも限らないからな」
「UAE空軍が護衛機を飛ばしてくれるらしい。これなら安心だな」
「まさかこんな使い方をすることになるなんて・・・・夢にも思っていなかったわ」
クリス・ミッチェルがUAVの数を数え、そしてタブレットの上で素速く指を動かしながら、重量オーバーにならないかどうか計算していた。
「あとどれくらい積んでいいかい?」
マグワイヤは、できるだけ多くの"ミサイル"を搭載させたかったが、それは誰でも同じだった。
「ちょっと待って・・・・あ。あと10発行けるわ」




