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暁の出撃

 10月17日 0456時 アブダビ アブダビ国際空港


 突然の大音量の放送で叩き起こされ、パイロットたちは機嫌が一気に悪くなっていた。それも、突然の敵襲では無かったのが、それまたパイロットや整備員、兵士たちの苛立ちに拍車をかけた。日はまだ登っておらす、空には藍色の夜の帳がまだ残っている。ある者は欠伸をしながら歩き、またある者は目を擦りながら、ノロノロとバスルームへ歩いて行く。


 佐藤は猫背気味で若干体をふらふらさせながら、オペレーションルームへと向かっていった。既に歯を磨き、顔を洗い、着替えも済ませたが、まだ目が覚める気配は無い。すると、突然、背中に柔らかいものが触れると同時に両肩に腕を回され、背筋を強制的に伸ばされた。

「痛っ!」

「はい、しっかり立って歩いてください。休暇で体がなまっているとは言わないでくださいよ」

 原田だった。彼女は既に飛行服を着て、レッグホルスターには拳銃を収め、いつでも出撃準備完了、といった様子だった。

「よお、朝から元気がいいな」

 角からひょっこりとロイ・クーンツが現れた。彼も飛行服を着て、必用な装備を既に身に着けている。

「やあ、ロイ。もしかして、出番か?」

「ああ。あの潜水艦騒ぎから、ずっと出番が無かったからな。まあ、今のところは、対潜哨戒に関しては、ヘリで済んでいたからな。おっと、出番と言っても、今日は実戦での出番で、訓練飛行はしっかりやっていたから、そこら辺は安心してくれ」

「で、また潜水艦騒ぎか?」

「さあな。詳しくは聞いていないが、俺たちが出るということは、海上での作戦なのは間違いなさそうだ」


 10月17日 0517時 アブダビ アブダビ国際空港


 空港のVIPラウンジの大ホールは、今や机やパソコンが並べられ、更には大スクリーンも設置され、急ごしらえのオペレーション・ルームとなっていた。既にゴードン・スタンリーとリー・ミン、ムスタファ・アル=カディーリは、ブリーフォングの準備を着々と進めている。スクリーンにはオマーン湾周辺海域の地図が表示され、空港のコックと空軍の給仕兵が、朝食を運び込んでテーブルに並べている。スタンリーは、こんなに忙しない朝飯は、アゼルバイジャン以来だな、と思った。やがて、ホールの扉が開き、UAEの空軍兵や自分の部下が、入ってくるのが見えた。


「さて諸君、状況を説明する。先日、アメリカ海軍が、オマーンへ入港しようとする貨物船を拿捕した。臨検した所、大量の戦闘機の部品や空対空ミサイル、空対地ミサイル、巡航ミサイル、更には短距離と中距離の弾道ミサイルが発見された。船員は全員逮捕され、密輸品は全て押収された。しかし、どういう訳か、アメリカ軍はその後撤退し、インド洋から東アジアへ向かっていった」

 アル=カディーリは部下たちがしっかりと状況を頭に入れて、噛み砕けるよう、一息ついてから話し始めた。

「しかし、AISの情報を海軍が監視した所によると再びパキスタンのカラチ港から出発した不審な船団が確認された。しかも、その船団のAIS信号はパキスタン領海から出ると、途絶えてしまった。偶然とは思えない。恐らくは、オマーンに向かったものと思われる。更に、前回の失敗から、今度は戦闘機、哨戒機、フリゲート、潜水艦からなる護衛を用意していることも考えられる。戦闘機や空対空ミサイルならば問題ではないが、巡航ミサイルなどは、民間人ないし民間団体が大量破壊兵器を保有することを禁じるトリノ条約への違反行為だ。今回の諸君の任務は、この密輸船団と思しき船を発見し、拿捕ないしは必用とあらば撃沈することだ。この作戦は、対空・対水上ないし対潜作戦が主任務となる。海軍がムーレイ・ジップとバイヌナ、アル・ダフラの3隻のコルベットとミサイル艇バニヤス、マーバン、ロゴムを派遣し、更に潜水艦に機雷を敷設された時に備えて、掃海艇アル・アスバも待機している。哨戒ヘリも準備中だ。作戦時の管制は例によって、ゴードン・スタンリー氏らが行う。以上だ」


 10月17日 0654時 アブダビ アブダビ国際空港


 ようやく陽がさしてきた空港のエプロンに並べられた航空機が、一斉にエンジンを回し始める。戦闘機、空中給油機に加えて、対潜哨戒機のS-3Bと対潜ヘリのAS-532SCもエンジンを始動させ、離陸準備を始める。

『アブダビタワーより"アッバス隊"へ。ランウェイ13Lへの進入を許可します。風は南南東から4ノット。横風は無し』

『"アッバス1"よりアブダビタワーへ。了解』

 AIM-120C、AIM-9MとAGM-65F、増槽を搭載したF-16Eがタキシングを開始して、離陸へ向かう。その後ろで、AM-39エグゾセとR-550を搭載したミラージュ2000がエンジンを始動させる。

『"アッバス1"、"アッバス2"。離陸を許可します。続いて"アッバス3""アッバス4"、離陸を許可します』

 F-16Eが4機、次々と離陸した。ミラージュも間髪入れずに離陸して行き、援護に回る。


『アブダビタワーより"ウォーバード1"、タキシングを許可します。ランウェイ13Rを使ってください』

「了解。ウォーバード1。タキシング開始」

『"ウォーバード2"、タキシングを許可します』

「2了解」

 F-15CとF-16CJに続いて、"ウォーバーズ"の多彩な戦闘機が離陸のためのタキシングを開始する。朝焼けの太陽の光を受け、戦闘機はオレンジ色に照らされていた。

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