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リスタート-5

 10月17日 1558時 アブダビ アブダビ国際空港


 3日連続の集中的な演習を終えた傭兵部隊とUAE空軍の戦闘機が着陸する。その傍らでは、輸送機が物資を積み下ろし、フォークリフトがそれらをトラックに積み替えている。どうやら、この短時間でかなりの兵装、航空機のスペアパーツ、燃料などが手に入ったようだ。エプロンに散らばっていたものは、既に片付いており、アラート待機をする戦闘機が6機、空対空ミサイルと増槽を翼の下にぶら下げている。


 着陸した戦闘機はタキシングをして、それぞれに指定されたエプロンで駐機した。機体のチェックをされた後、ハンガーへと運ばれていく。ここ数日の作戦、移動、演習で、パイロットたちはかなり疲労していた。


 佐藤はF-15Cから降りて、機体全体に目を通すようにチェックをすると、後の整備をスペンサー・マグワイヤら技術班に任せることにした。機体の調子は上々で、この次も問題なく作戦に投入できそうだ。

「お疲れさん。悪いな。迎えにくるのが原田じゃなくて。それはまあ、置いておいて。UAEのパイロットの腕はどうだったか?」

 高橋正が水のペットボトルを差し出しながら、佐藤に話しかける。佐藤はそれを受け取ると、一気に半分まで飲んだ。

「悪くは無いが、まだまだ経験が足りない。ところで、物資の方はどうだ?」

「必用なものは殆ど揃った。燃料も、ミサイルも、パーツも」

 やがて、轟音と共に、背中にレーダーを背負った飛行機が着陸した。後ろからはF/A-18C、F-16CJ、MiG-29Kが続き、最後にKC-10Aが降りてくる。

「ボスたちが帰ってきた。これでしっかり戦えるな」

 

 ハッサン・ケマルとハリー・トムソンはE-737を"ウォーバーズ"に与えられた区画へとタキシングさせた。予備機のテストは順調に進んだため、すぐに実戦化させることが出来た。ケマルはUAEの地上クルーの指示に従い、愛機をエプロンの指定された場所に駐機させる。

「アテンションプリーズ。当機はアブダビ国際空港に予定通り到着致しました。降りる際には、シートとドリンクホルダーを元の場所に戻すようお願いします。また、レーダー機器の電源を落とすのを忘れないよう、ご注意ください。また、完全に飛行機が停止するまで、シートベルトはそのままでお願いします」


 10月17日 1608時 アブダビ アブダビ国際空港


 E-737にタラップが横付けされた。ドアが開き、ゴードン・スタンリーが最初に降りてきた。リー・ミン、原田景が続き、最後にケマルとトムソンが降りてきた。

「おかえりなさい、ボス」

 グレネードランチャーを取り付けたHK-416Dを持ったジャック・ロスらが整列し、一斉に敬礼をした。

「おいおい。そんな大した迎えなどいらんぞ」

 スタンリーは顔をしかめた。

「何言っているんですか。ボス抜きで、どうやって戦うんです?」

「それもそうだな。ところで、俺たちがいない間に、なにか情報は入ったか?」

「スペンサーとタダシが、アメリカ軍の無線とデータリンクを傍受しました。まだ空母はペルシャ湾でバカンス中のようです。たまにヨーロッパからグローバルホークが飛んできますが、それ以上の動きは無し。無線連絡が急に増えたり、途切れたりはしていません」

「そうなると、奴らは当分の間、行動を起こす気は無さそうだな。敵に関することは?」

「それがですね。ちょっと一騒動ありましてね」

「何があった」

「つい2時間前ですが、イラク海軍とアメリカ海軍がイランを出てマスカットへ入港しようとしていた輸送船団を臨検しました。そこから、何が見つかったと思います?」

「何だ」

「大量のMiG-21とJ-8Ⅱの部品、それとR550とR-13MことAA-2Cでした。調べてみたところ、こういうのはアフリカやアジア、南米などで大量生産されていて・・・・・」

「それはわかっている。それで、一体何がそんなに重要なんだ?」

「積み荷の目録には、工業用金属片とありましてね。勿論、機体はその中に巧妙に隠してあった訳ですが・・・・」

「待て待て、何でそんなに詳しくわかるんだ?」

「さっき、スペンサーが傍受したと言いましたよ。その輸送船団は、かなりの数だったそうです」

「だいたいどれくらいだったんだ?」

「スペンサーによると、全部で16隻のRo-Ro船だったようです。しかし、ここで問題が・・・・」

「アメリカ軍が撤退したか」

「ええ。その通りです。理由は知りませんが、エンタープライズ空母戦闘団がここから離れて東の方へ向かいました。多分、東南アジアか日本周辺で厄介事が起きたのでしょう。そこで、UAE軍の上層部は、海上臨検作戦を立てることになりました」

「なるほど。で、まだ敵は輸送船を動かしているのか?」

「可能性はあります。怪しい船舶を見つけたら、ヘリや高速艇を使って、臨検を仕掛ける予定でいます」

「そうなると、我々にはうってつけの飛行機があるな」

 スタンリーはハンガーへ牽引されいていく、S-3Bヴァイキングに目をやった。やがて、S-3Bはエンジンテストを始めた。特大の掃除機がゴミを吸い上げているような音を立てて、エンジンのターボファンが回り始める。

「ええ。連中は、先日の臨検を受けて、護衛のためにフリゲートや戦闘機、場合によっては潜水艦も差し向けて来るでしょう」

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