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ストライク・パッケージ-2

 10月13日 1517時 UAE上空


「敵を発見。かなり低く飛んでいる」

 ムスタファ・アル=カディーリはF-16Eのレーダーで敵を捉えた。6機の攻撃機を8機の戦闘機が護衛しており、そのストライクパッケージが全部で5つ。前後に展開している。

「まるで"アルファ・ストライク"だな。やるぞ」

 F-16Eの編隊は、まっすぐ敵の先頭の編隊と向き合う形を取った。こちらに注意を払っている隙に、側面から別の編隊が攻撃を仕掛ける算段だ。殆ど教科書通りのような戦術だが、それ以外に有効な手立ては無さそうだ。

「各機、攻撃機を優先して撃墜。戦闘機は向かって来る奴だけを叩け」


 テロリストのSu-24は改造されており、センターパイロンには1発だけだが、Kh-55が搭載されている。やや傾きかけ、西日が強くなり始め、ライトグレーの戦闘機にはややオレンジ色がかかっていた。その護衛をするのはJ-8Ⅱだ。どうやら、ボグダン・マルコヴィッチは値段の高い第4世代以降の戦闘機の調達を見送り、その代わり第3世代程度の安い戦闘機の大量調達に乗り出したようだ。MiG-21やJ-8Ⅱ、J-7などは安価な上に、アフリカ、アジア、南米などで密かに大量生産されているため、手に入れるのはかなり容易だ。この編隊の遙か後方に、同じような編隊が10個も控えている。これだけあれば、阻止することはほぼ不可能だ。


『ちいっ、見ろよこれ。なんて数だ』

 コルチャックはレーダーに表示される情報を、味方機に転送し続けた。

「ミサイルの残弾数に注意しろ。少なくなってきたら基地に帰還しろ」

佐藤は一発も撃っていないが、再度、ミサイルの状況を確認した。短距離ミサイルと中距離ミサイルがそれぞれ4発。フル装備だが、十分とは言えない。

『"ウォーバード5"より"ウォーバードリーダー"。射程に入った?どうする?』

「敵と識別でき次第、撃て」


 10月13日 1524時 UAE上空


 MiG-29KとSu-27SKMからR-77が、タイフーンからミーティア1発ずつが発射される。これらのミサイルは改修により、対妨害性能が向上し、チャフに騙されにくい特徴を持つ。長射程ミサイルは母機からのデータリンクを頼りに敵機を探した。


「"ウォーバード4"より"ウォーバード1"へ。敵確認。11時方向、距離110nm。マッハ0.9で飛行中・・・・敵は4機と確認」

 コルチャックはミサイルの残弾を確認した。まだ1発しか発射していない上に、そのミサイルはまだ飛行中だ。

「ミサイル着弾まであと6秒・・・・4、3、2、1・・・・命中」

 レーダー画面に表示された敵機のアイコンがミサイルのアイコンと重なると同時に消えた。

「残弾確認・・・・何だ?この数は?」

 コルチャックはレーダー画面に表示された敵機の数を見て愕然となった。その数はざっと見ただけでも、三桁は軽く超えそうだ。

『この数だと、どう考えてもミサイルの数が足りないし、それ以前に何機か撃ち落としているうちに、敵が基地上空に来てしまう』

 ムスタファ・アル=カディーリが彼らの会話に割って入った。その間に、カジンスキーのMiG-29KがR-77を発射し、MiG-21を撃墜する。

『ダメだ。敵が多すぎ・・・・』


 10月13日 1529時 UAE上空


 J-8ⅡやJF-17に護衛されたH-6KとTu-22Mの爆弾倉が開き、その中からYJ-6"クラーケン"やKh-55、CJ-10Kなどの巡航ミサイルが顔をのぞかせる。

「ターゲット確認。第一編隊、攻撃準備完了。第ニ編隊、第三編隊、攻撃準備せよ。第四編隊以降は待機・・・・・・」

 爆撃手がターゲットのデータを確認した。これら巡航ミサイルは改修が施され、『北斗』という中国版GPS衛星や『GLONASS』というロシア製GPS衛星を利用したGPS誘導が可能となっていた。

「ターゲット確認。ターゲットはアル・ダフラ基地。発射カウントダウン開始」

「発射30秒前・・・・・20秒前・・・・」


 10月13日 1532時 アル・ダフラ基地


『警告、警告。対地ミサイル飛来。繰り返す、対地ミサイル飛来。総員、即座に退避せよ。警告、警告・・・・・』

 装輪装甲車やハンヴィーに乗った兵士たちが基地から退避していった。一方、基地司令官以下、首脳陣は、まだ他に残っている兵士がいないかどうか確認を行うのに忙殺されていた。

「司令官、そろそろ退避を・・・・・」

 彼の警護を買って出た中佐が話しかけた。階級が少佐以下の将校や下士官は、全員、退避さた。司令官は副司令と自分を除く全員に退避命令を出したが、誰もそうしようとはしなかった。

「ならば、君が先に行け、中佐。どう考えても、勝ち目は無さそうだ。だが、この基地は俺の家だ」

 ホーク・ミサイルが2発、続けざまに発射された。更に数発が続き、ミサイルを撃ち尽くしたランチャーには、予備のミサイルを搭載した、小さなトラクターのようなローダーが近づいていく。

「そうはいきませんよ。誰かが残らないでどうするんです?」

「それは私の役目であって、君の役目ではない」

 UH-60Aが3機、エンジンを回したまま着陸した。降りてきた兵士が地対空ミサイル(SAM)を操作していた兵士に近づいて、何事か話しかけると、暫く言い争っているような会話が聞こえた。が、やがて、数名の若い兵士がヘリへと向かっていた。一方で、彼らがヘリで退避するのを見守っていた古参のベテラン兵は、ミサイルを再発射する作業を再開させた。

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