ストライク・パッケージ-1
10月13日 1501時 UAE上空
Tu-22Mの編隊が、J-8Ⅱの護衛を受けながら飛行している。更に、その遙か南方ではMiG-23とSu-24Pの護衛付きでH-6Kが続いている。この攻撃機/爆撃機の編隊は、攻撃目標としてアル・アインの市街地を目指していた。爆撃機の爆弾倉にはZAB-2.5とAO-2.5RTMという2種類のクラスター爆弾とKAB-500通常爆弾が搭載されている。誘導爆弾やミサイルの類は無く、完全に絨毯爆撃・無差別爆撃を狙った爆装だった。レーダーを避けるため、かなり低空を高速で飛んでいる。これが砂漠だったのが、UAE・傭兵連合部隊にとっては幸いした。もし、山がちな地形であったならば、爆撃機は地面クラッターに紛れてしまい、発見するのが面倒になっていただろう。
「敵機捕捉。11時方向からマッハ0.5で飛行中。迎撃する」
シュナイダーのタイフーンのレーダーが低空で飛行する敵機を捉えた。データリンクにより、即座に他の戦闘機に情報が転送され、レーダー画面上に反映される。
『こいつは・・・・随分低空を飛んでいるな。ステルスにしては反応が大きいから、Su-57では無さそうだ』
佐藤はレーダー・モードを"ルック・ダウン/シュート・ダウン"に切り替えた。レーダー画面にいくつかの反応が出る。
『速度が早いのと遅いのがいる・・・・・爆撃機か?』
「だとしたら、巡航ミサイルを搭載している可能性もある。Tu-95やtu-22MならKh-55を搭載できるはずだ。そうなると・・・・・かなり厄介だな」
『アル・ダフラタワーより"ウォーバード1"へ。敵爆撃機と思われる編隊を捉えた。巡航ミサイルを搭載している可能性もある。可能な限り遠くで対処せよ』
「"ウォーバード1"了解。みんな、行くぞ」
"ウォーバーズ"の戦闘機は、ミリタリーパワーで敵機のいる方角へと向かった。どうやら、敵の護衛機も気づいたらしく、戦闘機が編隊から離れてこちらに向かってきた。
10月13日 1506時 アル・ダフラ基地
PAC-2-GEMミサイルやMIM-23ホークミサイルのランチャーが物凄い勢いで展開を始める。更に、最後の手段として闇市場から手に入れた、ゲパルト自走対空機関砲や2K22ツングースカも並び始めた。
基地では、巡航ミサイルの飽和攻撃で戦闘機が対処しきれなくなった時に備えて、対空兵器要員、戦闘機の給油や再武装を行う要員といった必要最小限の人員以外は退去するよう基地司令から命令が出た。"ウォーバーズ"の空中給油機や輸送機も離陸して、代替基地のアブダビ国際空港へと向かっていった。が、整備中で離陸できないE-737は、残念ながら置いていくしかなかった。
「全員乗ったか?離陸するぞ!」
エンジンがエンジンを回し、離陸の準備を完了させたCH-53Eのコックピットから、ブライアン・ニールセンが大声で叫んだ。隣では、CV-22Bがスペンサー・マグワイヤと高橋正、ジャック・ロスらコンバット・コントローラーたちを乗せて既に離陸して、ヘリコプター・モードから飛行機モードへとスムーズに転換して飛び去っていった。シースタリオンには、原田景、リー・ミンに加え、救難隊員であるトーマス・ボーンとバック・コーエンが乗っている。
「待ってくれ!ボスが!」
ストークリー・ガードナーがそう叫んだ途端、ジープが猛スピードで走ってきて、ドアが開いた。中からゴードン・スタンリーが出てくる。スタンリーは、自分を送り届けてくれた兵士に「幸運を」と一言かけると、ヘリに乗り込んだ。
「ボスが乗った!上げろ!」
『警告!警告!基地司令より全兵士へ!巡航ミサイルによる飽和攻撃の恐れあり!整備、対空兵器、警備の各要員以外は、直ちに退去せよ。繰り返す。巡航ミサイルにより・・・・・・』
UH-60やCH-53Eが離陸していった。先程、着陸したばかりの輸送機も、物資を積んだまま再び空へと舞い上がっていく。最後にC-130が滑走路へタキシングしていき、すぐに凄まじいハイレートクライムで離陸していった。
10月13日 1510時 UAE上空
戦闘機部隊は敵の新手を追っていた。一方、敵機は巧みに低空を飛ぶことで地面クラッターの中に自機を隠していたつもりだった。しかし、最新式のキャプターEレーダーやAN/APG-63(v)3には、その手は通用しなかった。
「敵さんが大勢いる。しかも、基地にかなり近いところまで侵入されてしまっている」
コルチャックは敵を自分たちの拠点の近くに侵入させてしまったことに苛立っていた。
『アル・ダフラタワーより上空の各機へ。敵の目的は、飽和攻撃によるこの基地の破壊と考えられる。よって、最低限の人員と航空機、装備以外は、全て退避させた。万が一、アル・ダフラが攻撃された場合は、アブダビ国際空港へ向かえ。繰り返す、アル・ダフラが攻撃された場合は、アブダビ国際空港へ向かえ。そこに基地機能の移転を開始した』
「こちら"ウォーバード1"了解だタワー。我々が阻止する。ところで、兵装と燃料の補給準備はできているのか?」
『兵装と燃料、最低限の人員はいる。安心してくれ』
「了解だ。恩に着るよ」
『ウォーバード1』
「何だ」
『幸運を』




