護衛-4
10月13日 1427時 アル・ダフラ基地
「また戦闘機が来るぞ!急いで燃料と弾薬を用意しろ!」
「なに?俺たちの方じゃない?・・・・・傭兵連中か?」
UAE空軍の地上整備兵たちは、"ウォーバーズ"の地上クルーがウェポン・ローダーとタンクローリーを移動させるのを手伝った。ずらりと並んだたくさんのウェポン・ローダーにはAMRAAM、サイドワインダー、ミーティア、IRIS-T、R-77、R-73が載せられており、仲間が乗る戦闘機に武器弾薬と燃料を補給させる準備をしている。
「あそこのジープを早くどかせ!」
「早くしろ!時間が無いぞ!」
地上クルーたちは、素速くウェポン・ローダーとタンクローリーを、所定の位置に並べた。
「来たぞ!補給準備確認!」
「準備よし!」
F-16CJを先頭に、ユーロファイター、MiG-29Kなどが続き、最後にF-15EとSu-27SKMが着陸する。滑走路にタッチダウンした後は、規定ギリギリの高速度でタキシングをしてエプロンに入った。
『タワーより"ウォーバーズ"へ。着陸後、エンジンはそのまま回しておくように』
「"ウォーバード1"よりタワーへ。了解。"ホットピット"だな」
エンジンをかけたままの戦闘機に、タンクローリー、ウェポンローダー、整備員が殺到した。空対空ミサイルが翼や胴体の下に取り付けられ、分厚いゴムホースでJET-A1が機体の燃料タンクへ送られていく。
補給を受けている間、佐藤はタワーと交戦中の戦闘機の交信に耳を傾けた。
『敵機撃墜!』
『"シタール2"!5時方向に敵機!援護する!』
『まだ来るぞ!南からミグが4機!』
『輸送機が着陸する!』
『輸送機はあと何機だ!?』
『こちら"ジャガー隊"、燃料が少ない。一度帰還する』
滑走路に目を向けると、An-124がのろのろとアプローチを始めたところだった。巨大なウクライナ製の輸送機は、ナメクジが這うようなスピードで滑走路に接近した後、轟音と共に着陸した。
『早く輸送機を滑走路からどかすんだ!戦闘機が離着陸できなくなる!』
『空中給油機は出せないのか!?』
『ネガティブ!空域の安全が確保できない!給油が必用な時は着陸してくれ!』
『クソ!』
「給油完了!ミサイルは!?」
「装填完了!行って来い!」
『ウォーバード1!タキシングを許可する!』
10月13日 1447時 アル・ダフラ基地
ミサイル、燃料、機関砲弾を満載した戦闘機がタキシングを開始した。F-15Cに続いて、ホーネット、フランカー、タイフーンなどが続く。
『アル・ダフラタワーより"ウォーバード1"へ。離陸を許可する。東南東から敵機が接近しているので注意せよ』
「了解。"ウォーバード1"離陸」
ウォーバーズの多彩な戦闘機が、滑走路のエンドに転がると、ホールドすることなく離陸していった。それと入れ替わる形で、UAE空軍のミラージュ2000が着陸する。
『タワーよりウォーバード各機へ。敵と思われる編隊が高度3500フィート、方位256からマッハ0.6で接近中。注意せよ』
「低いな・・・・・攻撃機か?」
佐藤はレーダーのモードを"ルック・ダウン/シュート・ダウン"に切り替えた。低空で移動する目標を探知・攻撃するモードだ。
『奴ら、輸送機を撃ち落とすだけじゃないで基地まで空爆する気か』
シュナイダーが吐き捨てるように言う。
『とは言え、奴らをやっつけないと、基地が吹っ飛ばされて、帰れなくなる』
カジンスキーは、少々食い気味に言った。
「マッハ0.6とは随分遅い・・・・・A-10かSu-25か?護衛機に注意しろ」
『IFF応答なし。最大交戦距離に入った。ウォーバードリーダー、交戦していいか?』
シュナイダーは既に敵機を捉え、ミサイルを撃つ用意をしていた。
「トランスポンダーの信号は・・・・・切られてる。民間機じゃないな。全機、やられる前にやるぞ」
『こんな時にボスたちがいてくれたら、苦労せずに済むのに』
ウェイン・ラッセルはデータリンクを確認した。AEWがいない今は、レーダーの探知距離がもっとも長いSu-27SMとユーロファイターからのデータリンクだけが頼りだ。
「待て・・・・何機かが進路を変えた。こっちに向かって来る・・・・・」
佐藤のF-15Cに搭載されたAN/APG-63(v)3も、敵を捉えたようだ。
『アル・ダフラタワーより上空の戦闘機部隊へ。敵攻撃機と思われる編隊を捉えた。コースから考えると、基地を攻撃するつもりだ。全機、何としても敵機を阻止せよ』
10月13日 1456時 UAE上空
「レーダーで捉えた。IFFを確認・・・・応答無し。民間機の信号でも無い」
コルチャックは再度、不明機をレーダーで捉えて確認した。サイズから考えると、戦闘機または攻撃機のようだ。
『低空で飛んでいる。さてはレーダーを避ける気だな』
シュナイダーの駆るユーロファイターに搭載されている"キャプターE"レーダーは、対巡航ミサイル捕捉能力が高いため、低空を飛行する目標を捉える機能に優れている。
「"ウォーバード4"よりウォーバード各機へ。こっちのレーダーで捉えた目標を転送する。データリンクを確認せよ」
『1了解』
『2了解』
『3』
『5』
『6了解。迎撃する』
傭兵部隊の戦闘機は、編隊を組んだまま、慎重に敵の新手へと向かっていった。




