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哨戒任務-4

 10月11日 1219時 UAE上空


「おい。そういや、これが終わったら何をするか、どこに行くか決めたか?」

 カジンスキーが、編隊の仲間に無線で訊いた。今は司令官の目が離れているため、敵機に警戒しつつも平気で無駄口を叩ける。

『こんな暑いところは、俺は嫌だね。任務が終わったらさっさと帰りたい。と、言っても、帰っても暑いことには変わらないが・・・・・、中東は好きじゃない』

 コルチャックが答える。

「そいつは勿体ない気もするが・・・・おい。1番機。お前はどうなんだ?」

『ここは乾燥し過ぎだ。目薬がないと目がやられる。こんな時にコンタクトレンズなんて、もっての外だ』

 佐藤も、中東は好きでは無いようだ。

「おい、ハンス。お前は?」

『ここじゃビールが飲めない。ドバイに行けば別なようだが・・・・』

「ちぇっ、みんなしてこれかよ」

 カジンスキーは悪態をついた。傭兵稼業をしていて一番楽しいところは、戦闘任務ではあるものの、世界中様々な場所を飛び回れることである。最後に観光ができたのは、ヨルダンでの任務だった。ディエゴガルシア島に落ち着くほぼ直前のことで、ペトラ遺跡などを見学することができた。


10月11日 1224時 オマーン国内


 Su-57が滑走路に着陸する。その後ろから、Yak-141、J-10B、JF-17などが続き、全部で30機ほどの戦闘機が降りてきた。ボグダン・マルコヴィッチは、戦闘機をエプロンまでタキシングさせ、エンジンを切った。

 "赤い鳶"は、金にものを言わせて人員、武器をかき集めていた。最近、アメリカ軍が無人機と空母打撃群をこの辺りに派遣している。直接攻撃してくることは無さそうだが、部下が攻撃してしまい、それが原因でUAE・傭兵連合部隊とアメリカ軍を相手にするという二正面作戦を行うという事態は、何としても避けなければならない。アメリカ軍の航空機や艦船に攻撃や接近をしないよう、部下には命令していた。

 整備員がタラップをSu-57の隣に持って行き、マルコヴィッチがベルトを外すのを手伝った。

「どうですか?ボス」

「機体の調子はいい。やっと使えそうだ」


「さて、次の作戦だが・・・・アメリカ軍がこっちにやって来てから、少々やりずらくなったとは言える。こっちから攻撃しないかぎりは向こうは攻撃してこないだろうが、よく注意しなければならない」

 マルコヴィッチはそこで、一息ついた。

「アメリカ軍に対する攻撃は、全面的に禁止する。一発でも、いや、一度でもロックオンでもした場合、全面攻撃の口実を与えることになる。奴らは今のところは監視や偵察だけをしているが、攻撃された場合は、その限りでは無い。だが、向こうから攻撃してくることは、まずは無いだろう。現状だが、UAEがアメリカとフランスから追加で買ったF-16とミラージュが届いたという情報が入った。ここ数日の戦闘で消耗した分の補充だろう。まあ、戦争が起これば武器屋は儲かるがな。だが、これ以上、敵が戦力を固めないよう、UAEやイラン、バーレーンへ向かう貨物船や航空機を攻撃する作戦を行う。奴らの補給路を断つ。いちいち識別している余裕は無い。よって、民間の船舶や航空機も攻撃対象にする。対艦攻撃ができそうな機体はどれだけ揃っているのか?」

 これには、チェ・ジャンギが答えた。

「Q-5やJH-7、トーネードIDS、アトランティック、Il-38がそろっています。エスコートには、MiG-23やJ-8Ⅱを使えます。パイロットは中国や北朝鮮、キューバ、セルビアなどから募集しました。ミサイルや魚雷は、中国、北朝鮮、イランから手に入れました。しかし・・・」

「しかし?」

「問題なのは、パイロットの練度です。新たに来たパイロットの軍歴を洗ってみましたが、特にキューバや北朝鮮のパイロットは年数十時間しか飛んでいないのです。まあ、北朝鮮の事情については、想定済みでしたが」

「数が揃えばいい。今回は数が必要な作戦だ」


 10月11日 1237時 UAE上空


『お疲れさん』

『後は我々が引き継ぐ。帰投してくれ』

 F-16Eの4機編隊が、佐藤たちの編隊の9時方向から接近してきた。交代要員として上がったらしい。翼には、予備燃料タンクとサイドワインダー、AMRAAM。空気取り入れ口の下にはECMポッドがぶら下がっている。いつの間にか、作戦終了予定時間になっていたらしい。余りにも何も起きなかったので、かなり長い時間、飛んでいるような気がした。定期哨戒は、1個編隊あたり、せいぜい1時間から1時間半程度に抑えている。こうすることで、急な作戦行動に振り分けられる航空機を増やすことができる。

「ん?もう交代か?」

  シュナイダーは残燃料を確認した。『ビンゴ』までは少し余裕がある状態だ。

「了解だ。"ウォーバーズ"帰投する」

 佐藤の一声で、異機種の編隊は、そのままアクロチームのような一糸乱れぬ旋回で空域から離脱し、アル・ダフラ基地へと帰還していった。

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