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哨戒任務-3

 10月11日 1123時 アル・ダフラ基地

 

 スペンサー・マグワイヤはE-737のレーダーや電子機器に異常が無いのを確認した。このレーダーを動かすソフトウェアのバグは、意外なほどあっさりと除去できた。そろそろ、このAEWのレーダーをアップデートするためのソフトもリリースされるという話もある。ついでにエンジンやアビオニクス、フラップ、ラダーなども点検したが、何も異常は無かった。あとはテストフライトをしなければならないが、それには護衛が必要だ。そこで、本来は待機状態にしておくはずだったF/A-18CとF-15Eに白羽の矢が立った。


 F-15EにAMRAAMとサイドワインダーがフル装備され、増槽が取り付けられる。特に、F-15Eは空対空戦闘のみで使うことは少ないため、すっきりとした外見となった。F/A-18Cも同様の装備だ。タンクローリーから繋がれた太いゴムホースからは、JET-A1が機体に送り込まれていき、すぐに満タンになった。作業員が両手で大きく『◯』印のサインを出した。パイロットはエンジンのスイッチを入れ、エプロンに大きなエンジン音が響き渡る。地上整備員が輪留めを外し、マーシャラーが誘導を始めると、2機の戦闘機は滑走路へとタキシングを開始した。


 ハッサン・ケマルとハリー・トムソンは、E-737のエンジンを始動させた。計器の状態を見る限り、異常は見当たらない。今回のところは、基地から数十km程度の半径のフライトをすることになる。勿論、戦闘機の護衛付きだ。先にアフターバーナーの轟音を響かせながら、F-15EとF/A-18Cが離陸していく。その後ろから、E-737が静かなエンジン音で飛んで行く。テストフライトの後、哨戒飛行中のシュナイダーとカジンスキーの編隊とも合流して、帰還する予定だ。


 10月11日 1154時 オマーン上空


 RQ-4がオマーンの領空に進入した。アメリカ空軍は、未だに介入するつもりはないが、この地域を注視しているようだ。グローバルホークはリアルタイムでカメラで撮影した画像を、アメリカ本土の基地へと送り始めた。この無人機は危険を避けるためか、19000mという、ほぼ実用最高高度で飛行しており、これを撃墜するには、S-300かS-400のような超高高度迎撃ミサイルが必要になってくる。しかし、無人機であれば、人的損失は無しになる。アメリカ空軍では、かつてA-10Cを装備していた飛行隊とF-16の飛行隊の一部が、リーパーとプレデターの混成部隊に更新され、U-2の飛行隊はグローバルホークの飛行隊になっている。パイロットの養成は、有人機であれば、適正検査、訓練で莫大なコストが必要になってくるが、無人機では、その6割程度で済む。そのため、各国の空軍は無人機の割合を増やしていた。


 10月11日 1207時 オマーン・UAE国境付近上空


 今日は珍しく他の機体を見ない。MiG-29Kとユーロファイターの編隊(エレメント)は、数キロの間隔をあけて飛行してた。データリンクにより、どちらか片方さえ国籍不明機(アンノウン)を補足できれば、もう片方の機体のMFDには表示されるため、敵を捉えるのは簡単だ。


 E-737はF-15EとF/A-18Cの護衛を受けながら飛行した。エンジンの状態は上々だ。だが、問題は中身の方だった。


「ふむ。問題無さそうだな。そっちはどうだ?」

 ゴードン・スタンリーは、自分のコンソールのレーダー画面を確認した。今のところ、飛行している飛行機を完全に捉えるている。

「問題無さそうです。これならば、作戦に復帰できそうです」

 リー・ミンは、コンソールのキーを叩き続け、レーダーのモードを数回、切り替えた。近距離、中距離、遠距離。全て問題なし。

「ふむ。コックピット、そっちはどうだ?」


「こっちも問題なし。エンジンも全て問題なしです」

 ハリー・トムソンは、計器盤を注意深く見た。システムオールグリーン。エンジン、ラダー、フラップ、スラット、全て問題なし。コックピットの窓からは、先導するF-15Eが見える。後ろの3人はレーダーで外の様子を確認するが、パイロットである自分たちの役割は、窓から直接、空の状況を目視で確認することだ。


「おっと。お客さんだ。やけにデカいな・・・・・それに、遅い」

 スタンリーは、レーダーに1つ『UNKOWN』というアイコンが表示されるのを見た。

「またリベットジョイントか・・・・高度がやけに高い。ははーぁ、ロボット野郎か」

「何ですか?そのロボット野郎って?」

 リー・ミンが、訳がわからないといった様子で司令官に訊ねる。

「グローバルホーク。無人機だよ。パイロットは地球の裏側の空軍基地で、のんびりピザでも食べながら操縦しているところだな」

「呑気なものですね。それで、何か自分たちの利益になりそうなのを探して、それがあれば空母と海兵隊を派遣ですか」

 原田が尖った口調で言う。

「アメリカの空母打撃群なら、既にペルシャ湾にいるはずだ。海兵隊の揚陸部隊は・・・・今のところはいないようだ」

 スタンリーは、タブレットで最新情報を確認した。それに表示されたニュースサイトのページには、『悪化する中東情勢。アメリカは空母と無人機を派遣も、本格介入せず』とあった。

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