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束の間の休息

 10月11日 0819時 アル・ダフラ基地


 F-16Eが2機、サイドワインダーとAMRAAM、そして増槽を翼に取り付けて離陸した。後ろからは、更に2機が続く。UAE空軍は現在、首都上空での空中哨戒(CAP)を続けており、更に、国際線の離発着便数を、エアライン、プライベート共に大きく制限している。が、現実には、この地域に対して多くの国が自国民に対して渡航しないよう呼びかけており、ドバイ、アル・マクトゥーム、アブダビ、アル・アインの各国際空港は、一部の貨物便を除いて、殆ど離発着が無いに等しい状態になっている。更に、ヨーロッパとアメリカの幾つかの保険会社やPMCなどが、UAE、オマーン、カタール、バーレーンを"戦争危険地域"とみなしたため、これらの国の債権や株価は暴落状態だった。


 S-3Bが定期パトロールのために、離陸していった。パイロンにはMk.50魚雷とAGM-84Dハープーン対艦ミサイルが搭載されている。更に、2機のAS-532SCも続いた。潜水艦による第二の攻撃はまだ無いが、これから先に起きないとも限らない。


 スタンリーは、UAE空軍から自分用のオフィスとしてあてがわれた小部屋でパソコンを起動させ、傭兵部隊専門のニュース・サイトにアクセスした。このようなサイトは、約180の言語に対応できるものが数百万と存在し、兵器の売買、傭兵のスカウト、紛争地域の状況の確認など様々な事ができる。先日、1機のSu-30SMに乗った傭兵コンビが、テロリストがハイジャックして自爆ミサイルにしようとしたB747をウィーン国際空港へ強制着陸させたようだ。10人のテロリストはステアーAUGとグロックで武装したオーストリア国家警察特殊任務部隊"コブラ"にあっという間に制圧され、逮捕されている。スタンリーは、先程、コールから聞いた、スウェーデン人パイロットにコンタクトが取れるかどうか調べてみた。すぐにヒットした。氏名、連絡先、経歴を確認する。なんと、その傭兵は、自前の機体も持っているらしい。ロシア人の方は、ヒットしなかった。スタンリーは『Rebecca-Cronnheim.hotmail』というアドレスにアクセスし、本文にディエゴガルシア島の位置と自分の氏名、連絡用のメールアドレスを載せて送信した。


 10月11日 0827時 オマーン 元マスカット国際空港


 Su-57が滑走路に着陸した。今度は調子は良さそうだ。先日、離陸しようとしたところ、突然、エンジンが火を噴いたため、代替機で出撃せざるを得なかった。それにしても、ロシア空軍の最新鋭機の部品を調達するのには骨が折れた。第4世代機までの戦闘機や、第3世代までの戦車、一線配備ではない駆逐艦や巡洋艦、潜水艦そのものと部品は簡単に手に入るが、それより新しいものになると、かなり難しくなる。この飛行場は、完全に放棄され、しかも、事実上、オマーン政府自体が機能不全になっているため、隠れ家にはもってこいだった。エプロンには、J-10Bの他、JF-17、J-8Ⅱ、テジャス、クフィルなどが並んでいる。ボグダン・マルコヴィッチはSu-57をそのままエプロンに駐機させると、歩いてターミナルへと向かった。


 この空港は、かつては国際空港として賑わい、多くの国際便が飛来していた。しかし、2年前の内戦以降、無政府状態となってしまい、空港としての機能は完全に停止していた。が、ここに"赤い鳶"というテロリストが侵入した後、急速に軍用飛行場として復活していった。オマーンの他、このような状況になった国は、モルドバ、キルギス、トルクメニスタン、スーダン、チャド、ニジェールなど多数あり、どれも傭兵部隊やテロリストの格好の隠れ家となっていた。


 ボグダン・マルコヴィッチは、エプロンを歩いて部隊の状況を確認した。UAE空軍とそれに味方する傭兵との交戦で消耗はしたものの、まだ世界中から募集をかけているため、欠員補充には事欠かなかった。

「戦力はどれだけ用意できる?」

 マルコヴィッチは、整備員が機体の整備をしている様子を見ているチェ・ジャンギに訊いた。

「戦闘機が70機程度。機体はまだ手に入ります。それから、我々の部下と傭兵などをあわせてかなりの人数が集まりました。この国の人間は、我々を見ても見てみぬ振りです。まさに、無政府状態ですよ。今度はどうするんです?」

「周辺国の状況は?」

「先日の潜水艦からのミサイル攻撃で、特にカタールやバーレーンは壊滅状態です。次はUAE、イエメン、サウジですね。この辺りを掌握すれば、世界の石油市場の8割が手に入ります」

「石油?まあ、資金稼ぎには使えるな。最大の目的は、我々の拠点を作ることだ。そうしてしまえば、今日日は、どんな国も、国際機関も、国連すら手を出せない」

「確かに、そうですね。しかし、ここを放棄せざるをえなくなった場合は・・・・・」

「一度、パキスタンに行く。そして、中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンにある拠点に分散する。つまりは一箇所に固まらず"細胞"として散らばる。その方が、攻撃を受けた場合に、全滅を避けられる」

「なるほど。次はどうする?」

「まずは、物資が届いてからだ」

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