表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/71

届け物

 10月11日 0601時 アル・ダフラ基地


 もう少しゆっくり寝ているつもりだったのに、目が覚めてしまった。佐藤勇はベッドから起き上がって、テーブルの上に置いた耐衝撃ケースからメガネを取り出してかけると、大きく伸びをし、ストレッチを始めた。昨夜はあれだけ激しい空戦をしていたのにも関わらず、睡眠時間は2時間程度だった。機体もパイロットもかなり消耗しており、"ウォーバーズ"のメンバーは、午前中は全員休みとなったのだ。個室のテレビのスイッチを入れると、アルジャジーラが放送されており、デジタル画像でUAEの地図が映っている。アラビア語はサッパリわからないが、大方、このテロリストの航空攻撃に関するニュースだろう。画面が切り替わり、UAE陸軍の兵士が飛行機の残骸―――見たところ、MiG-19か21のようだ―――を調べている様子が映った。部屋にあるものは最小限で、スーツケースと資料、そして護身用の9mm口径のヘッケラー&コッホUSPがホルスターに入った状態で、ベッドの左側に掛けてある。窓から見えるエプロンの様子はまだ薄暗く、警備の兵士が数名、歩いている程度だ。


 早朝にも関わらず、トーマス・ボーン、バック・コーエン、ジャック・ロス、デヴィッド・バーク、ロン・クラークは基地の射撃場に並び、HK-416Dカービンに5.56mmソフトポイント弾が装填された弾倉を取り付けた。やがて、銃声が響き始め、270m先の人間を型どったボール紙の標的に穴が空いた。正確に頭、心臓、そして鳩尾のあたりに弾丸が飛んで行く。標的がボロボロになると、手元にあるスイッチを押して手元に引き寄せ、新しいものに取り替える。パイロットとは違い、自分たちは銃を使って戦うのだ。だから、射撃訓練は真剣に行っていた。


 10月11日 0603時 UAE上空


「アル・ダフラタワー、こちらガルシア・エクスプレス。着陸許可を請う」

『こちらアル・ダフラタワー了解。着陸を許可する。ランウェイ31Rを使用せよ。風は北北西から4メートル。西から若干の横風があるから注意せよ』

「了解」

 ハワード・コーベンは着陸のための最終チェックを始めた。エンジンパワー、気速、ギアダウン完了。異常なし。戦闘機部隊は、かなり激しい戦闘を繰り広げているらしく、兵装を届ける必要があった。しかも、サウジアラビアの兵器市場で買ったものを直接届ける羽目になった。


 クリス・ミッチェルは荷物を固定しているネットを確認した。パレットに載せられているのは、AMRAAM、サイドワインダー、Mk80系統の爆弾とJDAMキット、R-77、R-27、IRIS-T、機関砲弾などと多岐に渡る。今回の兵器市場は、凄まじい数と種類が出品されており、無いものはNBC兵器くらいのものだった。今回、驚いたのはタウラスやJASSM、JSOWといったスタンドオフ兵器が大量に出回っていたことだ。こういった兵器は、メーカーがPMC向けに生産しているものもあれば、軍の内部から横流しされたものもある。

「固定具、問題なし。そっちはどう?」

「こっちもOKだ」


 C-17Aは滑走路にタッチダウンすると、一度も停止すること無く、誘導路に入って、エプロンの指定された区画に駐機した。


カーゴランプが開くと、UAE空軍のクルーたちが武器を下ろすのを手伝った。全ての兵装が、"ウォーバーズ"のために用意された武器庫へと運ばれていく。C-17Aのすぐ近くにはタンクローリーが並び、燃料の給油を始める。

「やあ、スティーブ。それで全部か?」

 いつの間にかスタンリーがエプロンに出ていた。どうやら、彼らを出迎えに来たようだ。

「今のところはそうですね。また足りなくなったら持ってきますよ。そっちの状況はどうです?」

「奴ら、民間機を無差別に攻撃しやがった。そのせいで、この一部の空域を、UAEとカタールが民間機飛行禁止区域に設定した」

「なるほど。そういや、最近、オマーンに武装集団が集まってきているらしいですね」

「何だって?」

「いや、ただの噂ですよ。この稼業だと、同業者の動きはすぐに耳に入りやすいものでして。どうやら、旧ユーゴ、中国、北朝鮮あたりの連中が集まってきているみたいですね。あまり、と言うよりはかなり好ましからざる連中ばかりですよ」

「ふむ。間違いなく、UAEやカタールを攻撃しているのは、その連中だな。他に情報は?」

「元スウェーデン空軍のパイロットが1人、グリペン1機と一緒に路頭に迷っているらしいですよ。それから、これは噂なんですが、元ロシア空軍のパイロットとWSOという傭兵コンビがいるんですが、たった1機のSu-30で世界中を飛び回って戦っているようです」

「ふむ。その連中と連絡を取れそうか?」

「スウェーデン人の方は、いつでも取れそうです。しかし、ロシア人のほうは厳しそうですね。何しろ、幾つかのPMCや傭兵組織がそのロシア人を探しているようなのですが、尻尾すら掴めない幽霊みたいな奴らでしてね。今では、"ゴースト"というアダ名が付いているとか」

「ここに現れる・・・・・ことは無さそうか」

「どうも、極力、危険を避けているらしくて・・・・また何かわかったら連絡します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ