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全滅-1

 オマーン湾海面近く 10月11日 0213時


 UAE空軍と"ウォーバーズ"は、テロリストの注意を民間機から逸らすことには成功した。事実、国籍不明機の数が減り、残りは軍用機の方に注意が向いているようだった。海上近くでは、UAE空軍のUH-60Mと"ウォーバーズ"のAH-64D、CV-22B、CH-53Eが捜索救難を行っていた。


 ヘリは暗い海面を低空で飛行しながら、生存者を探していた。しかし、人はおろか、撃墜された飛行機の破片すら、なかなか見つからない。

「クソッ、最悪だ。何も見つかりゃしない」

 トーマス・ボーンが、シースタリオンの後部ランプから、モンキー・ハーネスで体を支えつつ暗視ゴーグル越しに海面を見ながら言う。オマーン湾の海面は、数百人が乗った飛行機が撃墜されたことなど、全く気にしていないかのように平穏そのものだった。できればサーチライトを使いたいが、交戦中なので、敵に見つかるようなリスクは冒せない。勿論、個人携行のフラッシュ・ライトも使えない。


ツァハレムとエングリオンが乗るAH-64Dは、TADSSの赤外線モードで海面を捜索した。アパッチ・ロングボウの赤外線カメラは、中型の犬くらいの目標でも、人間の体温くらいの熱を発していれば簡単に識別できる。しかし、熱を発しているものはどこにもいない。オスプレイにはFLIRがあるため、アパッチ程でなないものの、それなりの捜索救難は可能だ。


 オマーン湾上空 10月11日 0220時


 攻勢をかけていたテロリストの飛行機が数機、突然、Uターンを始め、北の方へ飛んでいった。どうやら"ビンゴ"になった機が出始めたらしい。空中給油機を2機、待機させているとはいえ、こちらとしても限界はある。やがて、東の方から味方の機体がやってきた。


 ミラージュ2000Cの飛行隊がF-16Eの飛行隊とバトンタッチをした。兵装と燃料の消耗が激しく、"ウォーバーズ"の機体も基地へ帰還させざるを得ない状況になった。

 

 佐藤は計器パネルの状況をチェックした。兵装は残り少ない、システムやエンジンなどは異常無し。だが、燃料計の針が段々、"ビンゴ"に近づいていた。この後、戦闘機動をするのは難しそうだ。

「こちら"ウォーバード1"、燃料がビンゴに近い。兵装も残り少ない」

『了解だ。一旦基地に帰還しろ。兵装と燃料を補給しろ。それと・・・・敵は引き返し始めた。奴らも燃料切れし始めたか』


 アル・ダフラ基地 10月11日 0241時


 "ウォーバーズ"の多彩な戦闘機とアブダビ空軍のF-16、KC-135などがアル・ダフラ基地に着陸した。エプロンでは整備兵たちやタンクローリー、ミサイルや爆弾などが乗ったウェポンローダーが待っている。戦闘機がエプロンに並ぶと、すぐに機体のチェックと燃料の補給が行われ、兵装の搭載が始まったものの、パイロットたちは機体から降りて、待機するためにあてがわれた部屋へと向かっていった。しかし、同時に離陸した2つの編隊がまだ帰還していないことを彼らが知ったのは、デブリーフィングが始まってからだった。


 オマーン湾上空 10月11日 0246時


 ボグダン・マルコヴィッチはJ-10Bに乗って、敵機を探していた。この中国製戦闘機は、なかなかの性能で、西側で言えば、F-16の最新型に匹敵するくらいだ。Su-57の方はというと、離陸前にエンジンの不具合があったため、急遽、この戦闘機に乗り換えたのだ。慣れない戦闘機ではあるが、問題はない。やがて、敵の戦闘機を見つけた。恐らく、向こうもこっちを見つけているに違いない。Su-57であれば、殆ど見つからずに接近できたのだが、そうはいかなかった。


「彼我不明機発見。1時方向。IFFに反応無し。民間機の発信コード無し。」

 それぞれ4機のミラージュ2000Cからなるアブダビ空軍の編隊は、不明機を見つけた。戦闘空域であるにもかかわらず、ポツンと1つ、レーダーに映る影がある。パイロットはマスターアーム・スイッチをオンにしてから、そして、件の飛行機を確認しようとした。


「ふん。セオリー通りのやり方だな」

 マルコヴィッチは、敵のやり方に不満さえ漏らした。余りにも初歩的なやり方で、まるで戦闘機に初めて乗る訓練生のようだ。

『ボグダン、こいつらをやるか?』

 無線で蒋玲蜂が話しかけてくる。

「ああ。撃墜しろ」


 ミラージュの編隊長はレーダースコープを見た。不明機は、大きさから考えると、中型から小型のビジネスジェット機のようだ。しかし、それならば民間機の発信コードを確認できるはずだ。しかも、テロリストが民間機を撃墜し始めた時に、既にアル・ダフラ基地やドバイ国際空港、アブダビ国際空港のタワーが、民間機を空域から遠ざけたはずだ。不審に感じた編隊長は、この不明機の様子を確認するため、国際緊急周波数(GUARD)で呼びかけ、更に、機体を確認すべく、接近していった。

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