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民間人殺傷-2

 オマーン湾上空 10月11日 0145時


 "ウォーバーズ"の各戦闘機は長い任務の間に燃料をかなり消費したため、KC-10AとKC-135Rから給油を受けていた。しかし、その間にまた状況が変わったことを知らされた。ペルシャ湾周辺を飛行中の民間航空機が、突然、撃墜され始めたとの知らせが入ったのだ。

「ウォーバード・リーダーより各機へ。空対空兵装の状況知らせ。こちらはAAM-4が2発、AAM-5が2発」

 佐藤はミサイルが全て搭載され、システムも問題が無いことを確認した。

『ウォーバード2、AMRAAMとサイドワインダーがそれぞれ2発。機関砲は全弾残っている』

『ウォーバード3、AMRAAM2発、サイドワインダー2発。機関砲フル装填』

 全ての機体の兵装のチェックを完了した。兵装も燃料もまだ余裕がある。

『まずは手近な敵機を攻撃する。ミサイルは少ないから、"ウィンチェスター"になる前に撤退しろ。問題は、敵の数が多いことだ』


 ムスタファ・アル=カディーリの率いるアブダビ空軍のミラージュ2000の編隊とF-16の編隊が交戦を開始した。

「レーダーロック・・・・フォックス1!」

 サイドワインダーやマジックが飛び交い、戦闘機が爆発する。MiG-23が炎を上げて落ちていき、パイロットを吊り下げたパラシュートが開く。

「まだいるぞ。"ゴッドアイ"、そっちはどうだ?」


「こっちはだいぶまずいぞ。それから・・・・」スタンリーが唸るように言った。

 また"モードC"や"モード3/A"のIFF信号を出していた飛行機の機影がレーダー・スコープから消えた。

「民間機が撃墜されています!これは・・・・また!」リー・ミンが悲鳴に近い叫びを上げる。

 "UNKOWN"と表示された輝点が"UA76"の輝点に後ろから接近すると、"UA76"の輝点が消えた。

「ユナイテッド76便が消えた!後ろにはアンノウン!」原田も驚きの声を上げた。

「"ウォーバード"及びアブダビ空軍各機へ、敵が民間人を攻撃している!」


 オマーン湾上空 10月11日 0156時


 Su-24が機関砲弾をB737のエンジンに撃ち込んだ。旅客機のパイロットはすぐに緊急事態を宣言し、代替の飛行場を探そうとした。

『・・・・テッド567び・・・・ますか。こ・・・・・ア。こ・・・・が旅客・・・・・す。ユナイ・・・』

 パイロットは国際緊急周波数から聞こえる声に答えようとした。が、エンジンの火が主翼内燃料タンクに燃え移ってしまい、大爆発してしまった。


「くそっ!まただ!民間機がやられた!」

 スタンリーは、再び"モードC"を発信していた機体がレーダー画面から消えるのを見た。近くには複数の"UNKNOWN"の表示の輝点がある。その近くで、リー・ミンは味方の残弾状況や燃料の残りを入力していった。

「燃料は十分あります。ただ兵装が半分に減っているのが、少し心配ですが・・・・」

「だが、時間は無い。UAE空軍の方は?」

「F-16とミラージュの編隊が、あと数分で件の敵機と接触します」


 オマーン湾上空 10月11日 0204時


「敵編隊、確認!」

 アブダビ空軍のミラージュ2000編隊の飛行隊長がレーダーで更なる敵を捕捉した。IFFに反応は無く、民間機の識別信号も発信していない。

「安全装置解除。各機、敵が射程内に入り次第、交戦せよ」

 ミラージュ2000が装備しているMICA-EMとMICA-IRは、同じ弾道とロケットモーターを利用し、アクティブレーダー・シーカーとパッシブ赤外線・シーカーの2種類を付け替えられる。1種類のミサイルで2種類の誘導方式を利用できるのは、一見、効率のよいようには見えるが、実は、赤外線誘導の短射程ミサイルとしては大きく、中射程のアクティブ・レーダー誘導式のミサイルとしては小さく、AMRAAMやR-77に比べて、やや射程が短くなるという欠点がある。

「Fox1!」

 ミラージュ2000からMICA-EMが発射された。しかし、その少し前にJ-10とJ-11BなどからPL-12が発射されていた。AMRAAMやR-77に匹敵する性能を持つとされている中国製ミサイルで、闇市場も含めて、多くが出回っている。


 アブダビ空軍機とテロリスト機は、ミサイルを発射した後、ジャマーを作動させながら、それぞれ回避行動をとった。空中戦においては、通常のセオリーだ。


「撃墜!撃墜!」

 真っ暗な空に、赤い光が一瞬、見えたかと思うと、地面に向かって火の玉が落ちていくのを、アル=カディーリは見た。だが、こちらの残燃料も残弾数も心もとなくなってきた。

「バックアプ機は?」

 アル=カディーリが訊いた。

『離陸した味方飛行隊が、あと7分のところにいます。ここを乗り切ったら、交代です』

「了解だ。それまで、こっちでなんとか押しとどめよう」

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