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民間人殺傷-1

 オマーン湾 10月11日 0133時


 Su-57は主翼にぶら下げた兵器を発射し、パイロンを投棄したため、ステルス製を取り戻していた。後ろからはJ-10Bが3機、約8900メートルというかなり広いを開けて飛んでいる。他のテロリストの幹部である中国人や北朝鮮人には、このセルビア人パイロットの考えていることが正直、読めていないところがあった。自分たちのボスは、1999年のコソヴォ内戦において、セルビア空軍の作戦で民間人の居住区画を空爆し、約700人を死傷させたことに関わったとして国連の法廷において、B・C級戦犯として訴追されているが、姿をくらますことで、それを逃れている。おまけに、半年前は、自分たちの本拠地をフランス空軍とスペイン空軍の部隊が急襲した際に、返り討ちにして、戦闘で死ななかった兵士を捕らえた後、拷問して死亡させて、その様子を収めたビデオを両軍の最高司令部に送りつけた上に、動画投稿サイトに公開することまでした。そして、今は無政府状態になった国を転々として、その周辺の国を襲撃している。更に、それによって利益を得る金持ち連中から活動資金を得ている。今回もそうだが、観光地を攻撃されて儲かるという変わり者もいるらしい。


『次の目標に移るぞ。各自、作戦要項を確認しろ』

 マルコヴィッチは戦術データリンクを使い、J-10Bに予め決めていたターゲットのデータを送った。今度の標的は、石油産業の重役やオーナーの乗ったプライベートジェットだ。この会社は、世界のエネルギー産業の約3割を握っており、これを撃滅できれば、更に世界経済は混乱するはずだ。特に、最大の取引相手である、湾岸中東諸国には大打撃になるだろう。


 オマーン湾上空 10月11日 0134時


 ロシアの"石油王"、と呼ばれているセルゲイ・ネフスキーは後ろをチラリと振り返り、それからウォッカを啜った。今回の商談は重要だった。なにせ、8900億ドルの金と莫大な埋蔵量のある油田が動くのだ。カスピ海の情勢は、傭兵部隊の活躍により、安定した。アルメニアとアゼルバイジャン、イランは天然ガスや石油のパイプラインを再建させ、ロシアやヨーロッパへと送っている。だが、今度は中東湾岸諸国が不安定になり、観光産業にも打撃が出てきている。UAEとオマーンは戦争状態になっているらしいが、自分が行くのはイランのため、そこまで心配はしていなかった。が、それは間違っていた。


「ボグダン、どうしてこれがターゲットだとわかるんだ?」

 チェは送られてきた戦術データを見て言った。これらは全て民間機で、どれも軍用機ではない。

『この飛行機の所有者は、全員、世界最大級の石油関連会社のオーナーだ。そして、明日、イランで石油会社向けの油田開発に関するレセプションがある。これを撃ち落とせば、石油産業はどうなる・・・・?』

「そういうことか。そんな情報をどこから見つけている?」

『それは言えんなやるぞ?』


 Su-57はあまりエンジン出力を上げず、ターゲットの後方からゆっくりと接近するコースを取った。スクランブル発進した空軍の戦闘機のように、相手から目立つような真似は絶対にしない。レーダーは必要ない。IRSTだけで充分だった。MFDに映されたモノクロ映像には、飛行機のエンジン排気が黒く可視化される。Su-40のエンジンの間にあるウェポンベイが開き、R-27T1がボーイング737-800のエンジン排気熱を捉える。

「まるで新米向けの標的射撃だ」


 ミサイルは標的の右エンジンの方向へ飛んでいった。右主翼がもぎ取られ、炎を上げながら尾翼の方から落下していく。


 UAE・オマーン国境上空 10月11日 0136時


 レーダー画面を覆っていたノイズが多少、消えた。

「レーダーが少しクリアになったぞ!」

 佐藤が叫んだ。先程までレーダー画面を覆っていた一部のノイズが無くなり、少しだけだが、ターゲットを示す輝点が映るようになった。

『全機、全てのシステムをチェックせよ。それから、どの方角からのノイズが酷いかを調べろ』

 AEWのレーダーを見ながら、スタンリーが指示を出す。

「データリンク確認・・・・・敵と味方の位置に注意しろ」


 その380km東の空域で、マルコヴィッチはA319がミサイル攻撃を受けて墜落していくのを。これで明日の石油市場は大混乱するはずだ。しかし、レーダーのモードを切り替えてみると、ジャミングがかかっているはずの周波数がクリアになっている。

「こちらマルコヴィッチ。ジャミングが一部クリアになっている。多分、敵にSu-24を撃ち落とされたはずだ。敵戦闘機を探せ」


 空中管制機"ゴッド・アイ" 10月11日 0138時


「こいつは一体・・・・・?」

 スタンリーは驚きの声を上げた。レーダー画面に映っていたはずの、"VP-CTY"というトランスポンダー・ナンバーを表示していた飛行機が、突然、消えたのだ。

「VP-CTY、聞こえますか?こちらゴッドアイ、聞こえますか?」

 原田が国際緊急周波数で呼びかけているが、全く反応がない。続いて、"N543AC"というアメリカ国籍のナンバーの飛行機の反応も消えた。

「クソッ、奴ら、民間機を攻撃している」

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