表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/71

ブラックアウト-2

 オマーン国内 10月11日 0032時


 国籍マークの無いSu-24MPとJ-11Bが編隊を組んで飛行している。アブダビ空軍と"ウォーバーズ"にジャミングを仕掛けているのは、このテロリストの飛行隊だった。Su-24MPは世界でも数少ない電子攻撃機で、多くが謎に包まれている存在であった。もともとは、ソ連製のSu-24攻撃機であるが、この機体は電子攻撃機として改造されていた。そして、この機体には奇妙な点が一つだけあった。旧ソ連製のSP5-5ソファルジャミングポッドが中国製の新型ポッドに換装されていた。実は、このポッドは、まだ開発中のものであったが、中国政府が実戦テストのために、密かにテロリストグループの手に渡していた。


「まだ真っ白だ。しかし、このタイプのジャミングは初めて見た。レーダーを見てみろ」

 "ウォーバーズ"のF-15Eの前席に乗ったウェイン・ラッセルが後席の相棒に話しかけた。

「一体、どういう意味だ?」

「ありとあらゆる周波数に同時に仕掛けているが、安定していない。断続的に画面がハッキリ映る時がある。もしこれが、AN/ALQ-99DとEA-6BかEA-18Gの組み合わせだったら、こんな不安定なジャミングにはならない。どうやっても真っ白けで何も映らなくなる。そして・・・・」

 ラッセルはECCMのモードを切り替えた。まだ砂嵐は残っているものの、かなりマシな状態になった。

「ほら。たったこれだけのモード切り替えで簡単に打ち消せる。と、いうことは、だ。このECMは効果はあるけど、かなり原始的だ。問題は、発信源を特定できるかどうかだが・・・・・専用の電子攻撃機さえあればなぁ」


 オマーン湾 10月11日 0042時


 このジャミングの影響を受けていたのは、傭兵部隊とアブダビ空軍だけでは無かった。イラン海軍の情報収集艦"シャー・ザハーン"もレーダーやセンサーなど、あらゆるものが使えなくなっていた。イランは、UAEがNATOやイスラエルなど西側と協力している傭兵部隊とアブダビ空軍が演習を開始した直後から、公然とELINT/SIGINTによる情報収集をしてきた。しかし、最近の関心は、傭兵部隊とアブダビ空軍を攻撃している、第三の勢力へと移っていた。最新鋭の装備を揃え、突如としてドバイやシャルージャを攻撃しているのは、一体、どんな勢力なのか。装備から考えると、西側では無いことは確かだ。寧ろ、UAEは西側に付いているのだから。ところが、ほんの数分前に、 電波情報を収集するセンサーがジャミングによって使い物にならなくなり、更に、無線機やレーダーまでも妨害され始めた。

「一体、どこのどいつだ。こんなふざけた真似を始めたのは?」

 パッシブセンサー操作員は、しきりに計測する電波の周波数を切り替えた。

「おっと。これでクリアになった。さてさて、発信源は・・・・・うーむ。わかるのは、オマーンの国内ってことだけか・・・・」


 UAE国内 10月11日 0054時


 Ka-52やWZ-19が越境を開始した。レーダーにジャミングを仕掛けているため、殆ど"見られる"事無く侵入することができた。このヘリ部隊の任務はUAE国内の機甲部隊を叩くことだ。

「アクーラ11からアクーラ16へ。標的確認」

『アクーラ16、了解』

『シャオロン51、攻撃準備完了』

「全機、攻撃せよ」


 ヴィーフリ対戦車ミサイルやHJ-10が国境警備隊の基地へ攻撃を開始した。攻撃ヘリは起伏のある山岳地帯を匍匐飛行していたため、国境警備隊員は敵の発見が遅れてしまった。ジープや装甲車が破壊され、トーチカや櫓が炎上する。国境警備隊員はM-4カービンをヘリ目がけて撃ったが、当然の如く効果が無く、機関砲でミンチにされてしまった。


 オマーン湾 10月11日 0104時


 "シャー・ザハーン"は艦隊司令部に奇妙なジャミングについて報告した。これが長引くようであれば、今後のオマーンにいる武装勢力とUAEの紛争の監視・情報収集が難しくなる。この情報収集艦には、ロシア製と中国製のセンサーが搭載されているが、勿論、最新鋭のものとは言いがたい。ELINT/SIGINTに利用する機材は、軍事機密の塊のようなもので、最新鋭のものが、たとえ同盟国であっても、他国にリリースされることはがなかなか無い。よって、独自開発ができない国は、旧世代のものを売ってもらうか、どこにでも製品を売る、ある意味で『無法な』兵器メーカーから買うしか無かった。"シャー・ザハーン"には武装らしい武装は無く、フォース・プロテクション用に搭載された50口径のブローニング重機関銃―――これは、パフレヴィー王朝時代にアメリカから買ったものである。と、カシュタン対空防衛火器―――短距離対空ミサイルと機関砲を組み合わせた、ロシア製の近接防御火器システム"コールチク"の輸出モデル―――だけだ。そして、この無防備同然な艦を狙っている者がいた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ