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天を刺す矢-2

 アブダビ上空 10月10日 2118時


「もうちょっと前だ。速度上げろ・・・・よし、そこでそのまま飛び続けろ」

 ベン・ハミルトンがKC-10の翼下のポッドから伸びたドローグを映し出すカメラを見て、ユーロファイターのプローブに接続さそるよう、誘導した。

「接続完了。給油開始」

 KC-10からは毎秒数百リットルの航空燃料が注ぎ込まれ、あっという間に戦闘機の燃料タンクを満タンにした。まずは、機体が小さく、燃料を多く積めないF-16やMiG-29から給油を始め、行動半径の広いF-15やSu-27は後回しにされた。KC-135は更に後方でKC-10Aがトラブった時の予備として待機をしている。タンカーは前線まで出て行くことができないため、戦闘機のパイロットには後方まで下がって給油するまでに必要な燃料を計算することも求められる。

『"ウォーバード1"、給油完了。ウォーバード4、位置につけ』

 コルチャックのSu-27SKMがKC-10Aの左側に並び、給油ドローグへと近づいていった。が、ドローグが突風に煽られ、コックピットの左後ろの辺りに叩きつけられた。

『"ウォーバード4"、機体損傷!』

 フランカーは一度、推力を絞って、タンカーのやや左下へと移動した。

『ニコライ、状態は?』

 コガワが無線で訊く。

『機体左側に当たった。警告は出ていない。作戦には支障は無さそうだが・・・・・』


「駄目だ。ニコライを帰還させろ。ユウを護衛に付けろ。残りの5機で作戦を続ける」

 無線を聞いていたスタンリーはそう判断した。作戦が続けば、兵器の多少の損傷が戦況を大きく悪化させることがある。 

「了解。ウォーバード4、聞こえますか?基地に帰還して下さい。ウォーバード

1はウォーバード4の護衛を、残りは給油の後、作戦を続行して下さい」


「"ゴッドアイ"こちらウォーバード4、了解。1、護衛を頼む」

 F-15Cと損傷したSu-27SKMが戦線から離脱していった。護衛機が減ったのはかなりの痛手で、攻撃機をあまり前線へと送り込む余裕が無くなった。


 オマーン国内 10月10日 2134時


 ヘルファイアミサイルがSA-11のランチャーを破壊し、更に、追い打ちをかけるようにレーダーやFCSに2.75インチロケットや30mm劣化ウラン弾が浴びせられる。ミサイルサイトにいた傭兵部隊は、AK-74やFN-FALをあらぬ方向へ撃っただけで、すぐに挽肉と化した。

「こちら"アナコンダ"、掃除完了。武器と燃料の補給に一旦帰投する」

『"ゴッドアイ"より"アナコンダ"へ。了解』

 アパッチの編隊が飛び去った後には、燃える地対空ミサイルや装甲車の残骸、黒焦げになった死体が残されていた。

 

 Z-9とWZ-10の編隊が低空飛行して、アブダビを目指していた。敵に見つからぬよう、匍匐飛行で目標を目指している。この中国製の攻撃ヘリは、高価で手が届かなかったり、政治的な理由で西側の攻撃ヘリを導入できない国やPMCに人気がある。性能面ではAH-64Eアパッチ・ガーディアンやEC-665タイガーには及ばないものの、この手の兵器にしては安価なので売れ行きは好調だ。しかし、過激な武装組織に簡単に渡っていることを西欧諸国やアメリカ、日本などは問題視していたが、中共はそんな批判などどこ吹く風で、手当たり次第に自国製の兵器を高価な価格で入札してきた者には、それがどんな相手なのかはろくに背後を調べずに売りつけていた。


『"クロウ11"より"クロウ・ネスト"目標まで80マイル。"メクラウナギ"実行まであとタンゴマイナス40分』

「こちら"クロウ・ネスト"了解。予定通り実行せよ」


 アル・ダフラ空軍基地 10月10日 2159時


 カナードを損傷したSu-27SKMが無事、滑走路に着陸した。F-15Cは途中まで並んで低空飛行して、ゴーアラウンドする。フランカーはそのまま"ウォーバーズ"にあてがわれたエプロン地区へと自走していった。

『こちら"ウォーバード1"、"ウォーバード4"の着陸を確認。任務に戻る』

 

 オマーン・アブダビ国境上空 レーダーサイト 10月10日 2207時


 WZ-10から発射されたHJ-10がアブダビのレーダーサイト目指して飛んでいった。レーダーアンテナが爆発し、爆風とミサイルや建物の破片が人員を殺傷する。しかし、アブダビ空軍も手をこまねいていた訳では無かった。ホークミサイルやパトリオットが発射され、J-10やJF-17を撃墜する。しかし、このワイルド・ウィーゼルによって防空網に穴が開いてしまい、空から侵攻してくる敵を捉えるのが難しくなってしまった。


 オマーン国内 10月10日 2214時


 AH-64Dの編隊が、地を這う蛇のように低空飛行しつつ、次なるターゲットを目指している。その後ろからは、地上部隊を載せたUH-60LやCV-22B、CH-53Eがピッタリと付いてきている。ベングリオンは高度を確認した。これくらいならば、高高度を射程に入れているS-400やSA-11などからは標的にされることはないが、歩兵が携帯するスティンガーなどの短射程ミサイルからは良い標的になってしまう。そのため、アパッチのパイロットたちは、油断なくIHADSSで周囲を見回しながら索敵する。塹壕や蛸壺に隠れた敵兵を見つけるのは難しいが、暗視/赤外線カメラの助けを借りることはできる。おまけに、ロングボウ・レーダーで更に遠くの敵も捉えられるため、それについては、殆ど問題はなかった。

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