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天を刺す矢-1

 オマーン国内 10月10日 2101時


「補給完了、行って来い!」

 アブダビ空軍が設置した補給地点からヘリが一斉に飛び立った。アパッチやスーパースタリオン、ブラックホークが編隊を組み、対空砲火を避けるため、ほぼ地表スレスレを飛行し始めた。オスプレイは飛行機モードではヘリを護衛の攻撃ヘリを追い越してしまうため、転換モードで飛行せざるを得ない状態だ。その間、ジェームズ・ルークはRWSのカメラを覗き込み、絶えず銃口を左右に動かし、携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を持った敵を警戒する。S-400は高空を飛ぶ飛行機を射撃するので、低空を飛ぶヘリを狙うことは考えにくいが、上空は抑えられている事には代わりはない。

「優先目標はS-400だ。アレは自走式で、簡単に移動できるから、注意して探せ。そうしないと、上空をおさえられてしまう。まあ、こっちからしたら、問題になるのはSA-11やSA-7だがな」

 ロバート・ブリッグズはそう言って、慎重に地表を眺めた。かなりの低空を飛んでいるため、地上の様子が良く見える。しかし、人っ子一人、ラクダやロバすら見えない。ブリッグズは赤外線ゴーグルを使ってみた。地表が白黒テレビのような映像で見える。この最新鋭の装備を使えば、動く車両の熱はおろか、小動物の体温すら拾って捉えることができる。


 アパッチは、TADSSを左右に動かして地上を舐めるように低空飛行する。その動きにあわせて、30mm機関砲がぐるぐると動いた。TADSSは光学/赤外線/暗視を自在に切り替えることができるため、どんな天候でも、敵を見つけ、仕留めることができる。ベングリオンとツァハレムは片目でIHADSSの白黒の赤外線画像を見て、敵のSAMを探した。低い高度からでは目視できる範囲が狭まるが、狙い撃ちされる危険性が減るため、匍匐飛行をすることが選ばれた。ベングリオンはロングボウ・レーダーのレーダースコープを見た。約10km先に地対空ミサイルがあることを示すアイコンが幾つかディスプレイに映る。

「目標発見。オン、データリンク」

 データリンクで全てのヘリに目標の位置が転送された。更に、このシステムはどのヘリがどの目標を狙っているかを表示するため、重複した標的をロックするような事が起きないのだ。

「ヘルファイア、発射!」


 AGM-114K/Lが次々と発射され、夜の砂漠に赤い軌跡を描いた。それぞれのミサイルはロングボウ・レーダーによるミリメートル波やTADSSから発せられる不可視光線レーザーによって誘導され、正確に標的を捉えた。砂漠に林立する地対空ミサイルのランチャーが爆発する。更に、30mm劣化ウラン弾や2.75インチロケット弾が撃ち込まれ、施設は完全に破壊された。

「"ゴッドアイ""ゴッドアイ"こちら"アナコンダ"。ミサイル陣地を破壊完了。エリア・シエラ・アルファ56を制圧。繰り返す、エリア・シエラ・アルファ56を制圧完了。続いて、シエラ・アルファ55の制圧に向かう」ベングリオンはそう言って、次の標的へとヘリを移動させ始めた。


 アブダビ上空 10月10日 2106時


「"アナコンダ"了解。引き続き、制圧を続けて下さい」

 リー・ミンはレーダースコープを覗き込んで、目まぐるしく変わる戦況を見ている。何度かレーダーモードを切り替えて、様々な場所の味方や敵の飛行機の動きを観察している。現在、戦闘機部隊は"ゴッドアイ"を護衛する編隊を組んでいる。F-15CとSu-27が先導し、後ろをF/A-18とF-15Eが固め、他の戦闘機はワゴンホイールを描きながら敵機を警戒している。

『こちら"アッバス"、ブラヴォー・デルタ11の制圧完了』

 次々とアブダビ空軍による敵陣地制圧の報告が入った。その度に、原田やスタンリーはデータを書き換え、更新していく。


「"ゴッドアイ""ゴッドアイ"こちら"ウォーバード1"、タンカーを寄越してくれ。そろそろ燃料がヤバイ」

 佐藤はF-15Cの燃料計に目を走らせた。このまま空中哨戒(CAP)を続けていたら、オマーン国内まで侵入して再攻撃する攻撃機を護衛できない。F-15Cは大型の戦闘機で、燃料を多く積むことができるが、小型である僚機のF-16等はそれほど航続距離は長くない。

『了解"ウォーバード1"、2機とも10分くらいで到着する。もう少しだけ待ってくれ』


 アル・ダフラ基地 10月10日 2108時


 KC-10AとKC-135Rが離陸した。燃料を満載しているため、滑走路を目一杯使ってゆっくりとした速度かつ、かなり浅い角度で離陸していく。アブダビ空軍は空中給油機を持たないため、"ウォーバーズ"に頼らざるを得ない状況だ。しかし、あまり訓練をされていないパイロットは、慣れない空中給油に手間取り、折角タンカーを寄越しても、ブームを接続できないまま燃料が"ビンゴ"となり。結局、基地に帰還して再出撃をしている状況だった。空中給油機は前線までは進出しないが、危険空域に接近するため、ミラージュやF-16の護衛を受けている。タンカーは燃料を必要としている味方のもとへと急いだ。

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