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Wild Weasel&Bombing-3

 オマーン上空 10月10日 2017時


 SA-21が攻撃に向かっていたオマーン空軍の戦闘機部隊を急襲した。ミラージュやF-16が次々と撃墜され、墜落していく。S-400の射程は非常に長いため、AEWや空中給油機は、更なる後退を余儀なくされた。こうなっては、戦闘機部隊を空域に送り込むのはかなりの危険が伴う。よって、航空部隊は後退せざるを得なくなった。


『ウォーバード隊、国境付近まで後退する。低空で飛行し、地対空ミサイルに注意せよ』

 リー・ミンが撤退の指示を与えた。戦闘機部隊は編隊を組み、低空飛行しながらアブダビへと飛んでいった。SA-21は主に、高空にいる標的を想定しているため、低空へ逃げれれば捕まる心配は低下するが、逆に低空では携帯式地対空ミサイル(MANPADS)に捕まる危険性がある。コックピットの中で、パイロットたちは次々とECMを作動させたが、それは実際には気休め程度にしか効果はなく、当然のことながら、ミサイルに見つかった場合は、防ぎようがない。


『またやられた。クソッ、シャリフ隊、全滅!』

 戦況がひっくり返されてきた。何だってSA-21"グラウラー"なんて配備していたんだ?そもそも、オマーンには存在していないはずのミサイルだ。佐藤は脅威警報画面に注意を向けた。今のところはロックオンされている気配は無いが、油断はできない。佐藤のF-15CはAN/ALQ-211をセンターパイロンに搭載しているが、本格的なジャミングはできない。

『Iバンドレーダーのスパイクを感知。まだ上を探っているだけみたいだが、油断はできん。問題は、こっちにジャミングの手段が少ないところだな』

 コルチャックの声が無線から聞こえてきた。

「ニコライ、君ならSA-21に見つからないように逃げるとしたら、どうやってやる?」佐藤が訊く。

『S-400か。低空で素速く飛ばないとな。だが、あれは巡航ミサイルにも対処できるから、あまり賢明なやり方とは言いがたい。それから、"チャフ・コリドー"を作るという手もあるが、どれだけ意味があるかはわからん』

「了解だ。みんな、聞いたな?」


 オマーン国内 10月10日 2023時


 おかしい。そろそろ爆撃に来るはずのアブダビ空軍の戦闘機がなかなかやってこない。バークは無線に耳を押し付けているが、未だにレーザーの照射の指示が来ない。その代わり、微かにヘリの音が聞こえてきた。ロスが肩を軽く叩き、砂漠に掘った穴を指さして、そこに隠れるように指示した。


 飛んできたのは"ウォーバーズ"のAH-64DとCH-53E、CV-22Bだ。着陸したスーパースタリオンからはHK417を持ったトーマス・ボーンとバック・コーエンが降りてきた。アパッチはホバリングして、周囲を警戒している。ロスは飛んできたのが味方だと気付き、バギーからバラキューダーを取り払い、エンジンをかけた。

「計画変更だ。バギーをスタリオンに積んで、オスプレイに乗ってくれ。戦闘機は来ない」

 コーエンが大声で話しかけた。怒鳴るくらいしなければ、ヘリの音でまともに会話ができない。

「一体、何があった?なんで爆撃が中止になった?」

 ロスが訊く。

「奴ら、SAMの林を作ってやがる!そのせいで戦闘機が飛べなくなった!」

「何てこった!それで、どうするんだ?」

「まずは、ミサイルを排除する!アレを放っておいては、雪隠詰めになってしまう!下手したら、司令塔もやられちまうからな!」

「了解だ。それで、あんなにSMAWを積んでいる訳か」

 アパッチの機関砲が火を噴いた。どうやら、敵が近いらしい。

「早く乗れ!俺らが撃ち落とされないうちに!」


 ベングリオンはIHADSS越しに敵の車両部隊を睨み、機関砲の引金を引いた。30mmの劣化ウラン弾が装甲車やトラックを引き裂く。オスプレイとシースタリオンは攻撃を避けるため、低空飛行で離脱していく。アパッチは数発、ロケットを発射すると、攻撃を避けるため反転することを繰り返す。あっという間に敵は壊滅状態に陥ったが、危険が去った訳ではない。更に、弾薬と燃料の消耗も激しく、攻撃が終わった時には、機関砲の弾は3分の1にまで減り、ヘルファイヤ・ミサイルは残り2発、2.75incロケットは38発あったものが僅か9発を残すのみとなった。

「こちら"アナコンダ"。一旦、補給しなきゃならなくなった。このままじゃ、弾も燃料も足りない。一番近い補給地点までは充分飛べるから、そこまで一旦撤退だ」


 アブダビ上空 10月10日 2057時


 武装と燃料の補給のため、戦闘機部隊は一度アル・ダフラ基地に戻って、再度、離陸を始めた。ミサイル攻撃を受けたため、46機の戦闘機は27機に減ってしまっていた。補給されている最中、一部のF-16等はS-400に対抗できるように、AN/ALQ-131やAN/ALQ-184の調整をしなければならなかったため、再出撃ができるようになるまでやや時間がかかった。おまけに、空中給油機すら燃料を補給しなければならなくなり、更に再出撃に時間を要した。これで、敵にさらなる時間を与えてしまうという、大問題を起こしてしまった。

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